君に届け
三浦春馬さんの作品の中で、映画「君に届け」はわたしにとってトクベツな存在である。
この作品の三浦春馬は、まるで少女漫画から飛び出してきたような王子様とは、ちょっとちがう。
風早くんを演じる彼は、いつも待っている。風が吹くのを、想いが届くのを、想いを告げるのを。
コミックが原作の作品は、登場人物に演者が合わせようと努力しても本家のキャラクターに負けていることが多い。だけれども、君に届けの三浦春馬は、観客が思い描く風早くんのイメージを裏切ることなく、むしろ期待以上の高校生を演じ、そこに存在している。冒頭、桜の木の下で風早くんが登場した瞬間、ふわっと風が吹くのを感じるほど、私にとってこの作品はリアルだった。
物語の中で、風早くんは爽子に何度も自分の想いを届けようと努力する。隣の席に座ったり、帰り道を遠回りしたり、体育館から連れ去ったり、告白をしたりして。
なのに、どうしてだろう。風早くんはいつも、待っていてくれる感じがするのだ。
きっとそれは、彼自身が、周りにいる人の想いを自分より大切にして、どんな答えが返ってきたとしても、すべてを受け止める器の大きさをもっているからだろう。
君に届けの三浦春馬は、今も風早くんを生きていて、何度もわたし達に初恋をさせてくれる。
わたしたちを、ずっと待っていてくれる。
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