「なぜ今なのか?」はモノづくりのテーマになる #6
こんにちは、アンノーンブックス編集部です。
今年もすでに2ヶ月が経とうとしているなか、2021年をどんなふうにデザインしていきたいか、僕らもあれこれ考えている。
まずは今年6月にもUNKNOWNBOOKSのレーベルからの新刊として出版を予定しているのは、レゲエ・ユニット「MEGARYU」のボーカリスト、RYUREXさんの本。
昔からのRYUさんのファンはもちろん、これまでRYUさんのことを知らなかった人にも“意味のある一冊”として届けるために日々奔走中だ。
数百ページかけてまで伝えたいことは?
「なぜ今、この著者で、この本を出版するのか?」
これは、僕らが本づくりをする時に、必ず意識しておく必要がある問題のひとつだ。「なぜ今、この著者で、この本を出版するのか?」という問いに対し、明確なアンサーを持っていなければ企画の段階で却下、おそらく出版にこぎつけることもないはずだ。
ところが、アンノーンブックス代表の安達の場合、その答えが「有名な著者だから」「多くの人が関心の高いテーマだから」では満足しない。それだけでは読者へのメリットが弱い、と考えているからだ。
難しいのは、それが「読者にとって役立つことが書かれているから」という理由の場合。もちろん、ハウツー本のように読んだ人になんらかの利を与えることができることは重要だ。「役に立つ」とか「タメになる」は、本の持っている大きな役割でもあるからだ。
ただ、アンノーンブックスがつくる本は、「役に立つ」「タメになる」のその先にあると思っている。つまり、役に立つこと以上に、これからの行動や生き方が変わるくらいのインパクトを与える本をつくることが目標。
そのためには、「なぜ今、RYUさんの本を出すのか?」の問いかけの答えの鍵になる、「今」という時代性を強く感じてもらえるような本にしたいのだった。
RYUさんにしか言えないこと、今しか言えないこと──。
それが、読者にとって大きなメリットになること。ここを僕らがとことん考えるのは、本のテーマを明確するために必要な作業でもある。
「自分しか言えないこと」で「今しか言えないこと」
実際、RYUさんにとっては、「自分しか言えないこと」と「今しか言えないこと」は僕らが考えるよりもずっとシンプルに、彼のなかに存在しているものだった。
というのも、音楽の才能にめぐまれ、デビュー早々にオリコン1位というトップを獲ったアーティストの多くは、その後もずっとアーティストとしての人生を続けていくだろう。
ところが、RYUさんの場合は違った。病気に見舞われ、歌えなくなった。
じゃあ、それまで歌うことがすべてだったと言ってもいいRYUさんから歌が奪われたら、RYUさんの人生は終わってしまうのか?
……もちろん、そんなはずはない。トップアーティストとしてのRYUREXは終わっても、黒川竜次というRYUさん自身の人生は歩みを止めることなく前進している。
ひとつしかないと思い込んでいた行く手が閉ざされても、じつはまだたくさん選べることができる道の存在に気がつく目を持ち、進める足があれば十分、人生は楽しめる。
これは、今まで想像もしなかったような災いが降りかかってきた今という時代にも言えること。いやむしろ、今しか言えないことであり、RYUさんほど説得力を持った言葉で言える人もほかにいない。
となれば、おのずと本のテーマも見えてくるはず。さあ、あとは形にするだけだ。