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【無名人インタビュー】吉本興業作家養成所出身の人

「無名人インタビュー」マガジンで過去インタビューも読めますよ!

今回ご参加いただいたのは 寝づ さんです!
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おっさんはキモチワルイ。。少なからずインタビュー中に聞くフレーズです。私に向けて言った言葉じゃないのは分かってる。でもちょっとそれで傷ついたりする。
寝づさん回。寝づさんはエッセイマンガを描いてて、私は実はマンガが10代の頃にめちゃくちゃ好きで、家にあるマンガは吾妻ひでお「不条理日記」山岸涼子「天唐唐草」藤子・F・不二雄「SF短編集」諸星大二郎「僕とフリオと校庭で」というラインナップで、もう20年くらいマンガは追いかけてないのですが、まあ鬼滅の刃とか名前は知ってますけどもちろん日本に住んでるので、ハイキューとかもね。
で、だからマンガ描いてる人は興味があって、で寝づさん回です。
今日はもう原稿編集3本目でちょっと奇奇怪怪、隠隠滅滅とした導入部分になりましたが、女性問題、進路問題、創作についてなど、多様なトピックを含んだ回になりました。
寝づさん回をお楽しみあれ!

1、吉本興行の作家養成所出身

qbc:どういうインタビューにしましょうか?

寝づ:毎回その質問を聞かれてるじゃないですか?

qbc:ほぼ100%聞きますね。

寝づ:どうしようと思って。私、結構自分のことあんまりよく分かってなくって(笑)
インタビューしていただいて、記事にしていただいたことで客観視できたらおもしろいかなーっていう感じですね。自分探し(笑)

qbc:(笑)。自分って、その時その時で考え方って変わっていくものなので、むずかしいですよね。

寝づ:そうそう。考えってめちゃめちゃ変わるんで、その時の私の考えのひとつを表すことができたらおもしろいかなって。

qbc:そそそそそ。一回立ち止まって考えるというやつですよね。

寝づ:はい。ずっと立ち止まってるんですけど(笑)。ははっ。どうしよ(笑)。

qbc:今、何をされてる方でしょうか?

寝づ:何もしてないです(笑)

qbc:何もしてない?

寝づ:はい。ちょー無職です。そろそろバイトしないとやばいなと思って。
近所のラーメン屋に採用されたは良いけど、入社の書類とか準備できたら連絡しますって言われてから、一週間経ってもまだ連絡来なくてどうしようかと思ってます(笑)
11月から働けるのかなって思ってたんですけど、どうなんだろ? っていう感じです(笑)

qbc:アルバイト?

寝づ:そうです、バイト。ほんとに働きたくなくて。
見ていただいたかわからないですけど、日記みたいなマンガ描いてまして。Twitterで毎日。

qbc:あっ、Twitterなんだ。

寝づ:諸事情でnoteと連携してないんですけど。まあ働きたくない、ダメ人間の典型例みたいな感じなので。本当に働きたくないんですよ(笑)。どうしよう、こんなインタビューで(笑)。

qbc:いつからそういう生活になってるの?

寝づ:今21歳で今年22歳になるんですけど、高校卒業した後に吉本の作家養成所みたいな、裏方スタッフの養成所みたいなのがあって、そこに1年行ってたんですよ。

qbc:はいはいはいはい。マンガにあったやつね。

寝づ:あ、ご覧いただいてます? ありがとうございます。
その養成所の卒業後、希望者は渋谷とか大宮とか新宿にある吉本の劇場で見習いというか、雑用として出入りできる権利を得られるんですけど、それを1年やって、その他にライブの手伝いやったりとか、色々やったりして、まぁ思うことがあって、ちょっとぱつんってなっちゃって、今は自粛期間です(笑)

qbc:はいはいはい。

寝づ:去年の12月ぐらいにはもうお笑いの仕事から手を引き始めていたので、今年はもうほんとに働いてなくて、やばいもうすぐ一年経っちゃう(笑)
その間ちょいちょいバイトをして、本格的にニートになりだしたのは、5月ぐらいからですかね。

qbc:今実家ですか?

寝づ:実家です。もちろん。

qbc:じゃ、まぁいいじゃないですかね。

寝づ:ははっ。ダメですよほんと。

qbc:(笑)でもまあ、漫画もしっかり描けてるし。

寝づ:なんかちらっとご覧いただいた感じなんですかね?

qbc:インタビュー前はあんまり見ないようにしてるので、noteの固定記事にされてるのだけですが。

寝づ:どんな印象でした? 固定のやつって、さっき固定にしたんですけど(笑)
本当に知らない人が見たらどう思うのかなって思って。
Twitterでご覧いただいてる方は、仕事を一緒にしたことある人だったり、お笑いファンの方だったり、高校の同級生とかだったりするので。

qbc:上手いと思いましたよ。ちゃんと間があって、心理描写寄りだけど、そういう読者の感情のコントロールができてる、しようとしているなーって。
例えばさ、2ページ目の作家志望じゃないのに作家養成所に行った時の話ってタイトルのところ、そのページだけちゃんとシンプルなページにしてるじゃない? シンプルな時はシンプルにするってできてるよね。作品の中に強弱のリズムがつけられてるってことだよね。
色もちゃんと差し色で赤が入ってたりとか、色のメリハリもあるじゃん

寝づ:なんか恥ずかしいすね(笑)

qbc:で、最終コマで不安を強調するために坂道を昇っていくシーンになってて、苦労とか、重苦しい気持ちを表現してる。
ちゃんと表現できる人だよなって思って読んでましたよ。

寝づ:すごい! 自分の想定以上に汲み取っていただいて感動しました。そんな考えてなかったです(笑)

qbc:ほんと? 感性でいけちゃう人なのかな。この部分では、理屈分からないけど、坂のシーンがいるとかっ捉えられるのかな。

寝づ:やったぜ!(笑)

qbc:マンガの世界は、今競争率が高くて厳しい世界だけど、良いマンガだと思いましたよ。まだ続き見てないんですけど。

寝づ:続き無いんですよまだ。昨日描いたばっかりなんで。

qbc:あ、そうなんだ。

寝づ:そうなんです。cakesで連載したいっていうのが最近の欲です。
最近ってか昨日の欲。
今コミックエッセイ大賞っていうのをnoteで募集してて、それに向けて描いています。吉本の養成所エピソードって他に描ける人いなさそうだなあと思って。

qbc:あ、マンガについてのエッセイってテキストコンクールだと思ってた。

寝づ:エッセイのマンガですね。前回エッセイ賞取った「38歳バツイチ独身女がTinderをやってみた結果日記」は、ドラマ化が決まってるらしいです。

qbc:西原理恵子の世界ね。

寝づ:ほんとそうです。

qbc:いいじゃないですか!

寝づ:心理描写が多いって先ほどおっしゃっていただいたんですけど、もはや心理描写しかないんですよ。
これを吐き出しきって、あの時の私を成仏させたいなと思っています。

qbc:(笑)

寝づ:死にたいとかそういうことじゃなくて、エンタメ業界というか、お笑いのライブシーンとかで働いていた・・働いていたっていう言葉もニュアンスが違うんですけど、そこに居たことがあったんですけど、今の私はもうその場所をを嫌いになってしまったんですよ。
これから書いていく予定ですけど、作家志望じゃないのに作家養成所に入っちゃってズルズルやってたら、あ、違うなってことに気づいた話を書きたいんです。

qbc:うんうん。

寝づ:違うなってなったけど、授業料を高校時代必死にバイトして貯めたんです。金額は1年で50万円+税なんですけど、高校生の50万ってデカいじゃないですか。
放課後とか青春を投げ出して、入ったぞ! ってのが自分の中で大きくて、でも入ったにも関わらず「今」の自分はすごい嫌だったので、その1年間のことを描いて、なんか消化したら供養になるかなっていう思いもあって。
コミックエッセイ大賞がきっかけにはなってるけど、どっちかっていうとついでなんです。

qbc:すごいしっかりされされてるじゃないですか。理路整然とした。
行き当たりばったりかもしれないけどさ、50万稼ぐっていうのは、それだけ行きたかったわけでしょ?

寝づ:なんかそうらしいですよね(笑)

qbc:四千頭身に会いたいとかそういう動機じゃなくてさ。

寝づ:そういう動機じゃないんですよ。エンタメ業界、娯楽が好きなんですよ。
単純ですけど笑うって一番ハッピーじゃないですか。だから、楽しい時間を作れるコンテンツに携わりたいなって思ってたんですよ。

qbc:うんうんうん。

寝づ:高校は美術科に入ったんですけど、入学してすぐに私は美術で戦えないなと思ったんです。仕事にしたいとか、ずっと絵を描きたいっていうのが無くて。なんなら1回筆折っちゃってるんですよ。周りも上も下も上手い人しかいないし、もう絵は描きたくない、二度と描くものかって。
そういう気持ちもあって養成所入ったんですけど、なんやかんや行き当たりばったりなんで、今また絵を描いてるし、みたいな(笑)

qbc:まあまあそれはね。

寝づ:よく人に言うんですけど、壁にぶつかると方向転換する車のおもちゃって分かりますか? あれだって言ってるんです、私。自分のこと。
私は壁にぶつからないと壁に気づけなくて、回避出来ないんですよ。行き当たりばったりだって自覚してます(笑)

qbc:なるほどねえ。いや、ちゃんとしてると思いますよ。壁に当たっても壁だって気づかない人もいるからね。

2、エンタメを好きになったきっかけ

qbc:人を笑わせること、楽しませることは、なんで良いんですか?

寝づ:楽しませたいって言うと芸人になりそうな感じですけど、美術はダメだったけど作り手ではありたいところがずっとどこかにあったんですよ。
元々裏方が多分好きで、放送委員とか憧れてたんです。みんなが行けないとこに行けるみたいな、放送室とか。影の支配者感っていうか。
それから、人を楽しませたいっていうよりは、自分がそれに救われてきたからいいなって思った感じですかね。

qbc:救われたって、どんな?

寝づ:うーん。そうですね。小・中学生の時とかみんな習い事をやってて、まわりが「今日習い事だから遊べない」みたいな子ばっかりで、習い事をやっていない私は一人でいること多かったんです。
だから、お笑いの録画見たりとかマンガとか音楽とか動画とか、そういうもので暇を埋めてきた人間なので。

qbc:好きなんだね。単純にそういうのがね。

寝づ:そうですね。・・・そうですね! 単純に好きだからですかね。

qbc:友達がいるとかいないとかもあると思うけど、そこはきっかけであって、一人でじっと見るっていうのが耐えられない人もいますよ。嫌いだったら続かないですよ、ね?

寝づ:確かに。こんな謎の行動力を発揮しちゃわないですよね(笑)
裏方になろうかなって思ったきっかけを聞いてもらってもいいですか?(笑)

qbc:はい、どうぞ。

寝づ:初めてお笑いライブに行ったのが中学3年生の時だったんですよ。
受験があって、私立と公立の試験の時期がずれてて、その合間に、お疲れ! じゃないけど
兄が新宿の劇場に連れてってくれたんですよ。その時、私がハマってたような人たちが出てる寄席を見に行ったんですけど。

qbc:ルミネね。

寝づ:そう、新宿ルミネです。有名な人ばっかが出てるような。NONSTYLEとか、その辺が出てるようなやつを見に行って。
qbcさんは見に行ったことありますか? お笑いライブって。

qbc:お笑いライブ、無いです。

寝づ:他の劇場は分からないですけど、吉本の劇場って始まる前にCMが入るんですよ。ルミネだったらルミネのCMも入るし、当時見に行った時はオロナミンCがスポンサーで、入場時にオロナミンCとかもらえたんですよ。
そのオロナミンCのCMってドキュメンタリーチックで、「オロナミンCは夢をあきらめない全ての人を応援します」みたいなコピーがあって。
なんかいいなって思っちゃって。多分、私あれなんですよね。お笑いじゃなくて、広告が好きだったんですよね。

qbc:はいはいはい。

寝づ:っていうことに気づかず、なんか裏側で見えないところで支えてるのって
かっこいいなって思ったのか、広告がかっこよかったのか、ちょっと何が引っかかったのかはちゃんと分かってないんですけど(笑)、それがきっかけなんですよ。
だから広告も好きなんですけど。広告でも良かったかもしれない・・

qbc:いや、なんか全然筋がすごい通ってると思ってますけどね。

寝づ:まじっすか

qbc:全然通ってるよ。その頃から絵は描いてたんです?

寝づ:そうですね。むしろ公立の美術科受験が目前だったので、よく絵を描いてましたね。美術科の受験って実技もあるから、デッサンも描いてましたね。

qbc:いつ頃から絵が好きに?

寝づ:絵はずっと好きじゃないです。

qbc:いつから描き始めた?

寝づ:いつからっていうか、みんなと同じですよ。幼稚園とか。

qbc:そっかそっか、幼稚園で描くもんね。

寝づ:私としては、いつから描き始めたとかじゃなくて、みんながいつのまにか辞めていったっていう感覚なんですよ。
小学校の時はみんな一緒に休み時間に自由帳広げて絵を描いたりしてたのに、部活に入ったり、進学したり、習い事したりして、どんどんみんな当たり前に絵を描かなくなってくなーっていう感じ。
なのでいつから始めたって言うとちょっとわかんない。物心ついた時からですかね。

qbc:絵から離れなかった理由って何なんだろうね。

寝づ:暇だったからじゃないですかね(笑)。ほんと紙とペンがあれば描けるので、絵って。
自由帳って常備してませんでした? 小学生の時。

qbc:私、全然絵が描けないから、なかったかな。

寝づ:コナンだけ上手い人とかいるじゃないですか

qbc:そんな積極的に描くほうじゃなかったかな、私は。映像は、何が好きだったの?

寝づ:ボーカロイドってわかりますか?

qbc:全然分かります。

寝づ:小学生の時に友達にすすめられて聞くようになりました。その時が全盛期だったんすよ、ニコニコ動画とかが。

qbc:私、ニコニコ動画は見てたからね。10年前はちょうどネットの仕事をしてて。

寝づ:おもしろムービーズとか、FLASH系のやつ見てました。その辺が最初ですかね

※実はインタビューした20歳前後から、たびたび聞いていた「おもしろムービーズ」。閉鎖されておりました。

qbc:その頃が小学生だったのか。私が30歳のころだね。

寝づ:(笑)家にマンガとかがあんまなかったので、パソコンでずっと簡単な脱出ゲームやってたり。
あ、あとは・・アメーバピグ! アメーバピグやってました(笑)
あと、ディズニーとかはずっと好きですね。

qbc:高校の頃は?

寝づ:高校の頃は、ほんとにバイトに明け暮れてました。
高1の時に地元に劇場ができて、お笑いのライブが身近になったんですけど、その時に養成所の存在を知ったんですよね。
劇場にチラシがあって、そんなのあったんだ、好奇心でいくらぐらいかかるんだろうなーとか見て、50万だから、あと2年半ぐらいあるから・・月いくらで・・、いけるな!とか思って。
最初っから大学に行く気が全くなかったので、今から動き出せばいけるなと思って。そこからはもう何も考えてないっす。ただ目標金額貯めることだけに必死で、遊びにも行かず、買い物ももろくにせず、ただ家と学校とバイトを往復するだけの学生生活でしたね。
まぁおもしろかったし楽しかったですけどね、学生生活。今思えば。

qbc:バイトは何してたの?

寝づ:サイゼリヤでキッチンをぶん回してました。未だにやけど跡が消えないんです(笑)

3、お笑い業界と女性

qbc:それで養成所に入って、そのあと業界に行ったわけじゃないですか。
で、そこで何が嫌だったんですかね? そこで何があったというか。

寝づ:あの私、生物学上は女性なんですけれども、女性扱いされるのがすごく嫌で。まあ
お笑い業界って、男社会なんですよね。

qbc:なるほどなるほど。

寝づ:違和感がずっとあって。スタッフは女性も多いですけど。例えば本当に構成作家・放送作家になりたかったとして、私は「女性作家」にしかなれないんですよ。

qbc:はいはいはいはい。

寝づ:そういうところとか、そんなつもりじゃないのに勘違いさせるようなことを言っちゃったみたいで、気持ち悪い誤解をされて迫られたことがあって。

qbc:えー。

寝づ:主にそんな感じです。お笑い好きの中では知られてても、全然世間的には売れてない、バイトしてるみたいな人っていっぱいいるんですよ。だから年々辞めたりとか、減っていくものなんですけど。そんな厳しい世界で、個人的にすごくネタが好きな方がいて。辞めてほしくないから、あのネタすごい好きですっていうことを伝えていたら、個人的な好意だと思われちゃったらしくて。その人、奥さんも子供もいんのに、何でちょっとその気になってんだろう、すげえ気持ち悪いって思って。

qbc:年齢近い人?

寝づ:一回り上ですね。30いくつとか。結婚してなかったとして、そもそもそんなつもりで言ってないし、スタッフだし、仕事でやってるし、知らない間に性的に見られてるの気持ち悪いなって思って。

qbc:うんうんうんうん。

寝づ:面白いとか好きとかって主観じゃないですか。一切笑えなくなっちゃったんですよ、その人のネタ見て。めっちゃ好きだったのに。

qbc:あんなに好きだったのに、ね。

寝づ:まじ笑えない、見たくもねぇってなっちゃって(笑)

qbc:そうなるんだね、なるほどね。

寝づ:むなしいっていうのと、もう一つ大きな理由は、思ったより私はお笑い好きじゃないなっていうところですね。

qbc:本当のお笑い好きみたいな人と比べたら、って意味?

寝づ:というよりは、エンタメ業界全般。多分どこでもそうなんですけど、やりたいだけでできる人がいるじゃないですか。
「関われるだけで嬉しいんで」「お金なんて大丈夫です」みたいな。いるじゃないですか、若手とか新人とか。で、それに味をしめてる人を動かす立場の人間。悪い大人っていっぱいいるじゃないですか。

qbc:うんうん。それで持ってるようなもんだよね。

寝づ:「関わってるだけで嬉しいんです」で頑張れる人は、それはそれで良いんですけど
、私は技術とか労力に対して、ちゃんと対価とか報酬を支払う、もしくはその姿勢がある人じゃなきゃ嫌だな、って思っているんですけど。
特に吉本って、よく自虐で今月の給料十何円でしたみたいなのとか、よくあるじゃないですか。対価をもらわないことに慣れすぎてて、無意識で人にタダ働きを強要してくる人がめちゃめちゃいるんですよ。全員じゃないけど。
それを引き受けられるほど私はお笑い好きじゃねぇなって思って。でも、吉本はそんな人ばっかなんで、ここじゃねえなと思って(笑)

qbc:地方から来た若者をボロボロにして実家に帰す装置産業だよね、あの組織、あの業界って。

寝づ:年数重ねてれば重ねてる人ほどやばい人じゃないですか。

qbc:そこで生き残ってこれた人だもんね。

寝づ:普通の人は生き残れないので、そういう意味では私って結構普通だったんだな
とか思ったりするんですけど。

qbc:そうね。めちゃくちゃ真面目な方だと思ってお話をうかがっています。

寝づ:はははっ! まじめ。初めて言われました(笑)

qbc:しっかり自分の頭で考えていらっしゃる方ですよ。

寝づ:ありがとうございます。

qbc:真面目だと思った理由は、これだ! って決めて真剣にバイトをしたところですかね。自分で学校の入学資金を稼ぐってすごいですよ。甘えがないっていうか。

寝づ:でも、それ以降できなくなっちゃったんですよ。全然バイトが続かなくなっちゃったんですよ。明確に目標があればできるんですけど。

qbc:そこは、お休みしましょってことでしょ。高校生の頃から数えたら、5年近く夢に費やしたわけだから。自分でこうだなって思ったことを必死でやってみた。とりあえず学生になるかみたいな人が多い中でさ。
で、夢をひとつひとつ叶えて、ようやく業界に入った。それで現実を見たらうんざりした。

寝づ:うんざりした(笑)。ほんとに(笑)。

qbc:それで休むのは良いと思いますよ。疲れたんだからさ。

寝づ:ありがとうございます。本当に、今年ずっと焦りがあって。というのも、私の同級生って今年で大学4年生なんですよ。
コロナとか想定外のことはもちろんあったんですけど、他の子が大学4年で学んでいる間に、なんかヘラヘラフラフラしてたんだから、4年でなんか成さなきゃっていう焦りが謎にあって、自分に、ずっと。

qbc:はいはいはい。

寝づ:もうエンタメ業界なんていいや、私が居たお笑いライブシーンもいいやって思ってから、全部どうでもよくなって。なんかもう関係者に見られたりしたらどうこう思われちゃうかなとかいうのも、そもそも自意識過剰ってか考えすぎな部分ではあったんですけど、絶対に表に出さない、出さないようにしてた自分を全開放してます、今(笑)

qbc:はいはいはいはい。

寝づ:ほんとにあの、裏方の時って超自分殺してたんですよ。

qbc:はいはいはいはい。

寝づ:裏方ってそういうものだと思ってたんで。何が正解かわからないですけど。
だからどんな人でも平等にとか、ルールには意味があるみたいな、舞台でこれ使っちゃダメないのはこういう理由があるからですよ、だから〇〇さんならいっかとかじゃないんですよ、みたいなこととか。
そういう当たり前なことなんですけど、それを守って、たぶん普通にめっちゃ真面目だったんですよ。自分の中にスタッフとはこうあるべきみたいな像がめちゃめちゃあって、それを守ろうとするあまり、なんか超自分死んじゃったって感じなんですよね(笑)

qbc:うんうんうんうん。

寝づ:性的に好かれてるって勘違いされるし、クソみたいな会社員に見下されるし。はははっ最悪だよって思って(笑)
女とか、若いとか、それだけで見下してくる人がいっぱいいるんで。ただ、それをなにくそって跳ね返してがんばれるほど、私はここにいたくないって。

qbc:天秤にかけた時にね、耐えられるかどうかって。

寝づ:そうなんですよ。自分のことを女性だと認めて割り切れていたらまだ分かりやすかったんですけど、そこもちょっとできてなくて・・

qbc:そんなことないよ。その芸人は気持ち悪いよ。

寝づ:(笑)。そこもなんか今お笑い業界でも言われてるんですよ、女性作家の活躍がどうだとか、女芸人の活躍がどうだとかみたいな話。
私は女にもなれてないんだよなーっていうのがあるから、どこか他人事で、今のところ。行き場のない思いをnoteとかTwitterにぶちまけてます(笑)

qbc:今でも描いてるの?

寝づ:note腐るほどありますよ。読まなくていいですけど、多すぎるんで。

qbc:今の話を聞いたら、めっちゃおもしろそうだけど

寝づ:な、なんの話です?

qbc:女性のやつ。

寝づ:それはちゃんとは描いてはないですね、今。そんなに自分の中で言語化できてない部分なので。

qbc:読みたいよ。それ読みたい。

寝づ:おぉ。ちょっと検討します。

4、挫折

qbc:こないだインタビューした人、元放送作家さんでしたね。

寝づ:えぇ、知り合いだったらどうしよう(笑)。そんなことないか、そんなわけ(笑)。

qbc:そんな大きい業界でもないから、あんがい知っててもおかしくないけど。
その人は年齢も私に近いし、割と冷めて見てたからだけど、もうこの業界はダメかもっていってましたね。

寝づ:ははっ、わかるー(笑)

qbc:テレビ業界がね。

寝づ:あっ、テレビか(笑)

qbc:abemaとかネットの方に移行するよねって。で、その時に古い体質って多分カットされるんじゃないかな。プロデューサーが、もうテレビ業界の人じゃなくなってくる。技術の人はテレビ業界から引っ張ってきてるみたいだけど。

寝づ:あー。えーおもしろいですね。

qbc:abemaとかって、当然テレビ局の人じゃないじゃない。

寝づ:そうですね。

qbc:発注はテレビの制作会社に行くんだけれども、例えばゲームの番組やりましょうよと。で、視聴率を取ろうと思わないんだよね、そんなに。
これがおもしろいって思えるニッチなコンテンツを作って、そこにファンがつけばいいっていう考えだから。マスをバンバン取ろうとしてないですよ。あそこは。

寝づ:あーなるほど。

qbc:広く普遍的な人気を取るってめちゃくちゃ辛いじゃない。出る人間、芸能人も大変だし、それを支えようとする人の大変じゃない。
結果、すごい分かりやすさを求めちゃって。
私なんか、ほとんどテレビ見ないしさ。

寝づ:私も見ないっす(笑)。

qbc:テレビ見ないんだ? 元業界の人だったのに?

寝づ:いや、テレビ元々見ないですよ。世代もあると思いますけど

qbc:そういう世代か。

寝づ:全然見ないです。あ、私はですけど。
養成所同期の30歳ぐらいの方とかは、ずっとテレビつけてるみたいですけど。たぶん今の若い人が暇だったら、youtube見てるのと同じような感覚でテレビつけてるんだろうなって。普通にそこは世代差なのかなと思ってます。

qbc:そうね。私は20歳ぐらいからテレビ見なくなったかな。インターネットばっかりになった。

寝づ:お仕事柄ですかね。

qbc:それまでずっとテレビ見てたから、もういいやみたいな状態かな。断捨離みたいな。

寝づ:あ、ミニマリスト?

qbc:いや違う。切り換えるとかすごい好き。捨てて新しいこと始めるみたいなのは、好き。
きっと、考えることが好きな方なんですよね。

寝づ:そう、溢れて止まんないです(笑)。

qbc:で、もうひとつすごいのは、50万円貯めたっていう熱心さ、努力。小さいことを積みあげていく。

寝づ:そういう時代もあったんですよ(笑)・

qbc:で、そのたっぷりのエネルギーで夢に向かっていったんだけど、理想と現実のギャップに挫折したと。

寝づ:これが挫折か・・これが挫折なのか(笑)

qbc:挫折挫折、これが挫折ですよ。夢がないとそんなバイトしないでしょ。

寝づ:なんで私がんばれたんだろって、今めっちゃ思います(笑)

qbc:そういうコツコツやるのが好きなタイプなんだと思いますよ、元々。

寝づ:その時だけはよくやったと自分でも思ってます(笑)。今こんなんでごめんねって思ってますよ。高校の時の私に顔向けできないって思ってます(笑)。

qbc:それはそれでいいじゃん。それで耐えて歪んじゃうよりか、良いと思います。

寝づ:私がそもそも大してそんなに絵が好きじゃないの美術科に行った理由って、なんとなく絵を描くのが得意というか、それでちょっとちやほやされてたからというか。
クラスにたまにいるじゃないですか、絵が上手いやつ。運動会のプログラムの表紙とか描いてるような。そういう奴だったんです私。
絵が得意なのか好きなのか、その境界は曖昧で、もしかしたら将来マンガ家とかイラストレーターとかになりたいのかな、どうなのかな? って思った時に、美術科・・元々普通科に行くつもりだったけど、あっ美術科があるって思って。

qbc:うんうんうん。

寝づ:例えば美術科に行ったら、イラストとか美術の仕事がしたくて美大に行きたいってなったらアドバンテージになるし、美術科行ってみてやっぱ違うってなったら大学に行く前に気づける。っていうので結局美術科に行って、あ、やっぱ違った。次、養成所へ行こう! って切り換えたんですけど。で、養成所に行ったのも、早いうちに試してダメだったらまた方向転換できると思って入ったから、この絶望の期間はある意味予定してたはずなんですよ(笑)。
上手くいけばそれはラッキーだし、ダメだった場合でもダメだって言える期間を作れるように、わざわざ高卒すぐで目指したんですよ。っていうことを今思い出しました(笑)。

qbc:全然、ぶつかったら方向転換する車じゃないじゃん。ちゃんと考えてるじゃん(笑)
インテリジェンス搭載の車だと思うけどね。

寝づ:まじっすか。

qbc:ちゃんとルートを決めてばーって走って、こうなった時には曲がろう、でもその時にぶつかるかもしれない、でもぶつかるまでは突っ走ろう、ぶつかっても休む時間はあるから、て。

寝づ:目的地は設定できるけど、合ってるかは分かんないみたいな。

qbc:それしょうがないじゃん。誰も分からないよ行先が合ってるかどうかは。
決められること自体がすごいんだよ。これ、って決められない人が多い。

寝づ:めっちゃ賢い中学生じゃないすか(笑)。

qbc:私なんか一切人生設計考えてなかったよ。今もだけど。まあ、無名人インタビューとか小説のことは考えるけど。

寝づ:だから、これからどうしようかなって感じです。捨てるも良し、うまいとこだけ拾い集めて利用していくも良しなんで。なんでもできるぜ! いえーい、です(笑)。

qbc:全然そうだと思いますよ。うんうん。

寝づ:カラ元気みたいになっちゃった(笑)。
とりあえず、経済状況にゆとり、ゆとりまでいかなくても、普通になりたいですね。とりあえずバイト先から連絡くることを祈ってます(笑)

qbc:そうね。コミックエッセイは普通にうまくいくような気がするけどね。

寝づ:まだ始めて3ヶ月とかなんで、3ヶ月続けられた。すごい! って自分で思っているんですけど。

qbc:え? マンガを描きはじめたのも3ヵ月なの?

寝づ:そうです。養成所のやつとかは昨日描いたんですけど

qbc:っていうかなんでマンガ描けるの? 見よう見まねで描けるの?

寝づ:見よう見まねですね。小学生の時にそれこそ西原理恵子的な、毎日かあさんとか、うちの三姉妹とか一番流行ってたんですよ。育児エッセイとか。ちびまることかも言ったらそうだし。
そういうの見て育ってるからじゃないですかね。だから雰囲気ですよ。ルールとかわかんないし。

qbc:エッセイマンガのエリート教育受けてるんだ。

寝づ:違う違う。そんな大したものじゃないです。でもまぁ馴染みは深いというか
そういうのはあるかもしれないですね。
とりあえず毎日描いていくっていうことを目標にやってるんですけど、ちょっと続けられる内は続けてみようかなって思ってます。

5、21歳の熱量

qbc:最初さ、話すことないって言ってたじゃないですか。でも、全然あるじゃないですか(笑)。

寝づ:熱くなっちゃいましたね(笑)。だからダメなんですよ。すぐ熱くなっちゃうんすよ(笑)

qbc:全然もっと熱くなっていいですよ(笑)。

寝づ:これ1時間はみ出る人とかいるんですか?

qbc:っあ、切ります切ります。時間で私が切ります。全くはみ出ないわけじゃないですけど、時間で終了にします。
無名人インタビューは、テキストにしてますけど、やっぱり生の声のほうがおもしろいですよ。
ただ、そうすると突っ込んで話せないんですよ。オフレコにしたいこともそのまま音にのっかっちゃうから。これがそのまま音声になったら嫌でしょ?

寝づ:私はまぁいいですけど(笑)

qbc:っあほんと? 大丈夫なんだ。

寝づ:でも楽しみです。どんな記事にしていただけるのかがすごい(笑)。どこをつまんでいただけるのかなっていうのが。

qbc:基本的にほとんど載っけるけどね。

寝づ:あ、そうなんですね。私、もう最初の方に喋ったこと覚えてないです(笑)
ただ私、シラフと思えないくらいずっと笑ってますよね(笑)

qbc:あ、それは緊張じゃないの?

寝づ:あれです、武装? 武装です。
初対面の人からめっちゃ愛想いいとか明るいって言われるんすよ。
でも絵日記見ていただいたら分かるんすけど、私、めっちゃ暗いんですよ。

qbc:あ、明るいとは思ってないですよ(笑)。

寝づ:第一印象だけだと、明るいって言われることがあるんですよ。
でも、ほんとはめっちゃ死ぬほど暗いっていう。

qbc:大丈夫です(笑)。

寝づ:大丈夫って言われた(笑)。

qbc:最近、インタビューは20前後の人が増えたかな。

寝づ:みんなやっぱインタビューされたいんかな? 分かるな(笑)

qbc:今日公開したインタビューが、寝づさんと同い年ですかね。

寝づ:同い年です。国際協力の。

qbc:そうそうそう、全然違うよなって(笑)。東京都立大でエリートじゃんて(笑)。

寝づ:いやもうほんとだからどうしようって思ってたんですよ。何かすごいことしてんじゃん(笑)。クラファンしてんじゃん(笑)。

qbc:いろいろな人生があるよね。そういう意味で、寝づさんの養成所マンガ、めちゃくちゃ楽しみです。

寝づ:ありがとうございます。自分が継続できることを前提とした超大作の予定ですが。

qbc:中身ないですって言いながら、そういう野心がしっかりあったわけじゃん。

寝づ:あー、はい(笑)。これよくないですね。私、予防線めっちゃ張っちゃうんすよ(笑)。

qbc:なるほどね。なんとなく愛想笑いとか防衛線かな、みたいなのは感じてはいたけど、ここまで用意周到に考えてるとは思ってなかったです。

寝づ:ほんとですか?

qbc:防御してるからには、何かを守っているわけで、それが何かなって思ってたんだけど、それは要約すれば野心だったてことだよね。

寝づ:野心まみれですね。意外と。そう言われてみれば。

qbc:自分の作ったもので人を感動させるのは、すごい興奮するからね。

寝づ:そんな大それたものじゃないですけど。今は自己満です。

qbc:そんなこという人が、いきなりこのマンガの感想言ってください、てインタビュー最初に言わないでしょ。

寝づ:自分の描いたものをどう思うのかなって。なかなかこういう出会いはないので
。ちょっと新鮮な角度から意見を聞きたいと思って(笑)。
でも良かった。まだそういう心が死んでなくてよかったです。

qbc:最後に言い忘れてしまったことはありますか?

寝づ:えーなんだろう・

qbc:これは伝えたいなってこと。

寝づ:これは伝えたいな・・。別に誰にどう思われても、多分私は絵を描き続けると思います。

qbc:かっこいい。

寝づ:別にお前がどう思おうと関係ないしって思ってます。あ、qbcさんに言ったわけではなく(笑)。
おもしろいとか、つまんないとか、下手とか、関係ねえからなって思ってます。言い聞かせてます。自分に。自分に言い聞かせます。じゃないと、人目を気にすると、心が折れそうになっちゃうんで。人目を気にしない、を意識的にしています。それぐらいです。

qbc:ありがとうございました。楽しいインタビューでした。

寝づ:はい、ありがとうございます。

▷アウトロ

で、3か月前のインタビューで、その後寝づさんの養成所マンガがどうなったかといえば、連載が止まってるのです。残念。というわけで、このインタビュー原稿は寝づさん続き待ってます! というメッセージでもあるのです。
いかがでしたでしょうか。お笑い業界の話、進路の話、悩める一人の人間のお話が聞けたと思ってます。夢に全力でぶつかったこと、失敗したことを評価しなければ、人間は前に進まないと。失敗は成功の母。苦痛は人類を完成に導く。成功するまで失敗する。
誤謬なく、失敗は成功への梯子です。
まあ今はお休みなさい。と思いつつ、何かをトリガーにまた動きだしてくれるのではないのか。
このテキストが、他のインタビュー参加者の気持ちと同様、一人でも多くの似た境遇の人たちの目にふれることを、願っております。

編集協力:みみみさん

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