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「令和の糸巻き巻き」は違った。

リビングでTikTokを見ていたワカバ(JC)が、突然「ねぇ、見てタケシ!」とスマホを掲げた。(ワカバはパパの事をタケシと言う。本人なりの思春期対策らしい。)

スマホから流れてきたのは、どこか懐かしいメロディー。

「糸〜巻き巻き♪ ひ〜いてひ〜いて♪」

・・・。

のはずだったが、リズムが妙にアップテンポで、電子音が効いている。
しかも、画面の中の中学生と思える女の子たちはキレッキレの振り付けで踊っていた。

「えっ、何この糸巻き巻き!?」

キッチンでカレーを煮込んでいたミドリが振り返る。

「ママ、これが今流行ってる糸巻き巻きダンスだよ!」

ワカバはスマホを置くと、ノリノリで踊り始めた。

手をクルクル回したあとにポーズを決め、ヒップホップのようなステップを踏む。

「ちょっと待て、俺の知ってる糸巻き巻きと違うぞ?」

ソファでビールを飲んでいたタケシがワカバを見て笑いながら言った。

「これが令和のスタイルだよ、タケシ!」

「えぇ~~。!?」

そこへ部活から帰ってきたコズエ(JK)が、スクバを放り出しながらリビングに飛び込んできた。

「あ! ワカバ、それ学校でめっちゃ流行ってるやつじゃん!」

「コズエもやってるの?」

「それな~。 ほら、こうやって・・・ 糸巻き巻き〜、ターンして、決めポーズ!」

コズエはワカバとぴったり息を合わせて踊りだした。

「へぇ~すごいねコズエ、ワカバ。」

タケシがビールを置いて立ち上がった。

「オレもできるか?」

「無理無理!」

ワカバが笑いながら言うが、タケシは構わず腕を回し始めた。

「糸〜 巻き 巻き〜~ひーて。ひーて」

どうにもぎこちない動きだ。
途中でタイミングがズレ、変な方向に手を回してしまう。

「パパ、めっちゃロボットダンスになってる!」

「ふん。これでも昔は、パパも踊れたんだぞ!」

「パパの時代はマイムマイムでしょ?」

「やかましい!」

「・・・って、ミドリ、お前笑ってないでやれよ!」

タケシが突然、キッチンにいるミドリを指差した。

「えっ、私!?」

「ミドリも昔は、ワンレンボデコンでジュリアナ東京で踊ってただろ!」

「昭和の話持ち出さないでよ!」

そう言いながらも、ミドリはエプロンを外し、少し恥ずかしそうにステップを踏み出す。

「こう? 糸〜巻き巻き〜。ひ〜いて、ひ〜いて・・・。え、回るの?」

「そうそう! そしたら、激しく動いて、決めポーズ!」

ワカバとコズエが指導するなか、タケシとミドリはぎこちなくも一緒に踊る。

「お、意外と合ってるんじゃないか?」

「やるじゃん、ママ!」

「ふふ、まぁね」

タケシとミドリが決めポーズを決めると、ワカバとコズエが笑いながら拍手する。

「家族で糸巻き巻きダンスとか、マジでおもしろすぎ!」

「パパとママ、TikTokデビューしちゃえば?」

「それな~!」とあえて今時の言葉でタケシは返す。

ワカバとコズエが「きしょ。!」

と、

言って家族に笑いがこぼれた。

おしまい。

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ぱぽこめ
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