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さくらももこ「ひとりずもう」感想

先週一週間、喉から風邪をひいてかなりローペースで仕事をしていた。
いや、するつもりでいたが、有給をとっても結局仕事が終わらず、変な時間に寝込んでは栄養ドリンクで無理して頑張る、みたいなことを繰り返していた。
そんなんで治るわけもなく、予定がない日はできる限りちゃんと休もうと思っていた。

寝て起きてお粥を食べて寝ての繰り返しの中で、さくらももこの「ひとりずもう」を読んだ。
上下巻で、小学5年生から短大生で漫画家デビューが決定するまでのエッセイ漫画が収録されている。

私はさくらももこの漫画を読んだことがなかった。
エッセイ集「もものかんづめ」は読んだことがあったが、コジコジやちびまる子ちゃんのアニメを見たくらいだ。
何とも素朴というか、特段綺麗では無いのだが、等身大の日常がすっと入ってくる漫画だと思いながら読み進めていた。
エッセイ漫画というのが溢れている今の世である。
こういう気の抜けた絵柄で自分の子どもながらの疑問や、赤っ恥体験を面白おかしく描くということを一番最初にやったのがさくらももこだとしたら、凄い発明だと思う。

高校二年生まで親友のたまちゃんでさえ引くレベルで呑気だったももこは、進路を考えると同時に漫画家を目指し始め、挫折し、迷走し、また漫画家を目指し始める。
人生のギアがかかる瞬間。
それが訪れるのは、ちゃんと夢をみることに向き合った人だけだ。
ももこの周りにはきちんと夢を追って挫折した経験を語ってくれる大人はいない。
夢を見ることは、基本的にはとても孤独なことなのだ。

漫画がずっと入賞しつつもデビューが決まらず、心が折れそうになる時、それでも手を止めないで書き続けたももこ。
最終話は、私も思わずうっうっと泣いてしまった。
やはり天才だ、さくらももこ。

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