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テレビは死んだのか。

「衝撃的なデータ」なる文言がネット上で話題になった。

最近よく見る「若者のテレビ離れ」についての記事である。

若年層のテレビ視聴時間が短くなっていることがデータとして示されたという。

テレビ以外にもいわゆるオールドメディアといわれるような媒体は、急速にネットに置き換えられ、その役目が縮小し続けているようにも見える。

「若者のテレビ離れ」を考えるにあたって、今現在のオールドメディアの立ち位置と、役割について考えてみたい。

エンタテイメントとしてのテレビ

先の記事を引用したツイートをいくつか見ていると、「テレビはつまらない」「テレビはもはやYouTubeを見るためのモニターでしかない」などテレビのコンテンツが、エンタテイメントとして面白くないからテレビを観ないのだとするものがいくつか見られた。

たしかに、NetflixやAmazon Prime Videoなどのサブスクリプションサービスが独自コンテンツを増やしながら充実し、またYouTubeでは無数の動画が無料で見ることができる。

そうすると、いつでも好きなものを観ることができるこういったサービスに比べ、番組表に合わせてテレビの前にいることが求められるテレビは融通が利かないし、またテレビに都合を合わせるインセンティブがあるコンテンツもあまりないのかもしれない。

ではテレビのコンテンツが、こういったインターネット上のコンテンツに比べ、エンタテイメントとして劣るものなのだろうか。

私はそうは思わない。

確かに、番組の訴求力を特定の出演者の人気に頼っている番組や、他の番組のプロモーションに重きを置いている番組も確かにある。

しかし、テレビ局の番組制作におけるリソースは依然ほかの媒体と比較しても優位である。

実際、ネット独自の配信番組にもテレビ局やそれに関係する制作会社がかかわっているものも多く、そういう視点でいうと、テレビを観ない人が視聴しているネット上のコンテンツの源泉がテレビということも少なくない。

また、中高生がふざけて撮影したTiktokの動画や、素人がゲーム実況をするようなYouTube動画と比較して、テレビのコンテンツが劣っているとは私には思えない。

ここで、YouTube上で人気バラエティ番組名を入れて検索してみた。

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YouTube上には番組の放送直後から番組の違法アップロードが横行し、数千、数万回再生を獲得しているものも多い。

また、テレビ番組を切り取り編集したまとめ動画なるものも多数存在している。

これらを考えると、先の調査において「テレビを観ない」と回答した人の中にはこういったテレビ番組の違法アップロードなどを観ている人は相当数いるといえるのではないか。

報道機関としてのテレビ

また最近は、テレビや新聞などといったマスメディアについて、フェイクニュースとして糾弾する動きや、マスコミにかけて「マスゴミ」と表現されることもある。

またネットでニュースを見るから、マスメディアから情報を得ることはないといった人も少なからずいると思われる。

実際、2018年の「メディア利用動向調査」では若い世代ほど情報源としてのテレビや新聞の重要性が低いことがわかる。

文研フォーラム2019研究発表・シンポジウム「世論調査から探る人々のニュース・情報選択~メディアは社会をつなげるのか~」配布資料より


また利用状況としては、

文研フォーラム2019研究発表・シンポジウム「世論調査から探る人々のニュース・情報選択~メディアは社会をつなげるのか~」配布資料より

このように、テレビや新聞の存在感は無くなりつつあるといえる。

ではここで普段マスメディアに接することはなく、おもにネットを情報源としている人について考えてみたい。

これらの人の情報源として、Yahoo!ニュースやLINE NEWSなどのネットニュース、SNSなどが挙げられるだろう。

しかし、これらYahoo!ニュースやLINE NEWSなどの情報源の多くはマスメディアに由来している。下の画像はYahoo!ニュースにニュースを配信しているメディアの代表例である

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また、SNSにリンク付けされている記事の多くもマスメディア由来のものは少なくない。

そうすると、直接マスメディアに接する機会がない人も、知らないうちにマスメディアから情報を得ていることも少なくないのである。

ここで何が言いたいかというと、マスメディアが伝達する情報はバイアスがかかっていることが少なくないが、それでも我々が情報源として依存せざるを得ない、ということである。

特に最近は政治家などの会見がYouTubeなどですべて配信されることもよくあるが、どれだけの人がその配信にアクセスするだろうか。

我々が普段生活するうえで、そういったすべての情報を自ら処理することは不可能である。

したがってテレビや新聞といったオールドメディアはいまだ我々の生活に不可欠なものであるといえよう。

オールドメディアの立ち位置


オールドメディアの最大の弱点は収益性であろう。特にテレビは広告によって収益を得ているが、無作為に働きかけるテレビ広告よりも、ターゲットを絞ってピンポイントに訴求するネット広告の方が効率が高いのは当然のことである。
新聞について言えば、購読者数は各社ともに年々減少しているし、マスメディアが事業として生きていく環境は年々厳しくなっているのは明らかであろう。

そうすると重要になってくるのは広告に頼らない事業スタイルを確立させるということである。

ひとつは「権利」に稼がせることであろう。

日本の著作権制度はエンタメ業界に優しくない。
それは立法当事者にエンタメ的視点があまりにも少ないからだ。たとえば、「引用」(著作権法32条)は音楽などのエンタメには全く当てはめられない。

とくにテレビ番組ついていえば、権利者が多岐に渡り、真面目に権利処理すると膨大なコストがかかる。
それをテレビ局側が一括して管理すれば、テレビ番組の違法アップロードについても一定の範囲でライセンス的な管理をして、そこから収益を得ることも可能だ。

マスメディアのコンテンツの優位性と、社会における必要性は未だ高い。
安易な流行りに迎合することなく、質の高いコンテンツを作り続けるしかない。

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