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椎茸を育ててみた話

友人から「椎茸栽培キット」がなかば強引に送りつけられてきた。LINEに「今すぐ栽培を始めろ」との指令。既に寝転がってお笑い番組に興じていた私は急に「お仕事モード」に変わり、箱を開け、袋から原木を取り出して洗い、容器にセットした。本気でやれば15分ほどで出来る。あとは日に1、2回霧吹きで湿らせれば良い。

数日後、芽が出てきた。それはシン・ゴジラの幼体の目玉のようで、原木全体に幾つも飛び出している。まるで全身が「目」の化け物ようでゾワゾワする。しかし翌日以降「目」は次第に可愛らしいキノコの形状に変化し、安堵した。

かつて私は椎茸が大嫌いだった。父の実家で嗚咽しながら茶碗蒸しに入った椎茸を飲み込んだ辛い記憶がある。ところが、中学に入ると急に食べれるようになった。今や嬉々として栽培しているのだから不思議なものだ。

さて、遂に収穫の時が来た。といっても栽培開始からまだ一週間位しか経っていない。いくら好きでも百本近い椎茸を一気に食べるのは無理がある。幾つか焼いて塩で食べ、残りは干し椎茸にすることにした。

人生、必ずしも努力が報われるとは限らない。だが、これだけは自信を持って言える。「椎茸は必ず生える」と。


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