「進め方」を大切にする新規事業がうまくいかない理由
「進め方を大切にする」という一見、正しい進め方に見える新規事業の検討方法。
しかしなぜかこの「進め方」にこだわる新規事業が、うまくいかないことが多いように感じる。
もしその感覚が本当に正しいとするとなぜだろうか?
以下の3つの理由が考えられる。
イシューから始めていない
みんな同じ答えになる
結果を問われにくい職種の罠
3つの理由
1.イシューから始めていない
最もオーソドックスな新規事業の進め方のパターンが「可能性のある領域を絞り込む」だろう。
あらゆるデータを集め、自社にとって魅力的な領域を網羅的に探し(とにかく「網羅的」であることが何よりも重要なのだ)領域を絞り込む。
論理の組み立てがしやすく正しい進め方に見える。
しかし思いがけず、この方法はうまくいかないことが多い。
領域特定は、依然「仕事のための仕事」であり、イシューそのものに当たっていない。
この進め方をしている人に、絞り込む前、または領域を絞り込んだ時点で、その領域の中で具体的にビジネスアイデアを何案ほど考えられているかを聞いたことがある。
驚くべきことに、だいたいの人が0案。多い人で2案ほどだった。
あとで考えるつもりなので良いのでは?
確かにアイデアは、後でも考えられるかもしれない。
しかし私からすると、領域の絞り込みのために膨大な調査をしているのにも関わらずアイデアが出ないというのは、やはりイシューに取り組めていないと言える。
アイデアは掛け合わせだ。経験的に外から情報を得ている時(つまり調査をしている時)に最もアイデアが出る。
領域調査という仕事のための仕事にフォーカスしすぎた結果、肝心のアイデアを出すということに関心が薄くなり、その機会をスルーしてしまっている。
2.みんな同じ答えになる
上記の領域特定のアプローチから始めると、不思議なことにどの会社も同じような答えを出す。
持っているアセットが違うから一見同じようにはならないのかもしれないが、不思議なほど同じような答えになる。
おそらくこのアプローチ自体がロジカルすぎるためだろう。
論理的に正しいことは数学と同じなので、正しく進めれば同じ答えになる。
結果的に直近で既に同じようなサービスがどこかの既存企業から出ていたり、気鋭のベンチャーが手掛けていたりするのは、このアプローチのあるあると言えるだろう。
そしてこの次の展開で最も多いのは「オープンイノベーション」と銘打ち、大企業が単にベンチャーに乗っかる"協業"だ。
余談ではあるが、これは近年笑いごとにならないレベルで頻発している。中にはノウハウを盗み競合としてデビューする大手も現れ、オープンイノベーションとして乗っかった相手との訴訟になっているケースも複数件ある。本当にひどい話。
3.結果を問われにくい職種の罠
新規事業担当や経営企画を含む企画職は、営業職などと比較して結果・成果を問われにくい側面がある。
その理由として、四半期や半期、1年で結果を測れる仕事が少ないことや、個人としての成果を切り出して評価しにくい点が挙げられる。
必然的にプロセス評価の側面が強くなり、「正しい進め方」をしていることが社内の人事考課上、とても重要となる。
その影響もあり、上記1のように中身・本質へのフォーカスが低くなりやすいが、究極的には進め方が正しくて良いアイデアが出ないことは、その担当者の責任にはならないのだ。
営業だとその逆の構図になる。
進め方が正しくても、売れなければ本人が成績という点で責任を負うことになる(その後の営業会議で「進め方も正しくなかったんじゃないか」という責めを負うことまでがセット)
プレッシャーがあればいいというものではないが、やはり構造的な問題の一要素に見える。
ではどうすればいいのか
経営は現場に成果を求めている。この場合の成果は「成功すると思われるアイデア」だろう。
当然、領域調査から入るアプローチもその成果を目指してのことだが、その事業領域が成長するかどうかはそこまで難しい調査ではないし、私からするとそこまで時間をかける対象ではない。
これ以上の「具体的にどうするのか」についてはとても良いやり方があるが、ノウハウ部分なので別途。
しかし重要なことは、まず「アイデアから入るべき」ということ。仕事のための仕事と、本来の仕事を区別して、できるだけ本来の仕事に時間と労力を多く割く。
そしてどのように進んでも、そのアイデアを評価する経営側としては問題ない。
経営は株主から成果を求められている。
先ほどの営業と同じ構造で、成果がよければ進め方が一見正しくなくても良い。とにかく逆はマズイのだ。
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