開幕直前!どこよりも詳しく東京六大学野球2024年秋季リーグの見どころ伝えます!
こんにちは、シュバルベですΣ੧(❛□❛✿)
毎シーズン恒例の東京六大学野球連盟の展望を以下に書いていきます。
まずは春の結果から。
優勝は早稲田大学。2020年秋以来、7季ぶりの優勝を飾りました。6月に行われた全日本大学野球選手権でも準優勝と結果を残しています。
以下、各大学別にこの春の展望を投手・野手別に見ていくとともに、各大学のスタメン予想とピックアッププレイヤーを書いています。かなり長いですが、秋のリーグ戦前の「しおり」として読んでいただければ幸いです。
1.早稲田大学
現楽天の早川隆久投手を擁した2020年秋以来の優勝を果たした早稲田大学。昨年は慶應義塾大学がリーグ優勝、高校では夏の甲子園で慶應高校が優勝と「慶應フィーバー」というような旋風を巻き起こしましたが、今年は早稲田大学がリーグ優勝、早稲田実業が夏の甲子園出場と早稲田が盛り返すような構図となりました。
投手陣はチーム防御率1.57でリーグ1位、打撃面でも打率・出塁率・長打率の主要三項目ですべてリーグトップという圧巻の数字を残し、チームを率いる小宮山監督にとっても投打が嚙み合った理想的なチーム作りだったのではないでしょうか。
1-1.早稲田大学の投手陣
投手の軸は伊藤樹(仙台育英③)。昨年は故障の影響で球速も上がらず苦しい一年になりましたが、3勝を挙げた春の54.1投球回はリーグトップで、防御率は1点台。奪三振率が20.7K%に上がり、球速も長いイニングを投げても140km/h台前半をコンスタントに計測できています。
明大との3回戦では11回完封勝利を挙げるなど精神的なタフさも備わり、充実のシーズンとなりました。一方、蓄積疲労も大きかったか大学日本代表ではややパフォーマンスを落とし、この秋に行われた六大学オールスターでも初回3失点、制球定まらず伊藤投手らしくないピッチング内容。秋の序盤から無理はさせたくないところです。
2戦目の先発には宮城誇南(浦和学院②)が定着。
春は最長で6イニングですが、登板した全5試合で3失点以下とゲームメイクに長けています。ランナーを出しても動じず、ワンバウンドになるような変化球も恐れずに投げる気持ちの強さが真骨頂。伊藤投手の状態次第では初戦を任される可能性もあるため、秋は長いイニングを投げることを求めていきたいところ。
リリーフでは左腕の香西一希(九州国際大付②)とルーキーの安田虎汰郎(日大三①)が揃って防御率0.00でフィニッシュ。香西投手は独特な角度からボールを投げ込み、奪三振率37.5K%と圧倒的な奪三振力を見せました。
安田投手は大きなエクステンションを武器に新人らしからぬ度胸満点のピッチングで被安打は僅か1つ。特に元オリックス金子千尋氏のような「来ない」チェンジアップは投げるのにも勇気がいるはずですが、初見では相当打ちづらいボールではないでしょうか。
仙台育英出身で昨年の準優勝に貢献した髙橋煌稀(仙台育英①)も早くも登板機会を得ており、この夏のオープン戦ではプロの三軍戦にも登板するなど着々とレベルアップを図れているようです。
越井颯一郎(木更津総合②)も着実に登板を増やしており、1年生~3年生でここまでの投手陣を揃えているチームは六大学の中でも稀有だと言えるでしょう。
小宮山監督は常々秋は4年生と口にしているように、春に調子が上がらなかった4年生投手に注目です。
早慶戦で3回無失点と復活の兆しを見せ、全日本でも1イニングのリリーフながら力強いボールを投じた鹿田泰生(早稲田実業④)は本来投手陣の軸にならなければならない投手。身体も大きく、六大学オールスターでも目立っていただけに、この秋はリーグ戦で輝きを取り戻したいですね。
シュート成分の多い独特なボールを投げる中森光希(明星④)もラストシーズンで勝負をかけたい投手。肘のTJ手術明けの田和廉(早稲田実業③)が夏のオープン戦で登板を重ねているのも好材料で、昨年春に152km/hを計測した剛腕の帰還は六大学野球ファンが待ち望んでいることの一つでしょう。
1-2.早稲田大学の野手陣
野手については、アクシデントが起きない限りスターティングラインナップに並ぶメンバーは春と大きく変わらないでしょう。
トップバッターには小柄ながらバットコントロールに優れ打率4割越えで首位打者に輝いた尾瀬雄大(帝京③)。足もあり、その足を活かしたセンターの守備面でも輝きを放っています。
2番には小技に長け、小宮山監督の理想の野球を体現している山縣秀(早大学院④)が入ります。
昨年はセカンドでしたがショートに再コンバート、本来の定位置に戻ってからは水を得た魚のごとく好守を連発。大学日本代表では明治大学の宗山塁不在の穴を埋めて正遊撃手となり、プラハとハーレムで行われた2大会での優勝に大きく貢献しました。昨年までは非力な印象だった打撃も今年はしっかりとミートすることが出来ており、バスターなど細かな作戦にも応えられる対応力は、元ヤクルトの土橋勝征氏のようないぶし銀を思わせるチームに欠かせない選手となっています。
中軸の3番には春リーグトップの3本塁打を放った吉納翼(東邦④)、4番には春リーグトップの17打点の印出太一(中京大中京④)が続きます。
吉納選手はリーグ戦序盤こそスロースタートでしたが、徐々に調子を上げ早慶戦初戦で2本塁打。大学日本代表で更に成長した感があり、甘い球を捉える確率が上がり、インコースの捌きが非常にうまくなったように思います。タイプ的にはパワーヒッターよりも中距離ヒッター、強いライナー性の打球を飛ばすことに長けた打者だと思うので、秋のリーグ戦で確実性を上げた姿を見せられれば10月のドラフト会議でも名前が呼ばれるのではないでしょうか。
昨秋は打率.214、本塁打0と苦しんだ印出選手は、4番キャプテンと重責を担う中で春に大ブレイク。コンパクトさを意識するあまりやや小さくなっていたように感じていたスイングがしっかりと振り切れるようになったことで、プル方向に強打が飛ぶようになって長打率.604と数字を大きく伸ばしました。2~4番が揃って大学日本代表に選出されたことが早稲田大学の打線の強さをよく表しており、この上位打線は秋も脅威になるでしょう。
競争になりうるポジションについてみていきましょう。まずはセカンドです。春は中村敢晴(筑陽学園④)、梅村大和(早稲田実業④)、小澤周平(健大高崎③)の3人が守備につきましたが、小澤選手が打力では頭一つ抜きん出ています。
梅村は足、中村はチャンスでのケース打撃と個の長所を伸ばし、三塁のポジションも含めた守備での貢献度を上げられるかがレギュラー争いのカギになるでしょう。
一塁・三塁の両コーナーは田村康介(早大学院③)と前田健伸(大阪桐蔭③)が中心になりそうですが、春はともに長打に欠けた面も。
打撃が求められるポジションだけに、捕手登録の吉田瑞樹(浦和学院③)や下級生の岡西佑弥(智弁和歌山②)が出場機会を増やしていけると面白い。フレッシュトーナメントで1番サード起用の髙橋海翔(山梨学院①)もパワーを武器にベンチに割って入ってくるのではないでしょうか。
外野は尾瀬・吉納で2ポジション埋まり、さらにレフトも春に走塁の巧さ際立つ石郷岡大成(早稲田実業③)が打率3割越えでレギュラーをほぼ手中にしています。
チャンスは少ないですが、春に左投手が先発時に起用された寺尾拳聖(佐久長聖②)と、明大1回戦で代打出場から殊勲打を放った松江一輝(桐光学園③)のアピールに期待したいですね。
春の数字を見れば盤石に見える早稲田大学ですが、各チームからのマークが激しくなる秋に春同様の結果を残すのはかなりタフなこと。大学最後のシーズンとなる文珠玄基(桐蔭学園④)や薗部将大(早大学院④)ら4年生が代打も含めた少ないチャンスで結果を残すとチームは結束します。
特に早稲田大学は毎年4年生の秋に一花咲かせる選手が出てくるだけに、今年は誰がその立ち位置になるかに注目してみるのも面白いでしょう。
1-3.早稲田大学のスタメン予想とピックアッププレイヤー
<予想スタメン>
1番(中)尾瀬雄大
2番(遊)山縣秀
3番(右)吉納翼
4番(捕)印出太一
5番(二)小澤周平
6番(一)前田健伸
7番(左)石郷岡大成
8番(三)梅村大和
9番(投)伊藤樹
1~4番が不動な一方で、5番以降はポジションも含めて夏のオープン戦の最後まで見極めが行われそう。最初のカードが東大戦のため、伊藤樹の状態が上がらない場合は従来の2戦目先発の宮城や、4年生の鹿田が初戦を任される可能性も十分あるのではないかと思います。
ピックアッププレイヤーは1番の尾瀬雄大。2番~4番の並びも尾瀬の高い出塁能力があるからこそ機能していると言えるチーム。昨年も春は絶好調でしたが秋に数字を落としており、今年は2季続けて好成績を維持できるかに注目です。
2.明治大学
この春は早稲田大学に勝ち点を取られてしまい優勝を逃した明治大学。チームの中軸打者であり精神的な支柱でもあるキャプテンの宗山塁(広陵④)の故障は少なからず響いてしまった感はあります。
その状況下でも、昨年から大きくメンバーが入れ替わった投手陣はシーズンが進む中で整備されチーム防御率2.44、打撃面もチームOPS.754はリーグ2位と投打に層の厚さは明白。秋は王座奪還を狙います。
2-1.明治大学の投手陣
この春に一気にエースポジションを掴んだのが髙須大雅(静岡③)。190cmを超える高身長から常時140km/h後半のストレートに、変化量の大きなフォークとスライダーを武器に26イニング31奪三振と三振の山を築き、最優秀防御率を獲得しました。
大学日本代表としてアメリカ戦で先発を任されるなど国際試合でも高いパフォーマンスを発揮。秋はさらにイニングを増やしてチームの大黒柱に成長したい選手です。
一方、海外遠征で食事が合わず体重を減らしたとの報も。帰国後にだいぶ戻ってきたと六大学オールスター解説の広沢氏が話していましたが、春に投げたイニング数自体は26イニングで通年で長いイニングを消化するのは今年が初めてとなるため、投手運用の側面からも明治大学の監督コーチ陣には慎重さも求めたいなと思います。
春は抜きんでた投手は少ないものの、先発候補は多い状況。春の実績ベースでは左の毛利海大(福岡大大濠③)と、右のパワーピッチャーの松本直(鎌倉学園②)が2戦目の先発に上がりましたが、ともに最長イニングは5回でリリーフとの天秤にかけられる立場。春に登板のなかった久野悠斗(報徳学園③)が戻ってくると一気にエース争いまで熾烈になるでしょう。
エースナンバーの11を背負った藤江星河(大阪桐蔭④)が夏のオープン戦で先発として結果を残しているのは好材料。西武とのプロアマ交流戦では先発し4回1失点とリーグ戦に向けて弾みをつけています。
今年のエース候補だったパワーピッチャーの浅利太門(興國④)もラストシーズンに再起をかけたい投手。春は自身初戦となる東大2回戦で5回3失点、内容も7与四死球と荒れてリーグ戦に上手く入れず、その後も制球が乱れまたフィールディング面の弱点も露呈するなど課題が多く見つかる悔しいシーズンに。
秋はリリーフからのスタートになる可能性が高いですが、長身から投げ下ろすストレートとフォークの強度はリーグでもトップクラスで髙須とのツインタワー結成を期待したいですね。
ブルペンの中心は千葉汐凱(千葉黎明④)。春に10試合18イニングと先発投手並みにイニングを稼ぎフル回転しましたが、球速が上がり対右打者も苦にしない点で貴重な左腕に。
この春に初マウンドを踏み貴重な戦力となったサイドスローの山田翔太(札幌第一④)も緩急を使った丁寧なピッチングで最上級生としてチームを牽引します。昨秋は42.4K%と奪三振マシーンだった大川慈英(常総学院③)はこの春被弾に泣くシーズンに。変わらず三振を取ることに関しては長けているため、打者との駆け引き次第で更に一段上のステップを踏めるでしょう。
新しい戦力の台頭にも期待したいところ。高校時代に全国優勝を果たしている湯田統真(仙台育英①)、林謙吾(山梨学院①)が筆頭ですが、左の大室亮満(高松商業①)と右の渡邉聡之介(浦和学院①)はともに大型投手で、フレッシュトーナメントでの内容を鑑みてもベンチ入りを狙える位置でしょう。
2-2.明治大学の野手陣
野手では宗山塁(広陵④)の復帰が大きな上積みに。肩、指と骨折が続いただけに過度な期待をかけるのは酷でもありますが、プロでも10年安泰と評されるほどの遊撃守備、リーグ通算8本塁打に打率.334の打力、双方が揃ったリーグを代表する花形選手が3番ショートの定位置に戻ってくることに心浮き立つのは自然なことでしょう。
この夏に対プロチーム相手でも安定して長打を放つなど順調さをアピール。宗山選手に関して言えばドラフト会議で何球団が競合するかにフォーカスが当てられて然るべきなので、ラストシーズン有終の美をチーム宗山で飾って欲しいなと思っています。
打順で1番・2番を担うのは直井宏路(桐光学園④)と飯森太慈(佼成学園④)。ともに俊足巧打で打率3割越え、盗塁もこの春に2人で11個決めるなど出塁すれば足でもかき乱せる強力な両選手。
飯森はアプローチの粗さが昨秋まで気になっていましたが、春は三振を3つに減らすなど確実性が上がっています。直井選手も打力がここまで伸びてくるのは想定以上で、リーグで一番上手いセンター守備含めてチームに大きなプラスをもたらす選手です。
昨年上田希由翔が担っていたランナーを返す役割は、チャンスに強い横山陽樹(作新学院④)と大学日本代表の正捕手となった小島大河(東海大相模③)が担います。
3年生の小島選手のチャンスで絶対にランナーを返すバッティングを出来る安定感は驚異的で、その力は大学日本代表でも遺憾なく発揮されました。捕手としても強肩で、リードの面で他の選手にマスクを譲ることは過去あったものの、それさえ程よい休養になってさらにパワーアップして戻ってくることを繰り返しているように思います。来年のドラフト会議で目玉の一人になる選手でしょう。
打球の速度はリーグでもトップクラスの杉崎成(東海大菅生④)も出場機会さえあれば打撃で結果を残してきただけに、秋はレギュラーを確固たるものにしてラストシーズンをいい形で終えたいですね。
宗山が戻ってくることを想定すると、二塁と三塁の2ポジションの競争は熾烈に。春は木本圭一(桐蔭学園③)が正二塁手でしたが、ユーティリティ性の高さゆえに流動的な起用も視野に入るのでは。宗山不在の間に次代の正遊撃手筆頭に名乗りを挙げた光弘帆高(履正社②)が春に打率3割超え、守っても無失策という実績もあり両ポジションでの出場機会を窺います。
加藤巧也(大阪桐蔭④)と宮田和弥(横浜③)の上級生だけでなく、球際に強い守備で魅せる友納周哉(福岡大大濠②)と津田基(近江②)の二年生コンビも攻守にレベルアップし秋のレギュラー争いに加わるでしょう。
外野の3ポジションは直井、飯森、横山の3人が基本線。
打力でこの中に割って入るのは至難の業で、直井と飯森はむしろ守備走塁面でチームを引っ張る存在であることからもリザーブの選手が取って代わることは想定しづらいです。ただ飯森がこの秋のオールスターで欠場することが発表されるなど、アクシデントが発生した少ない機会を控えの選手が活かせるかは重要です。
昨秋に一定の出場機会を与えられた榊原七斗(報徳学園②)と岸本一心(横浜②)、昨年本塁打も放っている今井英寿(松商学園③)らはいつでもいける準備をしたいところでしょう。
ルーキーイヤーに鮮烈な印象を残した瀨千皓(天理③)は春に打ち気に逸りボール球にも手を出してしまっていました。パワー含めてセンスを感じる選手だけに、自身のスイングを取り戻し、来年のレギュラー奪取に向けた大事な一年にしたいですね。
リーグを代表するスラッガーになり得る可能性を持っている内海優太(広陵②)が夏のオープン戦終盤に実戦に戻ってきたのは朗報。一目でレベルの違う打者と分かるだけに、もしリーグ戦にも戻ってくればポジションを開けてでも起用されるだけの選手です。
最後のシーズンとなる4年生の注目選手は副将でもある中山琉唯(常総学院④)。春は法政大学戦3回戦で8回に決勝となる代打ツーランホームラン。控え捕手というポジション上、十分な準備もままならない中での一発回答は日ごろの練習・準備の成果だったのではないでしょうか。秋も代打の切り札としてチームに勢いをもたらしてくれるでしょう。
2-3.明治大学のスタメン予想とピックアッププレイヤー
<予想スタメン>
1番(中)直井宏路
2番(左)飯森太慈
3番(遊)宗山塁
4番(右)横山陽樹
5番(捕)小島大河
6番(一)杉崎成
7番(二)木本圭一
8番(三)光弘帆高
9番(投)髙須大雅
オールスター欠場の飯森の状態が気がかりで、リーグ序盤に欠くことになると外野には内海優太が入る可能性も。木本は打順の中でも流動性高く、春には飯森不在時に2番に入るなど、便利に結果を残せるだけに不測の事態でも明治大学の強さは保てそう。毎年投手も打力に優れた才能を持っている選手が多く、1番から9番まで気を抜けないチーム作りが出来ています。
ピックアッププレイヤーはキャプテンの宗山塁。春は怪我もあり打率1割台と結果が伴いませんでしたが、秋はプロ入りに向けても大事なシーズンに。実力は誰もが認めるところですが、外野の雑音を吹き消す圧倒的な結果を残して10月競合一位になりましょう。
3.慶應義塾大学
慶早戦の結果次第では春に優勝の可能性も残していた慶應義塾大学。
結果は2連敗で宿敵早稲田に屈したものの、決して投打に選手が揃っているわけではない中でも僅差をものにする試合巧者の様は昨秋王者としての矜持を見せたと言えます。
個の能力以上にリーグ戦でチームとして強く見えるのは堀井監督の手腕だけでなくアナリストの力も大きく、昨年の関展理氏のような全国で枠を削ってでもベンチに入れたいようなスタッフが今年もいると優勝も現実的になってきます。
3-1.慶應義塾大学の投手陣
投手は大学日本代表に選出された外丸東眞(前橋育英③)が軸。5シーズン通算イニングは221回に達しており、これは同世代で次点にくる伊藤樹よりも100イニング近く多い数字です。この春は本調子でない試合も多く、スタッツも昨年2シーズンより悪くなってしまったが、それでも試合を作ってしまう粘り強いピッチングが強みでしょう。
トップの位置が低く、打者から見えづらいフォームで、プラハ・ハーレムの海外遠征中はやや低すぎ故障リスクも感じましたが、北海道ベースボールウィークではやや状態が戻ってきたように思いました。チームの完全なる大黒柱のためこの秋も投げまくると思いますが、その依存度を少しでも減らすためにも次なる柱候補を育てる必要があるでしょう。
期待がかかるのは春24イニングを投げた渡辺和大(高松商業②)と竹内丈(慶應②)の二年生コンビ。
渡辺は昨年に比べ球速が上がり平均で140km/hを超え、六大学オールスターでも順調な仕上がりを見せました。対右打者へのインコースのスピードボールが持ち味で、変化球の精度を上げることでさらに楽なピッチングが出来るのではないでしょうか。
竹内は昨秋に2番手先発として台頭したがこの春は不調に陥りました。ダイナミックなフォームゆえに負担も大きそうではありますが、動くボールで打たせて取るピッチングが出来るため長いイニングを投げることも今後期待できます。
慶應義塾大学のリリーフ事情は秋も苦戦が予想されます。
上位につけた早稲田・明治の2校に比べて球速やマネーピッチの強度など球の強さの部分でやや劣る感は拭えませんが、春に投手陣を支えたのは気迫あふれるピッチングが魅力の右サイドスローの木暮瞬哉(小山台③)。最終節の慶早戦では捉えられてしまったものの、7登板中6度が回跨ぎとタフな起用の中で果たしてきた役割は大きく、秋は奪三振率に拘りたいところ。
現ヤクルトの木澤尚文を彷彿とさせる広池浩成(慶應②)はこのチームのリリーフの中で貴重な力投型。秋に向けて平均球速を上げることで中継ぎの柱になれる可能性を持っていますが、フレッシュトーナメントでは決勝戦で5回無失点と先発の芽も。秋は2戦目の先発に割って入ることも十分あり得るでしょう。
長身右腕の沖村要(慶應②)や昨年の春に好投を重ねた荒井駿也(慶應③)、緩急使える小川琳太郎(小松③)がどこまで伸びていくかも重要ですが、むしろ新戦力の台頭の線が有力かもしれません。
候補に挙がってくるのは鷲見旺宥(岐阜①)と松井喜一(慶應①)のルーキーに、昨秋のフレッシュトーナメントで2先発の田上遼平(慶應湘南藤沢②)、大型左腕の栗林兼吾(小山台②)。春のベンチ入りまで漕ぎ着けた中村陽紀(城北③)もOP戦で登板を重ねるなど候補は多い状態です。
また、この春は4年生投手の登板0で終わってしまいましたが、リーグ戦通算8登板の浮橋幸太(富岡西④)と副将を務める福住勇志(慶應④)には最後の秋に意地を見せて欲しいところ。秋はベンチ入りの選手の中で投手の枚数を増やすなど試行錯誤を続け、戦力の最大化を図りたいですね。
3-2.慶應義塾大学の野手陣
野手に関しては昨年とは大きく陣容を変えて戦った春のリーグ戦でした。主将の本間颯太朗(慶應④)と副将の水鳥遥貴(慶應④)は昨年からレギュラーですが、多くの試合で4番を担った清原正吾(慶應④)を代表に今年から出場機会を一気に増やした新戦力も。
清原は抜群の適応力を見せ、二塁打5本はリーグ最多、7打点はチーム最多と中心選手になりました。北海道ベースボールウィークではリーグ戦でもまだ放っていないホームランをエスコンフィールド北海道で放つなどその進化は止まりません。秋は清原を中心に打順を組んでいく形になるでしょう。
春の誤算の一つが上位打線を固定できなかったこと。昨年の神宮大会で活躍した佐藤駿(慶應④)が打率.077と大苦戦し、キャプテンの本間もマークが厳しく打率.143と封じられました。
スタメンで言えば1番打者に起用されたのは5選手、2番打者に起用されたのは6選手で、堀井監督が上位打線の構築に苦悩したのが分かるでしょう。
俊足が武器の中堅手の丸田湊斗(慶應①)や状況に応じたバッティングのできる林純司(報徳学園①)ら1年生が上位に定着できると数年単位でアドバンテージを築けるかもしれませんが、今年の秋は引き続きパターンを試していく形になるのではないでしょうか。
扇の要となるキャッチャーも森村輝(小山台③)を中心に春だけで5選手でまわす形となりましたが、最も秋の正捕手の座に近いのはルーキーの渡辺憩(慶應①)。初打席が延長12回の最終打者、その場面で代打サヨナラホームランという偉業を成し遂げ、昨年夏の甲子園優勝キャッチャーは早くも打撃面で頭角を現しています。ラストシーズンを迎える4年生では森谷史人(福岡④)がこの春初出場に初ヒットを果たしており、秋も出番を増やしたいところです。
内野の各ポジションについて夏のオープン戦では二塁本間、三塁水鳥と布陣を変えたことで、安定した遊撃守備と意外性ある打撃を見せる斎藤快太(前橋④)が正遊撃手に戻ってきました。一塁清原含めて経験ある4年生で内野を固め、ラストシーズンを迎える形になるでしょう。
外野は混戦で、復活に懸ける佐藤駿と東大戦で2本の三塁打を放った古野幹(岸和田④)の2人の4年生に注目。慶早戦2回戦で4番を担った吉田雄亮(慶應②)もオープン戦で結果を残しています。
春の出場ベースではライトで多くの機会を得た大きなレッグキックが映えるフルスイングが持ち味の常松広太郎(慶應湘南藤沢③)、センターも守れる強打者候補の横地広太(慶應②)、当て勘に優れたバットコントロール巧みな真田壮之(慶應③)の3人が挙げられます。春にリーグ戦初本塁打を代打で決めた二宮慎太朗(慶應③)、大型ショートの宮澤豪太(県立長野③)ら右の強打者たちは打てばポジションが付いてくるだけに誰が「掴むか」に期待がかかります。
打力に優れた坪田大郎(慶應③)も夏の登録では捕手から外野手に転向、実際にオープン戦ではレフトでの出場を重ねるなど熾烈な競争になっています。
昨秋優勝した時の慶應義塾大学は1番から7番までOPS.700超えの打者がずらりと並ぶ強力打線を作りましたが、今年も振れる選手は多いだけに個々のレベルアップ次第で秋も十分に優勝を狙える立ち位置。
この夏のB戦では小山春(鎌倉学園③)が本塁打を量産。ポジションが一塁だけに今年のスタメン機会は難しいかもしれないですが、代打からの出場などは期待できそうです。この秋も打ち勝つ慶應義塾大学が見られることを期待したいですね。
3-3.慶應義塾大学のスタメン予想とピックアッププレイヤー
<予想スタメン>
1番(中)丸田湊斗
2番(二)本間颯太朗
3番(三)水鳥遥貴
4番(一)清原正吾
5番(右)吉田雄亮
6番(左)二宮慎太朗
7番(捕)渡辺憩
8番(遊)斎藤快太
9番(投)外丸東眞
秋季リーグ初戦と最終戦で全く異なるスターティングラインナップになっていてもおかしくないと思っています。この夏も多くのオープン戦が組まれ実戦力を磨いていますが、主要選手の離脱が少なく打線に関しては安定した戦力が見込めるのではないでしょうか。
ピックアッププレイヤーは清原正吾。清原和博氏のご子息と言うことでかねてより注目されてきましたが、中高と野球部に所属していない中、このレベルの高い大学で最終学年に4番の座を射止め結果も残したのは生まれ持ったセンス以上にその努力の賜物でしょう。エスコンフィールドでのライナー性の本塁打も素晴らしく、華のある選手なので秋に大暴れして欲しいと思います。
4.法政大学
昨秋に続く4位と下位に沈んだ法政大学。投打ともに下級生から主戦として活躍してきた選手が最上級生となり充実のシーズンとなることを期待していましたが、この春も厳しい結果に。
チーム防御率1.93はリーグ2位、チームOPS.658はリーグ3位と、投手も野手もスタッツで見れば戦えていたものの、2点差以内での負けが7試合と接戦をモノにすることが出来ませんでした。あと一歩の試合運びで勝敗が入れ替わっているだけに、秋は浮上を期待したいところです。
4-1.法政大学の投手陣
投手の軸は高校・大学の同級生である右の篠木健太郎(木更津総合④)と左の吉鶴翔英(木更津総合④)。
昨秋故障のあった篠木はこの春も球速的には下級生時代よりも劣っていたものの、51イニングを投げ20%近い奪三振率に防御率1.41と十分な成績を収めています。大学日本代表では空振りを多くとる力投型のスタイルが復活。北海道ベースボールウィークでもプロ相手に140km/h後半のボールで押し込むことが出来ており、秋にもそのパフォーマンスを発揮したいところ。
吉鶴は昨秋に比べて奪三振が取れず防御率も3点台とやや物足りない結果になってしまいました。球速の低下などは見られなかったですが、長いイニングを投げた時に終盤で捕まってしまうケースが見られ、一つ壁に当たった印象です。左右の投げ間違いが少ない左腕だけに、ゾーンの中で揃えすぎず変化量の大きな空振りを取れるボールも投げられると更に好投が増えそうです。
昨年までリーグ戦登板のなかった4年生左腕の安達壮汰(桐光学園④)は、大島公一監督からキーマンに挙げられていた中で全13試合中11試合にリリーフ登板、防御率1.50としっかりとその役を果たしました。長身から動くボールとフォークを駆使し、打者との勝負に徹するピッチングは小気味良いもの。六大学オールスターでも躍動を見せ、投げられる喜びを感じているように見えました。
同じく4年生の山城航太郎(福岡大大濠④)は出番こそ少なかったものの、150km/h前後の強いボールに大きな縦割れのカーブで春に計3イニングを無失点。ただ出場機会が少ないことだけが欠点だったため、秋は篠木・吉鶴・安達に並ぶ信頼を手中に出来るかが飛躍のカギになりそうです。
春季リーグはここまで挙げた篠木、吉鶴、安達、山城の4人の4年生で全体の94%のイニングを消化、ラストシーズンとなる秋も投手は盤石な体制で臨めるでしょう。
秋にブルペンに加わっていきたい投手を挙げていきましょう。春に登板機会があった選手では、ダイナミックなフォームの永野司(倉敷商③)、力強いストレートと鋭く落ちるボールを投げる山口凱矢(桐蔭学園②)は秋も出場機会に恵まれそう。
昨秋のフレッシュトーナメントで好投した野崎慎裕(県岐阜商③)や、2月のおいどんカップで登板を重ねた針谷隼和(桐光学園②)、6月のフレッシュトーナメントで好投した大型左腕の倉重聡(広陵①)と高身長右腕の小森勇凛(土浦日大①)のルーキーもオープン戦の内容次第でチャンスが回ってくるかもしれません。
4年生が盤石すぎるゆえに下級生のチャンスは限られていますが、春の慶大戦のように延長12回までいくことも考えれば個々の準備は非常に大切なものに。最も悔しさを味わったであろう宇山翼(日大三③)も秋はリベンジの機会が巡ってくることを期待しています。
4-2.法政大学の野手陣
春の課題は野手の得点力でした。1試合平均2.8得点で、チーム打率.232は在籍している選手のラインナップからするとやはり物足りなさを感じます。
チームで気を吐いたのは中津大和(小松大谷④)。2本塁打を放つなどOPS.914、7盗塁はリーグトップで、打って走れる選手としてアピールしました。3番に座ったが、チームとして2番打者が決まらず繋がりを欠いただけに一つ前に詰める判断も秋は考えられるでしょう。
大学日本代表にも選出された松下歩叶(桐蔭学園③)は本格的にブレイク。球際に強く好守で何度も投手を助けたほか、打撃でも2本塁打を放つなどチームの軸を担う選手に。ハーレム・ベースボールウィークではOPS1.172を記録するなど大舞台での強さも見せチームに収穫を持ち帰ります。
各ポジションで控えも含めて層が厚いのが法政大学の長所。正捕手は多様な投手陣をよくリードし、打撃でもランナーを返す役割を担った主将の吉安遼哉(大阪桐蔭④)ですが、夏のOP戦で出場を増やしている中西祐樹(木更津総合②)、昨秋のフレッシュトーナメントで4番に座った土肥憲将(鳴門②)も控えています。
内野の一角を担うのが副将の武川廉(滋賀学園④)。4番起用時には本来の打撃が出来ていなかったですが、1番に戻ってからはOPS.838と思い切りのいいバッティングを取り戻しました。
春に一塁手として出場を重ねた田所宗大(いなべ総合④)も元捕手らしい声がけと視野の広さで守備でも欠かせない選手ですが、この両名が夏にやや出遅れているようなのは懸念事項。秋に万全で臨めるようコンディションを整えていきたいですね。
中津が再び外野に戻る動きもある中で、次世代の遊撃手候補の実質一番手で夏のオープン戦では1番ショートでスタメン出場を重ねる石黒和弥(高岡商③)、リーグ戦経験のある品川侑生(三重③)、ルーキーの熊谷陸(花巻東①)らがショートのポジションを争います。春に打率3割を記録した中村騎士(東邦①)にとっては二塁のポジションでレギュラーを勝ち取るチャンス。
名門チームの正遊撃手だった小川大地(大阪桐蔭①)もこの秋にベンチ入りの可能性が高いでしょう。夏のオープン戦では浅倉大聖(日大三②)が台頭の気配を見せています。
外野は打力に秀でた姫木陸斗(日大藤沢④)と内海壮太(御殿場西④)が両翼を担い、中津がセンターに戻ることで守備のバランスをとる形に。春に最多三塁打の鈴木大照(明徳義塾④)も控え、4年生が揃う盤石な体制になっています。
本格的に外野手として稼働する藤森康淳(天理②)と春は故障で出場機会のなかった浜岡陸(花咲徳栄③)は守備・走塁から貢献していきたいところ。ラストシーズンの西村友哉(中京大中京④)がオープン戦の最終盤に怪我から戻ってきたのは好材料。チームが劣勢の時でも声を出し、ムードメーカーの役割を担う大川航駿(日大鶴ケ丘④)もラストシーズンこそは初出場を飾りチームを一つにまとめたいですね。
4-3.法政大学のスタメン予想とピックアッププレイヤー
<予想スタメン>
1番(一)武川廉
2番(中)中津大和
3番(左)内海壮太
4番(右)姫木陸斗
5番(三)松下歩叶
6番(捕)吉安遼哉
7番(二)中村騎士
8番(遊)石黒和弥
9番(投)篠木健太郎
武川の状態次第では夏のオープン戦に1番打者で起用されている石黒がそのままリーグ戦でも1番を担う可能性も。中軸に並ぶ打者は強力なので先行逃げ切り型の試合運びを意識したいチーム。走攻守ともにアグレッシブさがややこの数年間欠けているように感じるので、ミスをしても前に突き進む強かった法政大学の再興を願います。
ピックアッププレイヤーは石黒和弥。高校時代から守備の巧さで目立っており、大学入学後も数多くの遊撃経験者の中でノックから安定感を見せていました。リーグ戦でのスタメン出場はまだありませんが、この秋は遂にそのベールを脱ぐ時が迫っています。チームの中でも存在感があり、一塁コーチャーとしても陽のオーラを放っていたので、次代のチームを松下とともに牽引できるようなシーズンにしてほしいですね。
5.立教大学
3季連続で5位に低迷している立教大学。それでもこの春は最も良い兆しの見えるシーズンとなっており、全大学から1勝以上を挙げて計6勝。しかし勝ち点では東大戦のみの1と3戦目まで持ち込みながら惜しくも競り負けた試合が目立ちました。これまで以上に上がり目のある秋のシーズンとして期待をかけたいチームです。
5-1.立教大学の投手陣
投手の軸は春に3勝を挙げ、52イニングで防御率1.52と安定したピッチングを見せた小畠一心(智弁学園③)。
2完封とスタミナも十分で、球速は常時140km/h台前半、変化球は多彩でフォークに強みを持ちます。六大学オールスターでも順調な仕上がりをアピール。ストレートは空振りを奪えるようないい伸び方をしていて、他チームからの研究も進む中でそこも乗り越えて好投を続けたいですね。
春に2戦目の先発に起用されたのは大越怜(東筑③)と沖政宗(磐城④)。
大越はこの春までリーグ戦登板はありませんでしたが、初登板の早稲田戦で5回1失点の勝ち投手になると弾みをつけ6度の先発マウンドに。回復に少し時間を要するのか同一カード内での複数登板時が課題ですが、まずは2戦目に長いイニングを投げることを目指したい立ち位置。
沖は1年生から登板を重ねているだけあって百戦錬磨、先発・中継ぎと両軸で投手陣を支えます。マネーピッチであるチェンジアップに磨きをかけ、WHIP1.00を切るなど成長を遂げています。フォームもMLBのジョニー・クエト投手を彷彿とさせる特徴的なものになっていましたが、六大学オールスターではそこから更にフォームチェンジした様子も。
昨年は野手転向かと思われた吉野蓮(仙台育英③)がクローザーになったのは驚きでした。奪三振率28.9K%と非常に三振を取ることに長け、防御率も0点台と本来もっとチームの価値に貢献できるはず。この秋は春以上に厳しい場面での登板を期待したい投手です。
春は実に13投手がリーグ戦のマウンドに上がりましたが、これは全チームで最多人数。元プロの戸村健次氏が投手コーチに就任し、運用面でも転換期を迎えています。左腕の小林誠明(日大二②)のカーブは異質な球種で今後起用の幅を広げられそうな投手。
1年生コンビの田中優飛(仙台育英①)と山田渓太(大垣日大①)が揃ってリーグ戦に出場したのも今後の立教大学にとってはプラス材料。昨秋6登板の佐山未來(聖光学院②)もフレッシュトーナメントでは先発として圧倒的なピッチングを見せています。
4年生では昨年台頭した塩野目慎士(足利④)とポテンシャル型の三河吉平(春日部共栄④)の活躍は最後の秋に期するべきもので、チーム全体の経験値はこの春に蓄えただけに秋に結果に結びつかせたいですね。
5-2.立教大学の野手陣
野手は春にチームOPS.570、特に長打率.281と長打不足に苦しんだシーズンでした。15試合で2本塁打と本塁打数はリーグ最少、10試合で3本塁打の東京大学にも後れを取ってしまっていました。
チームの中軸打者に育ったのが西川侑志(神戸国際大附③)。シーズン途中から4番に固定され、OPS.984はリーグでもトップクラス。10打点を挙げるなどチャンスにも強い打撃を見せ、43打席で2三振とアプローチにも優れています。秋は西川の前にどれだけ走者を貯められるかがカギになるでしょう。
春の3カード目から1番にルーキーの小林隼翔(広陵①)、2番に主将の田中祥都(仙台育英④)を配置したのは一つ形を作れたのではないでしょうか。ともに出塁率.350超、打席内でも球数を稼ぎ相手投手の神経を削っていく役割を果たしていました。一方で、小林隼は終盤で打撃不振に陥り3試合無安打とムラもまだある側面も。
昨秋に大学日本代表候補に選ばれた副将の菅谷真之介(市立船橋④)が高い出塁率をベースに1番に固定できればそれが最良の選択肢になるのではないでしょうか。
春は柴田恭佑(東明館④)が3番に固定されていましたが、三塁・遊撃どちらの守備での貢献も大きい選手である一方で長打力にはやや欠ける面もあるため、秋は西川の打順を上げるなど流動性を上げることも考えたいところ。
守備位置の観点で見ていくと、内野は実績ある齋藤大智(東北④)、鬼頭勇気(横浜④)、平野太陽(春日④)の3人の4年生が意地を見せたい。いずれも打撃には強みを持っており、齋藤と鬼頭はリーグ戦で本塁打も放っています。平野は昨秋に代打からの出場を主にしながら打率4割と打撃に優れた打者。代打に甘んじることなくスタメンを狙える立ち位置でしょう。
捕手には副将の戸丸秦吾(健大高崎④)が正捕手として座ります。春は5打点と勝負強い打撃が強みに。守備面ではブロッキングに不安もありますが、ラストシーズンでキャリアハイのパフォーマンスを攻守に見せてくれることを楽しみにしています。二番手には落合智哉(東邦②)が控え、急場に備えます。
丸山一喜(大阪桐蔭②)と桑垣秀野(中京大中京③)の2人は野手のメンバーの中で体格の良さが際立つだけに中軸で打力に期待したい選手たち。丸山は打球が上がらず、桑垣はタイミングが取れずと春に課題は見えただけに、夏の間に成長を見せたいところ。
外野のポジションに割って入りたい選手としては、バットコントロールに優れ春4安打の山形球道(興南③)、昨春一度はレギュラーを掴んだ鈴木唯斗(東邦③)、守備走塁から出番を増やした北田峻都(報徳学園③)が虎視眈々とスタメンの座を狙います。特に鈴木唯はアスリートタイプで、走る姿などを見ても万全な状態であればリーグトップクラスの成績も残せるのではないかと期待を持たせるもの。
下級生も多くスタメンに入り、元気なチームに生まれ変わった立教。勝ち点を増やす飛躍のシーズンにしたいですね。
5-3.立教大学のスタメン予想とピックアッププレイヤー
<予想スタメン>
1番(右)菅谷真之介
2番(二)田中祥都
3番(中)鈴木唯斗
4番(左)西川侑志
5番(一)丸山一喜
6番(遊)小林隼翔
7番(三)柴田恭佑
8番(捕)戸丸秦吾
9番(投)小畠一心
チームとして1番・2番のスタメンOPSが.600を大きく下回ったことで得点力が上がり切らなかった反省を活かしたいところ。出塁能力に長けた菅谷・田中の両4年生でチャンスを作り、西川ら中軸で返すのが理想の展開。3年生以下は実績も少なく確固たるレギュラーを掴んでいる選手は少ないため、各ポジションでの競争に期待したいですね。
ピックアッププレイヤーは戸丸秦吾。高校時代から注目された捕手で強肩は健在も、守備面での不安がどうしてもこの大学4年間ではついてきていました。最後のシーズンで飛躍的なレベルアップは難しいかもしれませんが、勝ちに飢えた姿勢が春は見られ、精神的な強さを感じています。勝負所での配球や投手とのコミュニケーションなど細部を突き詰めてピンチをチャンスに変えられれば自ずと勝ち点が付いてくるでしょう。
6.東京大学
春は全敗で最下位に沈んだ東京大学。昨秋は0本に終わった本塁打がこの春は3本出るなど打撃面では下級生も起用しつつ兆しが見えた一方で、チーム防御率7.52で特に与四死球が85イニングで71個と投手陣が制球に苦しみました。秋こそ「突き抜ける」。
6-1.東京大学の投手陣
投手の軸は4年生の平田康二郎(都立西④)と鈴木太陽(国立④)の両右腕。
春は平田が防御率7点台、鈴木は9.30と非常に苦しみましたが、ともに強いボールを持ち味に三振は取れるタイプ。特に平田は昨年一年間で34イニングを防御率3.93と非常に安定した投球を見せていただけに、忸怩たる思いがあるでしょう。北海道ベースボールウィークではプロ相手に堂々たるピッチングを披露、球速も140km/hを超えるなど好投を見せました。
平田はビッグイニングを作らせないこと、鈴木は立ち上がりの入り方を意識して秋に臨みたいですね。
同じ4年生では長谷川大智(駒場東邦④)が3度のオープナーで先発登板。法大戦では序盤2回を無失点と成功の道筋が見えました。投手のやり繰りには苦しんでいるだけに、こうした作戦面で相手チームの裏をかくことも求められます。
春に好投を見せたのがアンダースローの渡辺向輝(海城③)。緩急を使った投球で的を絞らせず、リーグでもほとんどいないアームアングルも相まって11イニングで被安打6と非常に打ちづらい投手になっています。フレッシュトーナメントでは先発経験も多いだけに、秋は更に大きな役回りを担ってほしい存在。二戦目の先発に抜擢される日も近いのではないでしょうか。
前田理玖(熊本②)と佐伯豪栄(渋谷幕張②)の両二年生右腕も春はリリーフで健闘しました。前田は明大との1回戦で4イニングのロングリリーフを2失点。アームアングルやや低めから横変化のボールを効果的に投じています。佐伯も様々な場面でリリーフ登板を重ね、次世代の東大野球部を担いたい投手。
春の最大のトピックは1年生左腕の松本慎之介(國學院久我山①)が早くもリーグ戦マウンドに登ったこと。1年生がリーグ戦に登板したこと自体、21年卒の小宗創と奥野雄介以来の快挙です。選抜ベスト4という輝かしい球歴を持つ左腕は130km/hを超えるストレートの威力とカーブが魅力で、この秋は先発の可能性も十分あるでしょう。
ラストシーズンを迎える4年生では中村薫平(堀川④)が春に初登板。大きなカーブを武器に秋も登板を重ねたい。左腕の双木寛人(都立西④)、右サイド気味の森岡舜之介(渋谷幕張④)も秋にピークを合わせたいところ。
下級生ではこの春に出てくるかと思うほど昨年のフレッシュトーナメントから力強いボールを投げていた江口直希(海城②)、6月のフレッシュトーナメントで登板した横山景一(新潟②)と1年生の高橋直人(日比谷①)に注目。8月に行われたソウル大学との交流試合で登板した栗林和輝(灘①)もベンチ入りの期待がかかります。
6-2.東京大学の野手陣
野手では昨秋ベストナイン、大学代表候補合宿にも参加した酒井捷(仙台二③)が左膝の大怪我から復帰という好材料があります。
昨年は年間でOPS.836と東大不動の1番打者で、一人でゲームバランスを変えうるキープレイヤー。よくこの短い期間で出場できるかどうかまで来たなという印象で、本人も来年のプロ入りを語るだけに大事なシーズンになります。
春季リーグは酒井捷を欠く中、大原海輝(県立浦和③)が1本塁打を放つなどOPS.838と覚醒。東大として二季連続のベストナインを受賞する活躍を見せました。今年から取り組んだ外野守備も強肩を武器にそつなくこなし、六大学オールスターではまさかのセンターも。秋は酒井捷と大原の揃い踏みを楽しみにしたいですね。
正捕手争いは予想通り激化。打力では春に1本塁打を放ち打率も3割越えの副将の府川涼太郎(西大和学園④)がリードしていますが、捕手としての視野の広さと圧倒的強肩で杉浦海大(湘南③)がシーズン中盤から起用を増やしました。どちらもフィールドに居て欲しい選手だけに、最後の秋には守備位置含めて動きがあるかもしれません。
内野はセカンドの山口真之介(小山台④)が攻守の軸として不動な中、他の3ポジションはかなり流動的に。
チャンスに強く打撃に優れた内田開智(開成④)が万全であれば三塁もほぼ決まりますが、春は故障もあり正遊撃手だった青貝尚柾(攻玉社③)がサードに回ることも。遊撃には井之口晃治(ラ・サール③)と小村旺輔(私立武蔵②)がスタメン出場を果たすなど部内競争が盛んになっています。
主将の藤田峻也(岡山大安寺中等④)が遊撃も含めた両コーナーとも経験があることで柔軟なポジション配置が出来ており、副将の西前颯真(彦根東④)と俊足の堀部康平(県立船橋②)でコンディションに応じた起用を行っていく形でしょう。
フルスイングが魅力の門田涼平(松山東②)と今夏の七大戦で本塁打を放った秋元諒(市川①)、体格の良さでは上級生に引けを取らない荒井慶斗(宇都宮①)も少ないチャンスをものにしたい。
外野3ポジションは酒井捷の復帰で熾烈になります。
酒井・大原が問題なく稼働できれば残るポジションは1つだけで、長打力が武器の中山太陽(宇都宮③)、俊足で安定したセンター守備が魅力の榎本吉伸(渋谷幕張③)、4年生で積極的なバッティングが出来るムードメーカーの橋元崚人(修猷館④)が春のリーグ戦実績ベースでも控えています。
ここに下級生で打撃と足に優れた伊藤滉一郎(県立千葉②)と竹山直太朗(修道②)が食い込んでくるため、秋の初戦と最終戦では外野の陣容が大きく変わっていることも十分あり得るでしょう。
6-3.東京大学のスタメン予想とピックアッププレイヤー
<開幕予想スタメン>
1番(中)酒井捷
2番(左)中山太陽
3番(二)山口真之介
4番(三)内田開智
5番(右)大原海輝
6番(捕)府川涼太郎
7番(遊)青貝尚柾
8番(一)堀部康平
9番(投)平田康二郎
1番センター酒井捷、ここが秋のメンバー表で読み上げられれば自ずとチームも「突き抜ける」ことが出来るのではないかと期待してしまいます。春も酒井を欠く中でスタメン打順別では例年よりもOPSが高い選手が1番から中軸にかけて並び、例年通り秋に個のレベルアップが果たせれば打線は希望が見えるでしょう。とはいえ、六大学の並居る強力投手陣相手に打ち勝つのは簡単ではないため、接戦を作るためにも投手陣の奮起が欠かせません。
ピックアッププレイヤーは平田康二郎。ラストイヤーにエースとしてチームを牽引するピッチングが出来るかにチームの浮沈がかかっていると言っても過言ではありません。体格も投げているボールも他大学の投手に引けを取らず、あとは自分のボールをしっかりと投げ切れるかだけだと思います。キャリアハイと自身初勝利をこの秋に。楽しみにしています。
7.さいごに
二万字に及ぶ長文お読みいただきありがとうございました。四年生にとってのラストシーズン、やはり感慨深いものがありますね。「これが最後かもしれない。」、本当にその通りだと思います。
選手、スタッフ、応援団、観客の皆さんで一緒に作り上げるのが東京六大学野球。大きな拍手で選手たちを送り出し、一球一打に一喜一憂しましょう!
◾️出典
写真はすべて筆者撮影のもの