断ることの難しさ(2020年執筆)
『私さー、人の頼みとかを断るの苦手なんだよね。』
そういうと、大体の人はこう返す。
『え、めっちゃ優しいじゃん。』
『良い人じゃん。』
『性格いいんだね。』
困ってる人を放っておけない。それは自分の長所だと思ってた。誰か困っている人を見かけたら助けるべきだと思うし、何か、本当に些細なことでも頼まれたら引き受けるべきだと思っていた。寧ろ断り方がわからなかった。
自分が困ってる時、助けてほしいとき、誰かが手を差し伸べてくれたらとてもとても嬉しい。
だから私もそうするべきだと思っていた。
たとえ誰かを助けることで自分に不利益が生じたり、自分への負担が増したとしても、助けを求めてる人を放ってなどおけない。100%の助けにはなれなくても、少しでも相手が救われるように努力したい。
でもそんなある日
『それってすごいとは思うけど良いことなのかね?』
と言われた。
人の頼みとかを断らないことは偉いことかもしれない。でも、そのせいで自分のことを犠牲にしたり、大切にできなくなったら、それは良いこととは言えないのではないか。
自己犠牲の上で成り立つ優しさは、かえって相手へのプレッシャーになるのではないか。
確かに、言われてみればその通りかもしれない。
それでもやっぱり私は自分を犠牲にしてでも困ってる人を放っておけなかった。
部活で、クラスで、バイト先で
人手が足りない、時間が足りない、自分の力だけじゃどうにもならない。
そんなことを言われた。
私が断ったとしてもきっとどうにかなるだろう。
私以外の誰が助けるだろう。
でももし、誰もいなかったら?
誰も、何もしなかったら?
この人たちはどうなるんだろう。
私があなたの立場に立ったとき、誰も頼みを聞いてくれなかったら、助けてくれなかったら…。絶対に傷つくし落ち込むし、何より困るだろう。
そう思ったら口から出てくるのは
『いいよ。任せて。』
その二言だけだった。
そしてだいたい
『ありがとう。』
が返ってきて。
そしてふと気付く。
それだけ?
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