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あたらしい日記

 静岡県三島市を訪ねた。文学フリマ東京で出会った「波と緯度」の二人が、日記にまつわる連続企画「あたらしい日記を生きる」をすると聞いて、波と緯度ファンの私が行かずして誰が行くと思い馳せ参じたのであった。「日記が書けない」の日記は、SNSを通じて波と緯度の本人二人に読んでもらう機会を得て、その日記の感想をさらにもらう、という交流が生まれる状態となっていた。  波と緯度の二人に関しては、5月の文学フリマ東京での短い立ち話と、二人の(でもどちらが書いたのかはわからない)日記、あとは

    • I WAS MADE FOR LOVING YOU

      久しぶりに一日中現代アートをぶっ通しで見て、しかもすごく真剣に鑑賞者であろうとしてみて、ヘロヘロになった I WAS MADE FOR LOVING YOU/サエドッグ インスタレーションの部屋には1時間強座っていて、そういう人間がひとりいると何をするでもなくても、全体の磁場が変わって、鑑賞の度合いが変わってくる (デ・マリア室や母型なんかで日常的に起こっているアレ)みたいなのも久々に 現代アートの美術館なんて実験室なんだから、普段の行動規範を適用しなくていい、というのに慣

      • 銭湯と身体/外付け庭園

        一日のうち、いつ日記を書いているのか。今日こんなことがあったな、といういわゆる日記的回想のほとんどは、風呂で行われている。朝の出勤時間と昼休みにその回想を思い出してトピックをメモすることが多く、それらがいい感じに発酵してくるのを待って、本文にダダダっと書き起こすのはなぜか退勤直後が多い。 こっちでの自己紹介において、「どこに住んでるんですか」というあるある質問に対するカウンターとして繰り出す「銭湯の上に住んでいます」はキラーフレーズとなりつつある。「銭湯の上に住んでいる人」

        • (いまさら)日記らしい日記

          0日目  職場の冷房がやけにきついな、と思って帰宅したら発熱していた。とにかくベッドに入る。 1日目 38.9℃ 熱が高く起き上がることができない。欠勤の連絡を入れて横になったと思ったら夕方だった。言いようのない倦怠感で身体が動かず、ちょっと病院にすら行けそうにない。咳の発作が酷くて呼吸ができず。 2日目 38.7℃ いつぞや処方された解熱剤が一錠だけ手元に残っており、それを飲んで37度台まで熱が下がったタイミングでなんとか病院へ。家から最も近い内科に予約を取ったが、病院

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        • 日記研究日記
          15本
        • essay
          18本
        • collage
          11本
        • 平成訳七十二候
          6本

        記事

          マフィンとチワワ/太くなりたい重くなりたい

          AIと法に関するシンポジウムに参加してから、私たちが人間としてやるべきことは、ブルーベリーマフィンとチワワを判別していくこと以外に、なにがあるんだろうか?なにか、あるんだろうか?と考えたりしている。 ChatGPTに日記を書かせてみた。午前中は公園へ散歩に行き、お昼は友人とカフェでランチ、午後は家で映画を一本見て、夕方にジムへ行った、という日記が書き上がる。いくつか条件を与えて日記を書かせてみたが、すべて文末は「おやすみなさい」で締められており、この人工知能によれば「日記は

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          インスタに載せてない花/ののはな通信

          instagramに載せている花だけが私の花のすべてではない。noteに書いてあることが私の日々のすべてなわけがない。「人生はドラマではないがシーンは急に来る」とくどうれいんが言っているけれど、こんなんあの坂元裕二だって書けやしないんだからと思うシーンだって多々ある。 日記が書けなかったのは、書いてもいないうちから書きたいことに蓋をして、別のことをなんとか書こうとしてたからだったらしい。突破口として、下書き保存だけの日記も書きはじめたら、とたんに書けることの自由度が上がって

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          横断的に読む/うっすら重ねる

           東京に来て、しんどい部分は当然いろいろある一方で、これまでずっと地方で抱えていたある種の絶望感がなくなった。いくら自分ひとりが何か思っていたとしても変えるための手立てがないとか、同じレベルで課題を感じている人がいないとか、この感覚を共有してくれる人はいないとか、そういう種類の孤独はいつの間にか遠くへ行ってしまった。世界には先駆者や理解者や同士がいる。適切な場所にいけば、初対面でも高い精度から対話をはじめられる場面が多くて、ああ説明しなくていいんだ、ここでは普通のことなんだ、

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          日記が書けない

          日記が書けない。 昨日、編集者の白石正明さんが、著者が書けないときどうするかという質問について、書けないこと自体も切り口になるから、語りにくいということについて語ってくださいと言う、と答えていたのでその戦法を借りてみようと思う。 文学フリマに行った。下北沢の月日に行ったときに知った、日記をつけるワークショップの人たちがまとめた「日記をつけた三ヶ月」のブースに行ったら、メンバーの方が別のブースも出していると紹介されて、そっちにも行ってみた。 そこで出会った「波と緯度」とい

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          よい旅を/たましいは桃

           ゴールデンウィークにどこかへ旅行すること自体が人生ではじめてのことかもしれない。学生時代は吹奏楽部のコンクール前の練習や他校の演奏会で忙しい時期だったし、働き始めてからは繁忙期で仕事だった。昨年はカレンダー通りの休みだったけれど、国家試験の勉強と転職活動を並行していて、机の前に座っていた。  1ヶ月前まで住んでいた場所に戻るので、旅行というより感覚としては帰省だ。  4連休初日・午前中の東京駅。東海道・山陽新幹線の改札は、すべてのレーンのあっち側とこっち側にひとりずつ駅

          よい旅を/たましいは桃

          これがいわゆる五月病/それを受けいれる

           今日から5月。新しい街に住み始め、新しい仕事をはじめて1ヶ月になる。  先週はちょっぴり元気がなかった。妹ロス(死んでない、帰っただけ)もあったし、仕事の進め方でヘマをして遠回しに怒られたりもしていた。ダイレクトお叱りのほうがまだましだったので、その点でも凹んだ。まあでも新人だししゃあないと開き直ってケロッとしてはいたけれど、胃の中のザリザリした感覚は残ってしまって、銭湯もあまり効果がなかった。  起床してスマートフォンの5月1日という日付をみるなり、ああこれはもしかし

          これがいわゆる五月病/それを受けいれる

          私の誕生日/妹の誕生日

           4月生まれの宿命として、新しい環境で誕生日を祝ってもらうことはそうそうない。仲良くなって、誕生日の話題に至る頃には、たいてい自分の誕生日は終わっている。  でも今年はひょんなことから新しい職場で誕生日の話題になって、ちょっと言いづらいな、気を遣わせるなと思いつつ、「実は来週なんです」と言っていたもんだから、みんなにおめでとうと言ってもらう。昼休みは、高級中華料理店のリーズナブルなランチに上司が連れ出してくれた。  それにしても今月の生理は重い。すこぶる体調が悪かったが、

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          バスタを背にして/蓄音機と現代文

           朝、Spotifyで音楽を聴く。休日に聴いていることが多い「ホットケーキの朝食」と題がつけてあるプレイリストをかけていたら、耳に留まるフレーズがあった。  ん?いま「バスタ」って言った?甲州街道ってことはあの「バスタ」ってことだよね?一時停止して、もう一度聴き直しながら歌詞をみてみると、やっぱり「バスタ」と書いてあった。新宿駅の歌だなんていままで一切気づかなかった。新宿区民になったとたん聞こえてくるフレーズがあるもんだ。調べてみたら、NEWoMan新宿という商業施設とのタ

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          だから年パス/ささやきに耳を傾ける

           Chromebookが届く。数日前、だましだまし使っていたノートパソコンがついにだめになった。忙しない毎日で大きい買い物を即決するほどの気分的な余裕がなく、とりあえずはこの日記の執筆ができればいいし、持ち運びしやすい軽いものがよかったので、試しにサブスクで借りる。これで長文も書きやすくなるかな。  昼過ぎ、そうだ新宿御苑に行ってみよう、と思い立つ。途中で近所の町中華の店にふらっと入ったりしながら、徒歩で大木戸門の入場口へ。ゲートの案内を見ていたら、年間パスポートがあること

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          ふつうの相談/ファースト愚痴りタイム

           日曜日に買った本、東畑開人『ふつうの相談』を読み進めている。表紙を開けてタイトルから一枚目にある、主題に関連した引用句(これをエピグラフと呼ぶらしい、今回あとがきを読んではじめて知った)に中井久夫のこの一節があって、買うことがほぼ決まってしまった一冊だ。  相談って、別に専門家の専売特許じゃなくて(例えばカウンセリングルームみたいなところで行われるものだけでなくて)、職場での立ち話とか、友人との秘密の会議とか、そういうあらゆるところにあるよね、というのが「ふつうの相談」と

          ふつうの相談/ファースト愚痴りタイム

          日記を書こうと思う/7冊本を買った

           日記を書いてみようと思う。  理由はいろいろある。一つは、4月から仕事・住む土地・家が変わったから。案外、通常運転でやれているのだけれど、やっぱりここまでがらっと全てが変わると、自分が自分として接続していくために何かしないとなという感じがする。日々の発見や変化もあるので、時々の手触りを残したいのもある。  二つ目は、何でもいいので書き続けたいから。業務日誌とか相談記録とか、毎日の仕事上必要な記述について「いいね」と言ってもらうことが多かったけど、今度の仕事はそういうもの

          日記を書こうと思う/7冊本を買った

          しもやみてなえいずる

          霜止出苗(しもやみてなえいずる) その日はとにかく食べ続けていた。久しぶりに会う友人との遅めのランチは、昭和の香り漂う渋いスナックの看板が並ぶ通りにある店で、古風なカレーライスとチーズケーキのセット(紅茶付き)。チーズケーキの持ち帰りが人気のようで、ぽつりぽつりとお客さんが来ては買って帰る。スフレ仕立てで軽い口どけ、なるほどこれは無限にいける。常連客が大きなワンホールを買って一人で食べるなどというので、ご主人自ら止めたらしい。人がいい。続いて古本屋、軽く珈琲でも、と思ってい

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