認知症で契約も株の移転も不可能に!経営者に求められる早期対策
「こんにちは、出かける前に鍵をチェックしたはずが、直後に『鍵閉めたっけ?』と不安になってしまうユナイトnote編集部です。
こうした物忘れ、誰にでもありますよね。でも、それが頻繁になると心配になることも。今回は認知症と加齢による物忘れの違いについて、また認知症の進行で起こる問題や、その備えについて取り上げます
認知症と加齢による物忘れの違い
年齢を重ねるにつれて、「あれ、何をしようとしたんだっけ?」と一時的に思い出せないことが増えるのはよくあること。これは加齢による物忘れで、本人に自覚がある場合も多いです。しかし、認知症になると状況が変わります。例えば、食事をしたこと自体を忘れ、もう一度同じことをしてしまうことが増えるのが特徴です。認知症は病であり、自覚がないことも多く、症状が進むと、次のような点で深刻な問題が生じます。
1. 性格が変わること
認知症の進行に伴い、性格や行動に変化が出ることがあり、家族や周囲の人が驚き、戸惑うことも。穏やかな方が突然怒りっぽくなるなど、対応に苦慮するケースも見られます。経営者の場合、取引先や従業員との信頼関係に悪影響を及ぼすことがあります。
2. 法律行為ができなくなること
認知症が進むと、自ら意思を持って契約を行ったり、財産の管理をすることが難しくなります(民法第三条の二)。例えば、銀行預金が凍結され家族でも引き出せないことや、株式の移転、株の議決権行使、不動産の売買、遺言の作成、保険の契約など、個人や経営上必要な契約行為ができなくなることがあります。
事前対策とその効果・問題点
1. 株式対策:生前贈与や民事信託の活用
効果:
生前贈与で、家族へ株式などの資産を移転することによって、相続争いや複雑な手続きが避けられる可能性があります。
民事信託(家族信託)は、自分の財産を信頼する家族や信託受託者に管理を委ねる制度です。これにより、認知症によって意思能力が低下しても、事前に決めた管理者が財産を適切に運用・管理できます。
デメリット:
生前贈与では、贈与税が課される可能性があるため、計画的に行う必要があります。
民事信託は、信託内容の構築が肝です。専門家との綿密な打ち合わせや手続きが必要です。また、預ける相手に対する信頼が不可欠であり、不適切な管理が行われた場合、家族間でトラブルが生じる恐れもあります。
2. 財産の管理:成年後見制度の利用
効果:
成年後見制度は、認知症発症後などに利用する制度です。家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人の代理として財産管理や契約行為を行います。後見人には司法書士や弁護士が選任されるケースが約8割、家族が2割とされています。家族が後見人に立候補しても、選任されないケースもあるようです(東京家庭裁判所後見センターQ59)。デメリット:
裁判所の手続きや後見人への報酬(2~6万円/月)が必要となり、利用コストがかかります。資産の管理方法では、本人の意思が必ずしも優先されない場合もあります。なお、後見人が行わないものとして、介護などの実務があります。また本人が婚姻や養子縁組を勝手におこなっても、後見人の権限で制限することはできません(Q109)。
生命保険の既契約と活用
認知症が進行すると、生命保険の新規契約は難しくなります。しかし解約や保険金の請求は可能な場合もあります。成年後見制度を利用しなくても、本人や指定代理請求で請求できることもありますので、まずは保険会社に相談することをお勧めします。
また、収入減少に備えるため、介護費用や就業不能保障のある保険を検討することも考えられます。
認知症に対応するチェックツールを提供する保険会社もありますので、健康管理の一環として保険を活用する方法もあります。
まとめ
認知症による性格の変化や法律行為の制限が進行すると、日常生活や経営にも深刻な影響が及びかねません。生前贈与、民事信託、成年後見制度などを活用しつつ、ぜひ信頼できる専門家や家族と相談しながら、適切な準備を始めていただければと思います。
お忙しい中、最後までお読みいただきありがとうございました。
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■参考
民法:民法 | e-Gov 法令検索 第三条の二
裁判所:後見サイト | 裁判所とよくある質問
東京家庭裁判所後見センター
東京都福祉局:成年後見制度利用に関するご相談先一覧
日本公証人連合会:日本公証人連合会