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豆屋③|蛎殻町

求人に応募して履歴書を送るとすぐに「面接をするので本社に来てください」と連絡がありました。

日本橋 蛎殻町
(ニホンバシ カキガラチョウ) 

東京のど真ん中のオフィスビルがひしめくここは、商品先物取引が多いエリアです。(ちなみに東京証券取引所のある日本橋兜町は隣町。こちらは証券会社が多いエリア。)

私の希望勤務地は新宿でしたが、本社である日本橋蛎殻町に向かい、そこの人事の室長さんと面接をしました。

後で聞いた話ですが、この室長さんは元・伝説の営業マンだったらしく、年間ウン億円の営業を取ってきた等々、数々の武勇伝をお持ちの方でした。
年齢は40代後半といったところで、仕立ての良いスーツと名入れのワイシャツをお召しで、いかにも仕事が出来そうな貫禄がありました。

ここへ来てようやく、私は自分が応募した求人が「商品先物取引という投資をすすめる営業」だと知ることになります。(※厳密には投資よりもリスクの高い投機をすすめます)

もっとも、面接では仕事の具体的な内容にはあまり触れず、「アポ取ってお客さんと仲良くなれば売れる」みたいな漠然とした説明だったと記憶しています。

もちろん、この段階では先物業界の〝闇〟には全く気付く事はなく、むしろ「金融業って響きが格好良いな~」とさえ思っていました。

ちなみにこの面接には他に2名の受験者が居て、3人同時に面接をしたのですが、一人は私と同じ大学中退者でもう一人は忘れましたが高卒で既に仕事を持っていて転職希望の人だったと思います。年齢は3人ともほぼ同じで23-24才でした。

※実際の営業の現場では、ノーと言わせる事も必要です

さて、面接とは名ばかりで、ほとんどが室長さんの現役時代の自慢話ばかりでしたので、内容はほとんど覚えていません。

ただ、一つ記憶しているのが、「君たちは一度脱落したのだから、ここで挽回せねばならん」みたいな話をされた事と、「相手にノーと言わせない理論」のような営業テクニックも教えてくださいました。(この理論は実際の営業の場では全く通用しませんでした)

一通りの自慢話を聞いたのち、「これで営業の本を買って読みなさい」といわれてお金を渡され、三人で近所の書店で営業の基本みたいな本を買いました。

面接は以上でした。

結局、書類の段階で採用は決まっていたようで、その場で三人の合格が決まりました。

私ともう一人の大学中退者は同じ新宿支店に配属が決まり、もう一人は本社に配属となりました。

とにもかくにも、就職先と住む場所が決まった私は喜びと希望に満ち溢れていました。

<つづく>

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