古い思い出に
醒めていることより親しいものとして
夢のなかの あなたの 名前
を こころに刻んだ
三年が経過して わたしに 居をうつすことが訪れ
ながいあいだ 三文字の漢字の繋がりであるだけだった
それだけの佇まいの
ともすれば忘れそうにもなっていた それは
ある日 はじめて あなた になった
まごうことなきそのひとで あること
赤い 縁の女性であること を
知ってはいたけれど 内緒にしてた
バイオリン を奏で
コレット を愛読し
文字 を書き散らすこと が
あなたをかたちづくり かけがえのないものにしていた
あの日
ふたりで メモリーオブノンチャ と 美味しい水
楽譜をおっているとき チェロの弦がプッツと切れ
空隙がうまれ
あなたはバイオリンをケースにいれ
泣きながら 戸外へ と でて行ってしまった
ごめんね ずっと子供のころから 失語症で
数年間 床に臥せっていて 言葉足らずで
なんでもない 相槌や ほほえみもできなく って
こまったちゃんで
ごめんね