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【歴史群像シリーズ】 自動販売機は 無人店舗の夢を見るか?~特化したがゆえの繁栄と限界~⑥JVMAの逆襲

これまでは自販機の販売業態についていろいろと触れてきましたが、最終回となる今回は今の自販機業界の発展を下支えしていた存在である「日本自動販売システム機械工業会(通称JVMA)」について語りたいと思います。ただ、この社団法人の活動全てに触れることはできないので、自販機の内部を規定したいわゆる「JVMA仕様」について触れていきます。

■自販機の発展を下支えしたJVMA仕様

JVMA仕様とはざっくり言うと「自販機の内部仕様に関する取り決め」です。大きくはオフラインと呼ばれる現地操作用の仕様とオンラインと呼ばれるリモートからアクセスできる仕様の2種類に分かれています。元々は各社で異なっていた部品の共通化を行うことで保守性とコストの問題を解決することを目的とし、自販機メーカー主導で策定されたとのことです。

この仕様の規定により自販機は大幅なコストダウンとメンテナンス性の向上が行えました。部品ごとの通信規格などが共通化しているためそれに則ってさえいれば自販機の部品として使用することが可能なため、セレクションボタンと言った小さな部品からメック・ビルバリと言った大型機械まで自由に選べるようになり、故障した機体から部品を抜き出して別メーカーの故障した機体を直す「ニコイチ」という修繕方法も確立、その扱いやすさから中古市場が十分に成り立つ市場構造になりました。

これにより、今あるいわゆる「自販機」がどのメーカーでも大差ない構造になり、自販機を使う人の利便性は向上、いろいろな所で活躍できるまでになりました。

■優れた仕様であったがゆえの弊害

こうして自販機業界を盛り立ててきたJVMAですが、ここに来て大きな壁にぶつかります。昨今のIoTシステムの発達に対して、古いJVMA仕様は追いつくことができなかったのです。特にオンラインについては2008年の仕様が実質的な最新版になるため、通信も電話回線ベースの速度しか出ずしかもPPP接続を前提、しかもオフライン前提の仕様のため販売データを取り出す程度の機能しかなく、昨今のIoTを期待した利用者は失望することとなります。

これは昔作ったJVMA仕様の出来が「あまりにも優れていた」ためであり、また利用方法が基本的にオフラインメインだったための弊害なのですが、このオンラインが弱いところは結果としてオンラインが前提となる電子マネーへの対応が遅れることとなり、電子マネーは日本自動販売協会(通称JAMA)にその座を明け渡すこととなりました。こうしてJVMA仕様は通信の世界とはどんどん隔絶していくこととなります。

特に昨今の「無人店舗」については人手がかからないことを前提とするため現地で行う作業を極力なくす方向で動いていますが、自販機はオフライン仕様に引きずられるため料金変更やコラム編成など現地でやるべき作業が少なくなく、これが無人店舗として使う場合の足を引っ張ります。ブイシンクのように独自開発による機能向上を行う自販機も出てきましたが母体は通常の自販機であり、かつ非常に高額なため気軽に使うには厳しい状況であり、なかなか自販機を今のステージに上げることが難しかったのです。

■JVMAは無人店舗の夢を見るか?~新しい仕様の萌芽

こうした状態をJVMAとして座視していたわけではないのですが、長らく自販機メーカー主導で進んでいた状況を大きく覆すことが難しい状態が長く続きました。こうした状況に退会する企業も現れ組織自体の存在意義を問われるようになるという危機に見舞われます。

そこでJVMAは主にオンライン仕様の大幅改定を行う決意をします。これまでRS232Cなどのシリアル通信を前提にしていた機能からLANベースへ移行、高レイテンシ・大容量通信を要求する各種サービスへの対応を行い、電子マネーやサイネージなどの高規格サービスへの対応を行うとの噂が流れています。具体的な話は良く分りませんが、これにより様々な機能が高速大容量通信をベースとして実装されるようになれば、それこそ自販機が無人店舗の代用を担えるようになるかもしれません。

これまでは飲料メーカ主導の全国清涼飲料連合会(通称全清連)の影に隠れるような状態が続きましたが、今後はJVMAが日本の自販機の未来を創っていくのかもしれませんね。


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