蜂飼耳の詩集にケイトブッシュと保食神(うけもちのかみ)を目撃した
我々ムー取材班は読者からの一通の手紙を受け取った。差出人は匿名Hという人物であり、数日前に読んだ「蜂飼耳詩集」思潮社 にケイトブッシュと保食神が現れるというのだ。早速我々取材班は現場へと急行することにした。
手紙にあった現場は山深い場所にある洞窟で、「いまにもうるおっていく陣地」(詩集単行本の書名)と立札が脇にある。早速戸を押し開け中に入ってみると「いまにもうるいっていく陣地の間」とある。どうやら洞窟は順々にそれぞれの題名づけられた間が連続してゆく構造になっているようだ。我々は「壹岐の嶋の記に」「たこ」「アサガオ」と扉を開け進んでいった。
六番目の部屋に到達し灯りに照らし出された広い壁面を見回しているとき、取材班の照明担当が突如叫びの声をあげた。
「あっあれは・・」
壁面にはこう記してある。
(「たべられる仲間たち」部分。)
余分な枝を焚く煙のはじまりに屈伸運動のじいさん
ばあさん 子どもや 子どもを産める齢の人と
出会わないので 葡萄棚の位置は ひくく ひくく
なっていくばかりです そのとき、数歩先を進む
あなたに呼びかけることはできなかった 下半身を
つつむあたりで まさに からくりが 作動し
スカートの裾から あしか あざらし くじら
いるか 猪 かもしか わたしの大鹿 たべられる
仲間たちがぞろぞろ出てきたのでそれまでは知りません
でした ふたつのめに稲種 ふたつのみみに栗
しりに豆 ほとに麦 なにもかも こぼしながら
ついていった たべものとしての わたしを
ゆるしてください
「こっこれはどういうことなのでしょうか」・・
「そうだな、このスカートの裾から と 知りませんでした で動物と植物とが分かたれている」
「手紙であったウケモチノカミは月読命を自らの口から海山の食物を出し接待しそれがために激怒をかい殺されてしまう。その躯からは牛馬蚕や稲稗など五穀が生まれた・・気になる点は、ウケモチノカミはスカートを纏わぬというところだが・・」
「あーーーっひょっとして・・」
「このふたつのイメージなら・・・・ぴったりと。読者の手紙が言っていたのは」
「うむ、その線で決まりだろうな。・・よしっ 帰るぞっ」
取材班、照明さんが先頭になって奥へと進まなくってもいいだろうか?