閉じ込められていた記憶が氷解するとき、少年は大人になるきっかけを掴むー健部伸明著「氷の下の記憶」を読んでー
正直、読んだ後にここまでいろんな感情が綯い交ぜになった本というのは初めてだ。
健部伸明著の「氷の下の記憶」である。
物語は、主人公の外崎慎也が東日本大震災直後、それまで勤めていた出版社を辞めて故郷青森に戻ってきたところから始まる。
マッキー先生との再会で、街が全体が不穏のただ中にあっても安らぎに似た感情を覚えたのもつかの間、病室での親子、そして主治医とのやりとり、さらにベッドであらゆるチューブにつながれているはずの父親の蛮行にいきなり地面に叩きつけられるような衝撃を覚えた。