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まるい音がした 僕が彼女の音を初めて聞いたのは雪の日だった。 放課後の音楽室からはブラスバンド部のジャカジャカした音が飛び交っている。 少し廊下を行くと先ほどの喧噪が嘘のように静謐な空気に切り替わる。 まるで目に見えない空気の幕を通りぬけたみたいだ。 廊下の突き当りにある美術室、そこはめったに人が通らないシンとした空間。 ドアに手を伸ばすとまるいシャボン玉のような音が壁から染み出してきた。 ピンポン玉くらいの大きさのその玉たちはしばらく空中を飛び回り、力尽き、ぽ
アラームの音が響く 今日はもう3回もスヌーズ機能を使ってしまった。いよいよ起きないとやばい。 っえいや!っと布団から飛び出るとさっきまで自分を追い込んでいた寒さや眠気は大した事無いもののように思えてくる。 急いで制服に着替えてリビングに向かう。 「ごめん、今日は朝いいや」 「ダメ!味噌汁だけでも食べていきなさい。」 ドアを開けると始まる喧噪 何処にでもある普通の家族 どこかで満足を覚えつつ玄関を出る。 僕がこの家に来て5年目、最初はつたなかったが、やっと本物