ペケとジマの線形代数 #1
登場人物
ペケ (聞き手)
理系,学部1年.
ジマの子分.
ジマ (話し手)
文系,ペケの先輩.
口は悪いが,いろんな分野に造詣が深い.
ペケ:ジマさん.必修に線形代数があって,もう6回目なんですがとっかかりが付きません.
このままだとテストに間に合わなさそうです.助けてください.
ジマ:しょうがねえなぁ.1から教えてやるからちゃんと聞いとけ.
ペケ:ありがとうございます.
ジマ:じゃ,まずペケくぅん.$${\binom34}$$を2つの基底ベクトル$${\boldsymbol e_1=\binom10}$$と$${\boldsymbol e_2=\binom01}$$を使って表してみてくれ.
ペケ:えーと,$${s \boldsymbol e_1+t \boldsymbol e_2=\binom st=\binom34}$$だから$${3\boldsymbol e_1+4\boldsymbol e_2}$$ですかね.
ジマ:当たりめーだろカス.
じゃあ次は同じ手順で$${\binom34}$$を$${\boldsymbol e_1}$$だけで表してみろ.
ペケ:(オメーがやれって言ったんだろうが…)
えーと,$${s \boldsymbol e_1=\binom s0 =\binom34}$$だから…
あれ,これ線形独立だから無理じゃないですかね?
ジマ:ククククク…www 無理に決まってんだろw
じゃ今度は行列$${A=\binom{3 \ 5}{4 \ 6}}$$を使ってやってみろ.
さすがに講義6回目だから行列とベクトルの積の計算方法は習ったよな?
ペケ:ひどいよー.
分かりました.$${A \boldsymbol e_1}$$を計算するには$${A}$$の1列目と$${\boldsymbol e_1}$$の内積と$${A}$$の2列目と$${\boldsymbol e_1}$$の内積を縦に並べればいいから…
$$
A \boldsymbol e_1
=\begin{pmatrix}
3 & 5 \\
4 & 6
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1\\
0
\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
3\cdot 1 + 5\cdot 0 \\
4\cdot 1 + 6\cdot 0 \\
\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
3\\
4
\end{pmatrix}
$$
お,ちゃんと$${\binom34}$$になりましたね.
ジマ:これこそが行列の存在意義だ.
高校まではベクトルは定数倍伸ばしたり縮めたりしかできなかったが,行列を使うとベクトルを伸ばしたり回したりできるんだヨォーSoー.
ペケ:なるほど.ちょっと行列に興味が湧いてきました.
ところでジマさん.行列ってなんでこういう表記と計算方法なんすかね?
ジマ:お前にしては珍しく良いこと訊くじゃんww
例えば,$${\boldsymbol e_1}$$と$${\boldsymbol e_2}$$のなす座標系で$${\binom xy}$$は$${\boldsymbol e_1}$$と$${\boldsymbol e_2}$$を用いて
$${\binom xy=x \boldsymbol e_1+y \boldsymbol e_2}$$と表せただろォー?
次に,$${A}$$の列を$${\boldsymbol e_1'=\binom 34}$$,$${\boldsymbol e_2'=\binom 56}$$と置き,行列の積の定義どおりに計算すると,
$$
A(x \boldsymbol e_1+y \boldsymbol e_2)
=\begin{pmatrix}
3\cdot x + 5\cdot y \\
4\cdot x + 6\cdot y \\
\end{pmatrix}
=x\begin{pmatrix}
3\\
4
\end{pmatrix}
+y\begin{pmatrix}
5\\
6
\end{pmatrix}
=x \boldsymbol e_1'+y \boldsymbol e_2'
$$
という具合に,係数をそのままに基底を変換して,我々の世界の$${\binom xy}$$を$${A}$$の世界でいう$${\binom xy}$$に変換することを意味してるんだヨォーSoー.
ペケ:ちょっと何言ってるか分かんないですが,こう表記と計算方法を定義すると都合がよさそうですね.何となく見当が付きました.
ジマ:まぁ今は分かんなくていいよォー.後々やるから.
ペケ:よろしくお願いします.
#1のまとめ
行列を使うと,ベクトルを伸ばすたけでなく回転させることもできる.
行列は$${A(x \boldsymbol e_1+y \boldsymbol e_2)=x \boldsymbol e_1'+y \boldsymbol e_2'}$$のように,係数をそのままに基底を変換する操作とも言える.
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