〈Q&A〉発語を促すには、どうしたらいい?
今回は、私のお仕事の中で一番ご相談が多く、そしてたくさん行っている言語指導に関してです。
ではいってみましょう。
ご相談:
3歳8ヶ月(発達年齢1歳2ヶ月)の子どものことでご相談があります。昨年ようやく歩けるようになりましたが、まだぎこちないところがあって走れず、本当に1歳ちょっとくらいの感じです。スプーン使いはこぼしながら、半分手づかみで食べます。食べることが大好きで、バナナ、イチゴ、さつまいも、ヨーグルトを好みます。声は出しますし、バリエーションもありますが、喃語らしくはなく、言葉が全く出ないので、ずっとこのままなのかと気がかりになることがあります。今回お聞きしたいのは、言葉の発達を促す方法です。マッサージ、日々の挨拶や声かけ、くすぐったりして笑わせるなど、療育などで教わった方法をとっていますが、あまり効果がみられていないようです。アドバイスいただけたらと思います。
回答:
教えて頂いた情報から、私が普段行なっている言語指導の方法を具体的に書かせて頂きますね。
①ヨーグルトを使って要求トレーニングを行う。
まず、お子さんの好きな食べ物の中でも、スプーンであげる量の調節がしやすいヨーグルトを使って要求トレーニングをしてみましょう。お子さんにヨーグルトをみせて欲しそうな様子がみられたら、お子さんが出せている音のバリエーションの中から一音でもいいので何か言わせます。「ちょうだい」に近い音がいいので「だ」や「おだ」「だい」や「ちょー」「お」などが出せたら良いですが、出せる音で構いません。そこで出せる音を、今現時点でのお子さんの「ちょうだい」という言語に設定します。(最初から私たちが使っている言語をお子さんに求めると、いつまでたってもなかなかその言葉を使うことができません。)音が出せたら、その瞬間に、ヨーグルトをスプーンで一口、お子さんの口に入れてあげてください。そして同時に思い切り褒めてあげてください。しかし、お子さんの「ちょうだい」言語ができても、すぐに自発で使えるようになるわけではないので、最初に大人が言ってあげて、それをお子さんが真似して言えたら、十分です。徐々に、大人の手助けなしでも自発できるようになります。この練習を繰り返し、欲しいものを要求するときの言語を獲得させます。
要求トレーニングを行うときのポイントは、①お子さんの大好きなものを使うこと。②それが食べ物の場合は、食後でお腹いっぱいの時ではなく、お腹が空いているときに行うこと。③それを、あまり日常的には与えないようにし、お子さんの要求が強くなる環境調整をしておくこと。④言葉の正確性を求めすぎないこと。
以上が、要求言語を獲得し、使うようになるまでに行う練習です。ヨーグルトができたら、小さく切ったバナナやいちご、さつまいも、おもちゃなど、様々なものでも練習してみましょう。
②動作模倣訓練を行う。
言語訓練なのに動作模倣?と思うかもしれません。しかし、子どもの言語の発達に「模倣スキル」は必要不可欠です。言葉の練習は音声模倣と言い、大人の発声を真似して一音ずつ練習していきますが、その前段階として、動作模倣を行います。この、模倣スキルはとても重要なスキルなので、しっかり時間をかけて取り組みます。
バイバイ、パチパチ、バンザイ、あたま、ほっぺ、ひこうき、うさぎ、おなか、ぐるぐる、きらきら、ねんね等、大人が「こうして~!」といいながら見せた動作を真似させます。できたら、直後におもいっきり褒めながら、ヨーグルトを一口だけあげてください。「こうして〜!」だけで真似できない場合は、お子さんの手をもって補助して成功させてあげてください。補助ありの成功でも、思いっきり褒めヨーグルトはあげます。少しずつ、補助がなくてもできるよう練習を継続します。
③動作模倣が12以上できるようになったら、音声模倣の練習を始める。
その頃には子ども用の椅子に座って10分ぐらい模倣の練習を継続できるようになっていといいですね。「座ってお母さんの真似をしていると好きなものがたくさん出てきて楽しいな」と思ってもらえたら、スムーズに進みます。音声模倣では、日常で自発の発声ででている音をメモして把握しておき、その音を真似させます。例えば日常で「ばっば~」言うことがあれば、「ば」は発声レパートリーにある音なので、大人が「ば」と言い、それを真似できたら思い切りほめて、好きなものをごほうびにあげます。大事なことは、本人が出せる音から模倣練習で行うことです。出ない音を追求して練習する必要は今はありません。声のバリエーションはあるとのことなので、まずは出ている音をチェックし、その音を模倣でも出すことができることが、言葉の練習の一歩目です。
④音声模倣が30音以上になったら、反復音と2音節模倣の練習を始める。
模倣で出せる音が30を超えて来たら、「ばば」「ママ」「かか」「パパ」「たた」「うう」など反復音の練習に入ります。その後「あお」「かこ」「まも」「かき」「あき」等、2音節模倣の練習も行います。
私が言語指導を行っていても、ここまで完了するのに3か月~1年ほどかかります。(かなり個人差があります。)
なので、焦らずじっくり取り組むことが大切です。
出来なくても決して叱ったりせず、お子さんの「できた」に注目してできるだけたくさん「褒められる」機会を作ってあげてください。
最初はお子さんの今の力でできることをさせ、「褒める」。ここから始めてもよいと思います。
この後は3音節、4音節と進めていき、この辺りでは並行して自発的な単語の表出を促すトレーニングも行います。ですが、まずは音声模倣、2音節模倣までじっくり行うことが大切ですので、ここまで行ってみてください。私が行う言語指導では、みんなこのプロセスを踏み、少しずつ言葉を獲得していきます。
以上です。
今日は言語指導に関するQ&Aでした。
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