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豆屋⑤|初出勤

いよいよ初出勤の日。

勤務先の新宿支店は、新宿新都心の高層ビルの4×階の高層階にありました。

私は最寄り駅の高円寺から電車に乗り、JR新宿駅で降りて西口に向かいました。

新宿新都心の風景

オフィスビル群をスーツ姿で颯爽と歩く自分。
これだ。まさに思い描いていた社会人だ。
俺はここでビッグになってやる。

会社のデスクにはきっとデュアルディスプレイのPCが用意されていて、相場を見ながらお客さんに的確に電話で売買の指示をして。。

カッコイイ。いや、かっこ良すぎるだろ俺。。
そんな自分を思い描いて支店のある〇×タワーに向かいました。

エレベーターに乗って支店のある高層階で降り、
エレベーターホールの窓から見た風景は、素晴らしいものでした。

『ああ、なんて景色だ。こんな高層階で仕事が出来るなんて、夢みたいだ。。』

支店の受付に行くと、オフィスビルには似つかわしくない総務のお爺さんが出て来ました。

「新人の方ですね、じゃあこちらにいらしてください。」

と、応接室に通されました。

そこには既に面接の時に会った、同じく大学中退者の同期が1名座っており。お互いに挨拶を交わしました。

しばらくすると、管理職と思しき30代くらいの白いワイシャツにノーネクタイの爽やかな男性がやってきて、

「君たち二人は新宿第一営業部に配属になります。私は課長の〇〇です。よろしく。今日は初日なので、とりあえず席で皆が仕事をするのを見て勉強してください。それからこのあと朝礼があるので、自己紹介と挨拶をしてください」と言われました。

課長に連れられて部屋を出ると、間仕切りの中の部屋には既に大勢の社員たちがいました。

そこでまず異様に思ったのが、全員、服装が課長と同じくノータイの白いワイシャツ姿で統一されていました。

(ずいぶんカジュアルな会社なんだな。。)
※2004年当時はまだクールビズなどもありませんでした。

そして、デスクの上には、、


…電話しかない。

あれ、パソコンは?デュアルディスプレイは?

無い。

なんも無い。電話が1台あるだけ。

「じゃあ、とりあれずここに座って。」

そう言われ、一つの島の末席の空席に座らされました。

「朝礼はじめます!」

その合図とともに、一同が一斉に席を立って横一列に並び始めました。

私もそれに付いて並びます。

「ザス!」

当番と思われる社員が前に出て挨拶をすると、

「ザス!!!」

他の社員たちもそれに続きました。

(随分、気合の入った朝礼だな。。)

当番の男性が、何やら話しはじめました。

「えー、〇〇××でー、、、(最近のニュースや自分の思ったことなど)

…というわけで、これを仕事に置き換えますと〇〇××なので、私も今日も一日頑張ります。ザス!」

「ザス!!!」(一同)

そのあと、支店長と思しき男性が喋りはじめ、

「…じゃあ今日は新人が来ているので、自己紹介をお願いします」

と言われ、私の番になりました。

「おはようございます」(私)

「ザス!」(一同)

「えー、〇〇××と申します。(中略)皆さん宜しくお願いいたします」(私)

「ザス!!!」(一同)

そのあと一同で社訓を読んで、朝礼は終わりました。

各々、トイレやタバコなどに向かい、いそいそと席に戻ります。

どうやら島ごとに班になっているようで、今度はそれぞれの島のお誕生日席に座る班長さんが、

「ザス!」(班長)

「ザス!!」(班員)

と、各班の朝礼が始まりました。

「(中略)…というわけで、今日も一日気合入れてやってください!ザス!」(班長)

「ザス!!」(班員)


…かくして、私の勤務初日がスタートしたのでした。

<つづく>





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