大学授業一歩前(第94講)
はじめに
今回は龍谷大学社会学部教授の畑仲哲雄先生に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。是非、ご一読下さいませ。
プロフィール
Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。
A:龍谷大学社会学部教授です。1961年大阪市に生まれました。関西大学卒後、毎日新聞、日経トレンディ、共同通信で通算26年間、取材や編集の仕事に従事しました。42歳で働きながら東京大学大学院情報学府に進み、博士(社会情報学)の学位を取得し、大学教員になりました。2015年に著書『地域ジャーナリズム』が、第5回内川芳美記念マス・コミュニケーション学会賞に選ばれました。
オススメの過ごし方
Q:大学生にオススメの過ごし方を教えて下さい。
A:いつも鞄に数冊の本を入れておき、すき間の時間に読むとよいでしょう。どこに行くときも本が入っている鞄を持ち歩いてください。本に金を惜しんではいけません。なぜそんな説教めいたことを言うのかというと、何人もの社会人から「学生時代にもっと本を読んでおけば良かった」という嘆きを聞かされてきたからです。読書習慣は人生を豊かにしてくれる宝物です。
必須の能力
Q:大学生に必須の能力をどのようなものだとお考えになるでしょうか。
A:文章力です。世界や自分のことを、母語で適切に記述する能力をもつことは、教養ある者の証しです。大学は専門的な知識を身につける場所に違いありませんが、すべての前提に読解力と表現力が必要です。多くの学問には記号やデータが使われますが、意味や価値を伝えるには文章表現能力が必須であることはいうまでもありません。
学ぶ意義
Q:ご自身にとっての学び意義を教えて下さい。
A:私にとって学びは徳(virtue)です。徳には、自らの経験を通して得る intellectual virtue と、人の助けを借りて習慣的に得る moral virtue があると言われています。私は記者や研究者の仕事を通じてintellectual virtueを求めてきました。そしてその背景に、学生時代に指導教員から教えられたアリストテレスの「善く生きる」という moral virtue があったと思っています。
オススメの一冊
Q:オススメの一冊を教えて下さい。
A:住井すゑ(1981)『橋のない川』(新潮文庫)です。日本に根強く残る部落差別の問題を、兄弟2人の成長を通して描いたベストセラー小説です。全7巻の超長編ですが、私は、ページをめくるのがもったいないような気持ちで読み終えました。1992年に映画化されているので、映画もおすすめです。ほかにもオススメしたい作品はたくさんあります。大学生時代には、人間の成長を描いた名作をたくさん読むことをお薦めします。
メッセージ
Q:最後に大学生へのメッセージをお願いします。
A:世界は矛盾に満ちています。日々のニュースや社会の問題に目を光らせてください。権力者の不正には怒ってほしい。困窮している人には優しく手をさしのべてほしい。当たり前のことばかりです。でも、これが難しい。私自身じゅうぶん実践できているとは思いません。お互い努力しましょう。
おわりに
今回は今回は龍谷大学社会学部教授の畑仲哲雄先生に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。先生の著書『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』勁草書房もオススメの一冊です。
SNSの発達のよって誰もがいわば、ジャーナリスト的な活動が出来る中、私達それぞれにも情報を発信する際の倫理観が必要でしょう。そのような視座を獲得出来る一冊です。次回もお楽しみに!