ショスタコーヴィチ:バレエ組曲集・バレエ音楽からの組曲集・映画音楽からの組曲集

ショスタコーヴィチを語る上では欠かせないのだ!
Shostakovich:①Ballet Suite No.1 ②Ballet Suite No.2 ③Ballet Suite No.3 ④“The Bolt”-concert suite from ballet op. 27a ⑤“The Golden Age”-concert suite from ballet op.22a ⑥“Zoya”-concert suite from film score op.64a ⑦“Pirogov”-concert suite from film score op.76a
⑥Bolshoi Theatre Chorus ①∼⑦Bolshoi Theatre Orchestra / Maxim Shostakovich
1966〈Session〉
VENEZIA CDVE 04350 2CDs
さらに続けてVeneziaがリリースしたショスタコーヴィチ作品集ですが、これまで交響曲だの室内楽曲だのとテンションの高い曲と演奏が続いたので、今度は肩肘を張らないで聴くことの出来るショスタコーヴィチの管弦楽曲を収録した2枚組CDを選んでみました。
ここに収録された7曲のうち、①バレエ組曲第1番 ②バレエ組曲第2番 ③バレエ組曲第3番の3曲はそれまで作曲されたバレエ音楽やその他の曲から新たに編纂された曲集で、こうした楽しい曲もショスタコーヴィチの音楽のまた別の魅力に溢れています。④バレエ音楽《ボルト》からの演奏会用組曲 作品27a と⑤バレエ音楽《黄金時代》からの演奏会用組曲 作品22aは3曲残されたバレエ作品(もう1曲のバレエ音楽は《明るい小川》)は彼の創作活動の初期に作曲されており、いずれも若きショスタコーヴィチの才気煥発さが窺われる音楽で、そのうち2曲を組曲化したものです。⑥映画音楽《ゾーヤ》からの演奏会用組曲 作品64a と⑦映画音楽《ピロゴーフ》からの演奏会用組曲 作品76a は数多く残された映画音楽から2曲を演奏会用組曲としたものです。⑥は唯一の第2次世界大戦(ソ連では『大祖国戦争』と呼んでいます)中の、⑦は戦後間もなく制作された映画の音楽から編纂された組曲で、これらは才気煥発さよりも戦争中やその後を現すような交響曲にも共通するような英雄的な楽想を聴くことが出来ます。
これら7曲を演奏しているのは作曲家の長男で指揮者のマキシム・ショスタコーヴィチ指揮するボリショイ劇場の管弦楽団と合唱団(⑥のみ)ですが、さてどのような演奏なのでしょうか。それは以下のレヴューをどうぞ。
「作曲家ショスタコーヴィチの長男であるマキシム・ショスタコーヴィチは長じて後に指揮者として活躍し、全ソ連放送(いわゆるモスクワ放送)交響楽団の指揮者を務め、父の交響曲第15番を世界初演・世界初録音したのみならず、交響曲第5番も録音しているがCDではリリースされなかったのか入手することは出来なかった。その後マキシムは西側に亡命し、プラハ放送交響楽団と父の交響曲全集を録音した他、幾つかのオーケストラを指揮して父の作品を録音しているが、これらも一切入手しなかった。事実、評判はあまり芳しくなかったようだ。よって手元にあるマキシムの指揮したCDは当2枚組だけである。
さて、この録音はマキシムが1966年にモスクワのボリショイ劇場のオーケストラを振って録音したものだが、彼の指揮は前述したこれらの曲の特徴を良く掴んだ演奏になっている。おそらく同席したかも知れない父のサジェスチョンがあったのかも知れないが、それにしてもこれらの曲を味わうのに何の不足もない演奏なのは間違いない。ボリショイ劇場のオーケストラもロシア臭丸出しだがこの場合はそれがプラスに作用していると言って良いだろう。
①②③は第4番も収録したD.ヤブロンスキー(Naxos)と較べても遜色なく、⑤はセレブリエル指揮の全曲盤(Naxos)を所有しているがこれは2枚組のためいかにショスタコーヴィチの才気煥発さが横溢していても長いので飽きが来る(演奏の問題なのかも知れないが)。その点当CDでの組曲版では収録されているのが4曲のみだがその楽しさを味わうのに何の不足もない。④⑥⑦は当CDで初めて聴いた曲だがこれも名演と言って良いだろう(⑥は名演と言うより爆演と言いたいほどの大迫力だが)。
と言うことで、当2枚組CDに収録された息子であるマキシム・ショスタコーヴィチ指揮による父の作品の録音は高く評価出来るだろう。
なお、ジャケットには父の肩に手を添えるマキシムの写真が使われているが、何か意味深なものを感じると思うのは考え過ぎだろうか。 評価:★★★★」
以上、レヴューとなりますが、いかがでしたでしょうか。
マキシムは指揮者としては大成しなかった印象がありますが、少なくとも亡命前のソ連時代に残した父の作品の録音は今でも聴き応えのある演奏だったのではないでしょうか。それだけにモスクワ放送交響楽団を振った父の交響曲第5番と第15番の録音が現在聴く術がないのが非常に残念でたまりません。この2曲に関してはVeneziaもリリースしてくれませんでしたからなおのこと残念に思うのです。
お目汚し失礼しました。