恋花火
ネタは貯まりにたまっているのに書く時間がない。それほど日々の仕事に追われている。
最近働くのがいやでいやで仕方ない。周りは割とやめてるぞ?そんで辞めた人間の方がイキイキとしているのが悔しくて、うらやましくてたまらない(社会の条理だ)。
いよいよ限界を迎えたとき、私は1冊の本に出会った。
「恋花火」編山由知子著。
タイトルは一見ありがちな恋愛小説に見える。しかし内容はそれを覆す壮大な作品だった。
「焼肉に挽肉は必要ないから…」という衝撃的なセリフから幕を開けるこの作品は、主人公の「俺(中村)」が恋に落ちてはその女性に様々な方法でアプローチするという展開。目が合うたびにその女性のことを愛してしまう体質の「俺」は、相手の女性の行きつけのバーで待ち伏せしたり、女性の部屋に忍び込んだり、相手の気になっている男を路上でサンドバックにしたり、時には2階から飛び降りてみたりなどとあの手この手で努力をするが、結局いつもフラれてしまう(相手に訴えられることもしばしばだ)。彼の恋は切なくも激しく、まさに花火のように散っていくのだ。
この作品の巧みな点は「俺」の視点と客観的な視点の2点を使い分けている点だ。「俺」は常にどのようにしたら相手に気に入られるかを考え、行動に移す。その思考の経路と実際の他者から見えている行動が2つの視点から描き出されているのがとても興味深い。また、この作品には決して、女性側の視点や考えは描写されない。これは世の男たちが自分の利益や考えばかりを追い続け、女性側の意見や希望を全くくみ取っていないことに対する揶揄であるととらえることもできる。
そして何より私が勇気をもらったのが「俺」の行動力だ。
彼は章ごとに無数の恋愛を繰り返しているわけだが、決して自ら引こうなどとということは考えない。積極的に考え、押しに押すのだ。最近は恋愛に関して奥手な男性が多い中、ここまで積極的な人物はなかなかいないであろう。考えたら即実行。決断の早さも男の中の男というところだ。
さらにこれは恋愛だけの話ではない。現在会社の犬となっている私にとって彼の積極性はとても鮮明に映し出された。やれと言われたことを受け身で嫌々やっているようではだめなのだ。思ったこと考えたことはどんどん声に出そう、自ら実行に移そう。その輝きが一瞬だとしてもその一瞬が人生を大きく照らし出すのではないだろうか。
この物語に大きく感化された私は、今日も社用車のBT接続済み機器のリストから、社長の接続情報を削除した。
最近はスマートフォンも普及し読書はしないという若者も増えている。しかし、このように一冊の本が大きく考え方や人生すら変えてしまうこともあるのだ。
編山由知子・著「恋花火」は上・中・下の3巻が発売中。お求めはお近くの書店にて。