大学授業一歩前(第89講)
はじめに
今回は理工系を中心に専門書を出版してらっしゃるやまなみ書房様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。是非、ご一読下さい。
はじめに
Q:自社の概要を教えて頂きたいです。
A:やまなみ書房は、2018年に発足した理工系を中心とする学術系小規模出版者です。2016年より出版以外の形でコンテンツを作成しておりましたので、正式な開業は2016年としております。全ての出版物をweb上で無償公開 (Creative Commons Attribution 4.0 International License) しており、自由に閲覧・印刷・再配布を行うことができます。紙媒体は三省堂書店やAmazonでお買い求めいただけます。寿命の短い教科書の量産ではなく、長く読まれるものを少しずつ作ってゆくことをポリシーとしております。
オススメの一冊(他の出版社の中から)
Q:オススメの一冊(学部一年生、二年生向け)を他の出版社様の本のなかから一冊ご紹介頂きたいです。
A:吉川幸次郎『読書の学』(筑摩書房 1988(筑摩叢書), 2007(ちくま学芸文庫))(決定版全集 第25巻所収)
中国文学の大家、吉川幸次郎の思索の跡が記された書物。「何をいっているか」のみならず「いかにいっているか」を把握することを「読書の学」と呼んでおり、前半は司馬遷『史記』の「高祖本紀」の冒頭を、後半は『論語』の「逝く者は斯くの如きかな〜」を精読している様を赤裸々に記すことで、著者の「読書」を追体験できる仕掛けになっています。理学・工学的な思考の型ばかりがもてはやされる現代において、その対極にある東アジアの伝統的な文献学的手法も、時折思い出すことは大切かと思いご紹介させていただいた次第です。自らの分野の思考の型のみを絶対視しないようにするためにも、古今東西色々な分野の書物・学生・研究者と交流することは非常に大切だと思います。
オススメの一冊(自社の中から)
Q:オススメの一冊(学部一年生、二年生向け)を自社の中から一冊ご紹介して頂きたいです。
A:樋口正人『素粒子読本』(やまなみ書房 2020年)
物理学の世界で花形とされる素粒子論は、膨大な前提知識がないと取り組めない世界です。しかし本書は平易ながらも厳密性をおろそかにせず、一つ一つ丁寧に説明しながら素粒子論の世界へと誘います。著者は実験家です。現代の素粒子実験は莫大な資金・人・時間を投じて行うものばかりになってしまいましたが、著者は泡箱と呼ばれる小規模な装置を用いて当時最先端の研究を行っていました。高校生や人文学・社会科学の方々にもおすすめです。
メッセージ
Q:大学生にメッセージをお願いします。
A:私も学生です。ですので、メッセージのようなものはなかなか贈り難いです。強いて言えば、各人各様、さまざまな克服しがたい困難を背負っているかと思いますが、あまり引っ込み思案になりすぎず、できれば快活に生活していきたいものだと思います(『学問のすゝめ』17編)。しんどいときは色々な人に助けを求めましょう。1人では解決出来ない問題も、どうにかなるかもしれません。以上は大学生へのメッセージというより私へのメッセージ、自戒でもあります。
おわりに
今回はやまなみ書房様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。
自らの分野の思考の型のみを絶対視しないようにするためにも、古今東西色々な分野の書物・学生・研究者と交流することは非常に大切だと思います。
このメッセージを刺さります。私自身、政治哲学に関する本しか読めていないので、この分野の思考方を絶対視してしまっているかもしれないです。様々な分野の思考方に触れる事で、自身の専門分野にも活かせるように、他の分野の本も覗いてみます。次回もお楽しみに!