早く引退して欲しい!精神障害を忌避する役員
ある企業の人事担当者(Aさん)から9月の上旬に「ハローワークより年内に障害者を採用しないと、年明けから雇入れ計画作成命令を出しますと指導を頂いたので、障害者採用を行うので相談に乗って欲しい」との連絡を頂きました。Aさんと上司の人事部長は、来年(2023年)4月より障害者法定雇用率がUPするこをも視野に入れ、今回のハローワークからの指導を機会に、障害を持つ社員を採用する意味&雇用する際の方針をしっかり作り、先々何度もハローワークの注意指導を受けることが無いようにしたい!と意欲的でした。
しかし、都内で事務系の仕事ができる障害者を募集する場合、身体よりも精神の手帳をお持ちの方が多く応募される状況を役員会で説明したところ、一部の役員から精神障害の方を採用することに否定的な意見があったことと、社内で休職中の社員さんに手帳を申請する可能性を確認するお話しが出てきたので、社外から障害者を採用することは一旦保留とさせて下さい。本当に申し訳ない!とAさんから連絡がありました。
その際、大畑からAさんへ返信したメールの一部が以下の通りです。
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Aさま
ご連絡ありがとうございます。 精神障害の方への抵抗感、多くの会社でよくあることです。
本当は働いてはいけない・休んでいるべき精神状態の方が、無理して頑張った結果として、周囲の社員さんを巻き込み、会社・職場へ大きな迷惑を掛けたこと 等の事案があった場合、その部署の責任者から「もう我が部署に、精神の障害を持っている社員は二度と受け入れたく無い」と言われたり、現場で対応に困ったという社員の伝聞情報だけで 人によっては精神障害の方を忌避する理由になってしまうことがあります。個人的な意見ですが50代以上の年配者ほど一度持ってしまった悪い先入観を固定観念として持ち続ける人が多い気がします。御社の役員陣の一部に似たような方がいらっしゃるのであれば、それは簡単には覆せないかもしれませんね。
でも、人事部長やAさんが、障害者採用を前向きに考えていらっしゃることは重々承知しており、部長もAさんも組織の一員として会社の方針に従うどころか、率先垂範して従い会社方針を徹底させる立場にあることも、元サラリーマンとして理解しております。だから、申し訳ないなどと思わないで下さい。
社内から障害者手帳保持者が現れるならば、今は御社にとっては良いことです。現時点の最優先課題は年内に障害者を採用・雇用することであり、プロセスはどうあれ、障害者手帳保持者が雇用できればハローワークとの約束は達成できます。最優先課題が解決するなら、年内はそれでOKです。
(注意点・・・もし、社員さんが精神障害者保健福祉手帳を取得するなら、申請者が6ヵ月以上前に精神科の初診を受けてないと手帳申請のための診断書は無効です。休職期間が長い社員さんであれば、半年以上前に精神科で受診をされていると思いますが、万一、精神科の初診察が今年の7/1以降であると年内の手帳申請は受理されません。また、年内に申請が可能であっても申請後に手帳原本が本人の手元に届くのは早くて1ヶ月、遅いと2ヵ月を超えることもあるので、ハローワークの指導担当者に「社内に手帳申請者が出そうだが、年内に障害者を採用という約束は、「年内に障害者手帳を申請するものがいる」でも良いのか、「年内に手帳原本を交付されるものがいる」でないとダメなのか、事前に確認した方が安全です。)
障害を持つことになった社員を雇用し続けることは 社外から障害者を新たに雇い入れることより、会社としては受け身で済むので楽ですが、Aさんの仰る通り、障害者法定雇用率を達成し続けて違法状態にはならない!とコンプライアンスを厳守する会社が選択する方法ではありません。ハローワークの指導をギリギリ回避して法定雇用に対する不足分は納付金を払って済ませても、指導を二度・三度と頂きハローワークから要注意企業としてマークされると、通常ならば6/1報告書の提出だけで済むところが雇用している障害者の手帳コピーと共に給与台帳と勤怠データの提出を求められる(本当に障害者を雇用しているのか?と疑われる)事態が将来発生するリスクもあります。
いずれにせよ、社外からの採用選考はしないと役員陣が考えても、人事部としては内々に障害者採用の準備を進めておくことは「あり」だと思います。とにかく雇入れ計画作成命令を回避することは現時点の最優先ですが、その次に回避すべきは来年も・2年続けて「年末までに・・・」という指導を頂かない(要注意企業としてマークされない)ことです。
~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ 10年前は、中小企業はもちろん上場・大企業でも「精神障害の方でなく、身体障害の方を採用したい」と人材エージェントへ堂々と希望を言っていました。しかし、2015年頃から首都圏ではフルタイムで働く身体障害の方を採用することが困難(対象となる方々の多くが、既に就業中のため)で、徐々に精神障害の方々を採用する方向にシフトし始めていました。しかし、今でも「精神障害の方は採用したくない」という会社があることは事実であり、とても残念なことです。
そんな残念な会社の中には、上記のように役員の一部に頑固な老害?があるだけで、その役員さんが会社を辞めたら一気に採用方針が変わる会社も多いように思います。できることなら、その役員さんが会社を辞める前に「精神障害の方々を差別することで、もしかしたら会社が機会損失しているかも?」あるいは「障害の種類で差別をすることは悪いこと」に気づいて欲しいものです…Aさん、頑張って下さい!!