ヤンセンと仲間たちによるシェーンベルクとシューベルト


ヤンセン自身の言う「室内楽史上もっとも美しい2作品」を
仲間たちと快演したライヴ録音!

①シェーンベルク:弦楽六重奏曲《浄(められた)夜(/輝く夜)》②シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D956
ジャニーヌ・ヤンセン、ボリス・ブロフツィン(ヴァイオリン)、アミハイ・グロス(ヴィオラ)、トルレイフ・テデーン、イェンス・ペーター・マインツ(チェロ) ①マキシム・リザノフ(ヴィオラ)
2012年5月18日∼20日 ドルトムント コンツェルトハウス〈ライヴ〉
DECCA UCCD1362

ワタシこと山形のまぁちゃんがこれまでにレヴューしたCDは第2回目の“ZAO”を除けば交響曲中心でした。確かにワタシはクラシック音楽の中では交響曲を始めとした管弦楽曲が大好きなので、そういったCDに偏ってしまうのは当然です。でもだからと言ってワタシはそうした音楽ばかり聴いているわけではありません。自己紹介で苦手と書いた室内楽曲だって興が乗れば聴くのです。
最近の掘り出し物(あくまでもワタシにとってと言う意味です)はカザルス(チェロ)とゼルキン(ピアノ)によるベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集でしょうか。カザルスのMembran超廉価盤10枚組に収録されていましたが、ベートーヴェンのチェロ・ソナタがあんなに独創的で多彩だったなんて、それまでまったく聴いたことがなかったので全然知りませんでした。ヴァイオリン・ソナタやピアノ・ソナタの比じゃありませんでしたね。余勢を買って(調子に乗ってとも図に乗ってとも言う)USED商品でベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集が収録されている《ジャクリーヌ・デュ・プレ の芸術》18枚組(EMI)まで購入した程です。これなんかはワタシの苦手な協奏曲と室内楽曲だけでしたが、ちゃんと全部聴いてレヴューしました。いずれ記事に出来ればと思っています。
室内楽曲から話が脱線しました。当CDに収録されている2曲のうち①はこのオリジナルの形より作曲家自身が後に弦楽合奏用に編曲した方が有名ですよね。カラヤン(DG)なんかの名演があったりします。ワタシは自宅にあったミトロプーロス(CBS Sony)のLPで初めて聴きました。その後ではメータ(London)、CDでは前述のカラヤンの他にブーレーズ(CBS Sony)、バレンボイムの2種(EMI/Teldec)、シノーポリ(DG)、ストコフスキ(EMI)などを持っています。オリジナルの弦楽六重奏版は巖本真理弦楽四重奏団他のLP(Angel)が初めてでした。これはCDではそのLPの買い直しの他はラサール四重奏団他(DG)しか持っていません。カタログ上も表現力が大きく演奏効果も見込まれる弦楽合奏版が多いのは致し方ないでしょう。でもだからと言ってオリジナルの弦楽六重奏版が軽視されて言い訳ではありません。対位法の綾がしっかり聴き取れるのはむしろこちらの方ではないでしょうか。そしてこの曲に横溢する官能性を同時に出せるかが評価のポイントでしょう。
ワタシはシューベルトの作品はなぜか晩年(と言うのもおかしな表現ですが)の曲に集中する傾向がありました。具体的に言うとD(ドイッチェ)ナンバーの800番台から900番台までです(900番台は960までしかありませんが)。そしてその中の室内楽曲では2曲のピアノ三重奏曲や弦楽四重奏曲第15番などが好んでおり、前者はルービンシュタイン(ピアノ)、シェリング(ヴァイオリン)とフルニエ(チェロ)のトリオによる演奏(RCA)、後者はカルミナ四重奏団(Denon)で聴いていたので、②はとんと目に入っていませんでした。その②を見直すきっかけになったのが当CDだったのです。ではどういう演奏だったのか、それはこれからレヴューしていきます。

「オランダ出身のヴァイオリニストであるヤンセンは独奏者としての活躍のみならず、室内楽を通じて音楽を通して知り合った仲間たちとのアンサンブルも大切にしており、当CDもヤンセンが『室内楽史上もっとも美しい2作品』と語る2曲をオランダのドルトムント音楽祭の10周年の記念の年にライヴ録音したものである。『もっとも』かはどうかとしても、この演奏で聴けば『美しい』ことには異論はない。①で対位法を見事に解きほぐしながらもこの曲に必要不可欠な官能性も充分に表現されている点は高く評価できる。以前はシューベルトの室内楽曲で好んで聴く曲は弦楽四重奏曲第15番だったが、当CDを聴くことで②の良さがやっと分かったような気がする。ただ①と組み合わせるのだったらブラームスの弦楽六重奏曲第1番という手もあっただろう。この2曲を収録したベルリン弦楽六重奏団(DS)もなかなかだった。
この演奏ではヤンセンが独奏者としてではなく、あくまでアンサンブルの一員として、しかしリーダーシップを失わないでこの2曲をどこまでも美しく奏する様は実に感動的であり、まったく名前の知らない共演者たちも含めてその緻密なアンサンブルで驚異的なまでな名演を成し遂げている。思うに、この2曲は常設の弦楽四重奏団と他の演奏家という形で演奏されることが殆どだが、この演奏はそうではないことが逆に成功させる要因となったのではないだろうか。
        2025年1月9日 評価:★★★★☆」

以上が当CDのレヴューになりますが、いかがでしたでしょうか。
当CDジャケットにはヤンセンの姿だけの写真が使われていますが、バックインレイの写真は共演者と一緒に写っており、いかにもアンサンブルの一員といった感じでこの演奏を象徴しているようです。

バックインレイの写真です


お目汚し失礼しました。




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