開幕直前!どこよりも詳しく東京六大学野球2024年春季リーグの見どころ伝えます!
こんにちは、シュバルベです٩( 'ω' )و
毎シーズン恒例となった東京六大学野球連盟の展望を書いていきます。
まずは昨年の結果から。春は明治大学、秋は慶應義塾大学が優勝。
リーグ戦終了後の全国大会でも明治大学は全日本大学野球選手権で準優勝、慶應義塾大学は明治神宮大会で優勝と、国内最高峰の大学野球リーグの代表として存分に力を発揮しました。
以下、各大学別にこの春の展望を投手・野手別に見ていくとともに、各大学のスタメンを予想していきます。かなり長いですが、春のリーグ戦前の「しおり」として読んでいただければ幸いです笑
※以下選手名は敬称略、()内の数字は新年度の学年を表すものとします。
1.慶應義塾大学
23年秋は21年秋以来のリーグ優勝、11月に行われた明治神宮野球大会では春の全日本大学野球選手権大会の覇者青山学院大学を決勝で降し見事日本一の座を手にした慶應義塾大学。
慶應高校も夏の甲子園を制し、2023年は慶應フィーバーと言っても過言ではない一年となりました。
投手の大黒柱に成長した外丸東眞は春・秋合わせて123イニングを投げ9勝2敗。両シーズンとも防御率は1点台と抜群のクオリティの高さを見せつけました。23年当初はリーグ戦経験の少ない投手がほとんどで実際春はその運用に苦しんだ部分も垣間見えたが、4年生の谷村然・森下祐樹を中心にリリーフを整備し新戦力も台頭したことで秋はチーム防御率リーグ1位に輝きました。
伝統の強打は健在で、特に秋はスタメンの1番~7番打者まで全員がOPS.700以上をマーク。プロ入りした廣瀬隆太主将を筆頭に、その前後を担った吉川海斗・栗林泰三・宮崎恭輔の4年生が大いに打力を発揮しました。
2024年は本間颯太朗が新キャプテンに就任。「ALL IN “___” 〜日本一の挑戦者〜」をスローガンに、連覇を狙う一年となります。
1-1.慶應義塾大学の投手陣
まずは投手陣から見ていきましょう。
昨春と昨秋の結果はこちら。
エースの外丸東眞(前橋育英③)は抜群のコントロールに加え、23年は球速・球威とも増しゾーンの中で打者と果敢に勝負できるようになりました。ストレートの平均は実に4km/hほど前年より増したことで、投手優位のカウントを常時作ることが出来たことが活躍の大きな要因。春・秋ともにWHIP1.00を切るなど走者を与えず得点機さえ作らせない圧巻のピッチングを見せています。
外丸投手の強みはカットボール、カーブ、スライダーと球種の異なるボールをコマンド良く操ることに加え、その独特な投球フォーム、特に肘周りの使い方にあるでしょう。
昨秋はリーグ戦を6勝0敗、明治神宮大会では強打の青山学院大学を5安打完封で降し大学日本一投手に。安定感抜群の右腕は今年も塾のエースに君臨します。
1年生ながら昨秋の先発二番手に抜擢された竹内丈(桐蔭学園②)も期待に応えました。ダイナミックなフォームから動くボールを投じ、24イニングを投げ防御率1.11。全国の舞台も経験し、今年は長いイニングを任される投手になりたいところです。
春に4試合8イニングを投げて自責0の荒井駿也(慶應③)、秋に3試合登板の渡辺和大(高松商業②)の両左腕はフレッシュトーナメントで先発起用もあり、外丸・竹内を追いかける立ち位置。薩摩おいどんカップでは渡辺投手が多くの登板を重ねていますが、そのテンポの良さと強みである対角線へのストレートをリーグ戦でも発揮できれば結果もついてくるのではないでしょうか。
昨秋は不調も背番号17を背負った小川琳太郎(小松③)、2年生から登板を重ねるも秋は登板の無かった浮橋幸太(富岡西④)はともに復活をかけた1年に。
ブルペンを支える投手の一人が右サイドスローの木暮瞬哉(小山台③)。秋はピンチの場面で火消しを任されると、4試合2イニングで被安打0。リズムよく下半身主導のフォームからしっかりと手首を立てて強いボールを投げ込み、気迫を全面に出すスタイルでチームに流れを呼びこみます。
昨年の1年生で最も早くリーグ戦登板を果たした広池浩成(慶應②)も同級生の竹内・渡辺に続いていきたい投手。打者を圧し込める力強いストレートに加え、落差の大きなスライダーが強みでリリーフのショートイニングで一層力を発揮できそうです。やはり同級生の別所孝亮(大阪桐蔭②)にも期待。まずは高校時代のパフォーマンスを取り戻すところからではありますが、少しずつ登板を重ねていきたい段階です。
リーグ戦未登板の投手では秋のフレッシュトーナメントで決勝戦含む2試合に先発した田上遼平(慶應湘南藤沢②)、大型左腕の栗林兼吾(小山台②)、力強いストレートを武器に今年は副将も務める福住勇志(慶應④)らが戦力の上積みになれば理想でしょう。
エースの外丸投手がとびぬけ、2戦目の先発を担う投手含めてそれ以外は競争。毎年、春の後半には1年生投手がリーグ戦のマウンドを踏むなど新陳代謝も盛んにおこなわれるため、思わぬ戦力の台頭もあり得ます。新1年生では夏の甲子園で登板した右サイドスローの松井喜一(慶應①)がリリーフで居場所を早く見つけられそうな投手ではないでしょうか。
気になる点としては、全体的に球速よりもボールの精度やキレで勝負する右投手と被るタイプが多いこと。ここまで挙げてきた投手の中で、他の投手と異なる武器をモノにした選手がリーグ戦で起用されることになるはず。多く組まれたこの春のオープン戦で見極めていくことでしょう。
1-2.慶應義塾大学の野手陣
昨春と昨秋の主要打者の成績は以下の通り。
新チームの野手の中心は主将の本間颯太朗(慶應④)と副将の水鳥遥貴(慶應④)の2人。昨年の春からレギュラーを掴み出場を続けるも不振に終わりましたが、秋にともに成績を大きく上げ、本間は3本塁打を記録するなどOPS.962、水鳥はライナー性の打球多く放ちOPS.715。強力打線の一角を担いました。
本間は慶應高校時代に続きキャプテンに就任。個人目標には打率.350と4本塁打と高い目標を掲げます。打力もさることながら、昨春は送球ミスが目立った守備面でも改善が著しく、確かな練習の跡がみられる好プレイヤーです。慶スポの新主将就任インタビューではフォローアップ型のキャプテン像を語っているのでこちらもぜひご参考まで。
水鳥は日本代表候補合宿にも選出。3年春までは中堅手・一塁手としての出場が主でしたが、プロ志望を明言し昨秋からショートの守備位置に就いています。
薩摩おいどんカップではオフに一回り大きくなった身体を見せ、主に4番ショートとして出場を重ねています。現時点では遊撃手としての俊敏性に課題を残し、打撃面ではスイングスピードが課題となっていますが、昨年の春を考えれば大きく成長しておりリーグ戦で力を発揮できるかに注目です。
昨秋の慶大は打順をほぼ固定し強力打線を形成、4年生がその中心を担ったため今年はリーグ戦経験で言えば少ない選手が多いのが実情。ただ、秋のフレッシュトーナメントでも慶應義塾大学は優勝するなど、下級生含めて振れる選手が次々と出てくるのがこのチームの強みでしょう。
各ポジション別に見ていきましょう。
捕手は森村輝(小山台③)と坪田大郎(慶應③)の両3年生の争いか。森村はブロッキングとフレーミングに優れた安定感のあるキャッチャー。打撃でもセンター方向にシャープに打ち抜く技術を持っています。坪田は秋のフレッシュトーナメントで中軸を任されるなど打力に秀でています。新1年生で夏の甲子園優勝捕手の渡辺憩(慶應①)が次世代の正捕手候補として控える形になるでしょう。
内野のセンターラインを担う二遊間は熾烈なレギュラー争いに。
水鳥が遊撃手の一番手という形ではあるものの、守備では昨春ショートのレギュラーだった斎藤快太(前橋④)がリード。ボールへのアプローチや握り替えの速さには目を見張るものがあり、意外性あるパンチ力は薩摩おいどんカップでも発揮され、NTT西日本戦では満塁弾も放ちました。
秋の慶早戦で初戦に一時は逆転となる代打タイムリーを放ち、2戦目・3戦目でセカンドのスタメンに抜擢された上田太陽(國學院久我山②)は球際に強く送球の精度も高い選手。二塁・三塁のポジションで割って入ってくる可能性も十分あるでしょう。フレッシュトーナメントでは春・秋ともに正遊撃手として起用された大型ショートの宮澤豪太(県立長野③)も出場機会を窺います。
本間・水鳥の2人ともにユーティリティ性があり、実戦でも内野各ポジションを経験していることから、内野の流動性を高めた起用がこの春は多く見られるのではないかと期待しています。
特に打力に秀でた今泉将(慶應③)は次のチームの中心打者になれる素質のあるバッター。キャプテンの本間という大きな壁が立ちはだかるものの三塁手として早くからリーグ戦を経験させたいシーズンです。
話題が先行しがちですが地道に練習を重ね高校時代のブランクを埋めてきた清原正吾(慶應④)も堀井監督からクリーンアップに座ることを期待される選手。実際、薩摩おいどんカップでは多くの試合で中軸を担いました。昨年は外野手登録でしたが、今年は改めて一塁手として打力を武器にレギュラーを狙います。
外野は混戦。センターのポジションの筆頭は新4年生の佐藤駿(慶應④)。昨年は10試合に出場し打率.313をマーク。俊足の持ち主で盗塁を1つ決めているほか、神宮大会でもその走力を活かした三塁打を放ち守備でも高い貢献を見せました。
ただ、薩摩おいどんカップでは出場が無く、代わりに1番センターを担ったのが古野幹(岸和田④)。リーグ戦経験のある内外野守るユーティリティプレイヤーという立ち位置から脱却し、安定した守備と優れた選球眼をベースとした総合力で勝負します。
1年生ながら春に28打席を与えられた横地広太(慶應②)は高校通算38本塁打の左の大砲。昨年は結果を残せなかったが、OP戦~フレッシュトーナメントまで多くの試合に出続けたタフさとその経験は大きな武器となります。
薩摩おいどんカップではサイクルヒットも記録した急成長中のホープが二宮慎太朗(慶應③)。遊撃も含め複数のポジションでレギュラーを狙っていきます。昨年は代走起用がメインだった村岡龍(慶應②)も当然スタメンを狙う立ち位置。明治大学の飯森太慈のように足を活かしたプレーでその座を掴みたい選手です。高校日本代表に名を連ね、甘いマスクで話題をさらった新入生の丸田湊斗(慶應①)も早くから出場機会があるかもしれません。
両翼のポジションはロマンある強打者が定位置を狙います。
秋のフレッシュトーナメント3試合すべてで長打を放ち法政大学戦では本塁打も放った権藤大(慶應③)、大きな構えに大きなレッグキックと癖の強い打撃フォームから繰り出される強打でオータムフレッシュリーグin静岡では1試合2本塁打を放った常松広太郎(慶應湘南藤沢③)の両三年生がパワーでアピール。野球一家の三兄弟の中で最も野球センスがあると言われる小原大和(花巻東②)も春のOP戦次第で一気に台頭する可能性があります。
実績は多くないですが、外野の各ポジションに好プレイヤーが揃い、プレシーズンから熾烈な競争となるでしょう。
三振を恐れず強く振り、長打で打ち勝つのが慶應スタイル。この春も自慢の強力打線を武器に、東京六大学を彩る強打者を輩出することに期待です。
1-3.慶應義塾大学のスタメン予想
まずは理想スタメンから。
<理想スタメン>
1番(中)佐藤駿
2番(二)上田太陽
3番(遊)水鳥遥貴
4番(三)本間颯太朗
5番(右)横地広太
6番(一)清原正吾
7番(捕)森村輝
8番(左)村岡龍
9番(投)外丸東眞
ただ、薩摩おいどんカップでは佐藤駿、上田太陽、本間颯太朗が出場しておらずコンディション不良が案じられます。本間は3月後半にOP戦復帰したため、ギリギリ間に合う形になりそうなのが救いですね。
直近のオープン戦の出場メンバーなどを鑑みると次のような形が開幕では予想されるでしょうか。
<開幕予想スタメン>
1番(中)古野幹
2番(左)村岡龍
3番(遊)水鳥遥貴
4番(三)本間颯太朗
5番(一)清原正吾
6番(右)横地広太
7番(捕)森村輝
8番(二)斎藤快太
9番(投)外丸東眞
2.明治大学
23年春にリーグ戦3連覇を成し遂げましたが、秋は慶應義塾大学に勝ち点を奪われ惜しくも2位に終わった明治大学。
キャプテンの上田希由翔、エースの村田賢一、リリーフ左腕の石原勇輝の3人をNPBに送り出し、14年連続のドラフト指名は同一チーム史上最長記録。名門中の名門です。
春は投打ともにあらゆる指標でリーグトップに立ち圧倒したものの、秋は主力選手が故障の影響もあり十分なパフォーマンスを発揮できず、特に打線が春のチームOPS.822に対して秋OPS.618と足を引っ張ってしまいました。明治大学にはコンタクトに優れ小技の出来る打者が多い一方、昨秋はそこに依りすぎてしまい相手チームからすると怖さが減ってしまっていたのではないでしょうか。
犠打はリーグで最も多く、それまでリーグトップ争い常連だった盗塁数は6個に留まり、出塁率も3割を切りました。チーム全体として昨秋から戦い方を見直す必要があると言えるでしょう。
ただ、投手は4年生から下級生まで広くマウンドを踏み、野手も大学日本代表の正遊撃手である宗山塁を筆頭に熾烈な部内競争を勝ち抜いた技術と精神力に優れた選手が揃っています。
24年は宗山塁を新キャプテンに、スローガンは「輪〜神宮を紫紺に〜」。栄冠を奪還すること、そして道半ばとなった四冠を目標に紫紺に染まるスタンドを沸かせる戦いを見せていきます。
2-1.明治大学の投手陣
昨春と昨秋の結果はこちら。
新チームの投手は左・右ダブルエースを軸に戦う形と予想します。
右の浅利太門(興國④)は150km/hを超えるストレートと落差の大きなスプリットチェンジを武器にリリーバーとしてブルペンを支えてきましたが、今年はOBで現DeNAベイスターズの入江大生の在学時のように先発として勝負しNPB入りを目指します。
綺麗なオーバースローで横ぶれの小さなフォーム、投げ下ろすようなストレートは威力抜群。カットボールにも自信を持っており、先発として投げた時はこのボールの精度が重要になってくるでしょう。
インタビューからは言語化に優れ、具体的な目標を数字と共に語り、投球フォームについてもどこか客観視しながら修正点を見つけていく。そして自身の世界観を持っている現代の投手らしいタイプであることがうかがえます。
最上級学年としての自覚、チームを引っ張るエースとしての自覚が加わり、力を発揮することが出来ればドラフト1位というところも現実的に見えてくるのではないでしょうか。
先発のもう一つの軸になりそうなのが、昨秋7試合10イニングを防御率0.00、許した安打はわずか2本と圧巻のピッチングを見せた左の久野悠斗(報徳学園③)。
常時140km/h半ばのストレートと切れ味鋭いスライダーを武器に安定したゲームメイクが期待できます。昨年はリリーフとして厳しい場面を任されるケースも多かったですが、自分のピッチングを貫くマイペースさが光った印象。昨年の経験を糧に今年は先発の柱として台頭したいところです。
一年生時の輝きを取り戻したいのが新4年生の藤江星河(大阪桐蔭④)。昨秋は背番号1を背負うも1試合の登板に留まり、一年を通して先発登板は0。21秋シーズンには先発2番手を担っていただけに、最後の年に懸ける思いは強いでしょう。
ブルペンは非常に層が厚く、先発の座も狙う投手が多く控えています。
その筆頭は、昨秋に9イニングで14奪三振とずば抜けた奪三振能力を誇る大川慈英(常総学院③)。秋のフレッシュで怪我をして出遅れたのが信じられないような素晴らしいクオリティのピッチングを続けました。大学入学後に怪我に見舞われるもその間のトレーニングで増量。
「分かっていても打てない真っすぐ」を追求してきたとのことで、そのストレートについて次のようにスポーツ紙で記載されています。
大川の同級生にあたる新3年生には多くの好投手が在籍しています。
190cmを超える高身長から投げ下ろすフォークボールに威力のある髙須大雅(静岡③)も昨年リーグ戦登板を果たしており、1年秋からリーグ戦登板を果たした菱川一輝(花巻東③)も強みのストレートを磨くことで殻を破りたい投手。
春のフレッシュトーナメント決勝で慶應義塾大学を7回1失点に抑えた左の毛利海大(福岡大大濠③)がこの春のオープン戦でも好投を見せているほか、大型左腕の井上仁(明大中野八王子③)もリーグ戦での本格稼働を目指します。
ラストイヤーを迎える4年生では、昨秋不調も22春~23春までの3シーズン10試合を自責0で抑え続けてきた左腕の千葉汐凱(千葉黎明④)の復活に期待。対左での強さは大きな武器となります。リーグ戦未登板の山田翔太(札幌第一④)がオープン戦で好調を維持しているほか、高校時代は剛腕で鳴らした菊地竜雅(常総学院④)も控えています。
秋のフレッシュトーナメントで140km/h中盤の速球と落差ある変化球でリリーフ適性を見せた三浦心空(東邦②)、報道によれば入部予定とされる新入生では湯田統真(仙台育英①)、林謙吾(山梨学院①)ら春・夏の甲子園を沸かせた投手もベンチ入りを狙います。
村田・蒔田・石原という3投手が卒業してなお豊富な人材を誇る明治大学投手陣。ハマれば昨年以上に強力な布陣になり得るという印象です。
2-2.明治大学の野手陣
昨春と昨秋の主要打者の成績はこちら。
攻守の中心に新キャプテンの宗山塁(広陵④)がいるのは大きなアドバンテージでしたが、3月の欧州代表戦前に死球禍で右肩肩甲骨骨折という怪我に見舞われてしまいました。
大学在学中ながらトップ代表に選ばれた4人のうちの1人で、広い守備範囲に正確な送球、さらには地肩の強さもある即戦力ショートはNPBからも高い注目を集めています。リーグ戦通算8本塁打と本来長打力もありますが昨年は0本。本来持っているポテンシャルからすればその打力はやや物足りなさを感じましたが、それでも年間で打率.317にOPS.781というのがこの選手の凄みでしょう。
明治大学としては攻守に安定した成績を期待できる宗山選手が出られないことはチームとして非常に大きな痛手ですが、将来を考えれば焦らず万全な状態での復帰を祈りたいところです。幸い、明治大学は六大学屈指の選手層を誇るチーム。宗山選手不在を攻守に総合的に埋める選手は揃っているはずです。
ポジション別に見ていきましょう。
昨年、正捕手に小島大河(東海大相模③)が定着し、春・秋ともにOPS.800を超える打力を見せたのは今後のチーム作りを考えるうえでも大きいでしょう。キャッチャーの負担を考えると5番以降の打順になると思われますが、打力だけなら十分クリーンアップも担える逸材です。副将の中山琉唯(常総学院④)、下級生で強肩の福原聖矢(東海大菅生②)と万全なメンバーも同ポジションに控えています。
一塁のポジションは打力に優れた選手が鎬を削ることに。
故障が無ければその筆頭は内海優太(広陵②)。昨春の慶應義塾大学戦でリーグ戦初本塁打を放ち、同シーズン打率.333に加えて4打点。U18代表時には法政大学の篠木健太郎から本塁打を放ち度肝を抜いた長打力に加え、11打席で三振は1つとコンタクト力も兼ね備えた好打者です。外野のポジションも取り組み、万全であれば4番を任せるべき選手でしょう。
フレッシュトーナメント通算6本塁打という異次元の記録を持つのが杉崎成(東海大菅生④)。守備面の不安からリーグ戦出場経験は少ないですがそのパワーはリーグ屈指。フレッシュトーナメントでのホームランを現地で見た方ならその打球の質の違いを感じたはずです。
昨年ファーストで多くの出場機会を得た加藤巧也(大阪桐蔭④)も高校時代に鳴らした打力を取り戻したいところ。ミートに長けた吉田匠吾(浦和学院③)も高校時代はセカンドだった動きの良さがあり、一塁レギュラー奪取を狙う立ち位置に。
昨年1年間通して4年生が守った二塁と三塁を誰が引き継ぐのかは大きな注目ポイントでしょう。
打力を活かすならば1本塁打含む年間OPS.928をマークした強打の右打者木本圭一(桐蔭学園③)は確実に入ってくる選手。サードを基本にファースト、セカンドも含めてポジションを回る選手になっていくのではないでしょうか。
1年生の春からリーグ戦出場経験のある宮田和弥(横浜③)、春のフレッシュトーナメントで4番を担った八谷晟歩(浦和学院②)、昨秋の東大戦でスタメンデビューを果たした内藤大翔(天理②)らも三塁と一塁のコーナーポジションを窺う選手。リーグ戦序盤は多くの選手を途中交代含めて起用しながら見極めていく形になるのではないでしょうか。
セカンドの守備の巧さでいえば秋のフレッシュトーナメントで好守を連発した友納周哉(福岡大大濠②)が一気にレギュラーを掴む可能性が高いと見ています。昨年セカンドを回した堀内選手の卒業の穴は大きく、特に二遊間に関して明治大学は守備を重視する傾向が高いと考えるためです。
宗山選手の離脱という緊急時にショートの穴を埋めたいのは三輪拓未(常総学院③)、光弘帆高(履正社②)、津田基(近江②)の3人か。いずれも高校時代はドラフト候補にも挙げられる好プレイヤー。リーグ戦経験は少ないですが、思わぬチャンスが転がり込んできたと考えてアピールしてほしいですね。
外野は1年時からセンターを中心に守り守備に優れた副将の直井宏路(桐光学園④)、23年春の首位打者で韋駄天の飯森太慈(佼成学園④)の2人が2023年の中心でした。秋はそこに榊原七斗(報徳学園②)と岸本一心(横浜②)が競争を繰り広げたものの、他大学の研究もありいずれも打撃で苦しみました。
特に飯森は左中間を締める極端な飯森シフトを敷かれ、春から秋にかけて大きく数字を落としてしまいました。しかし3年で通算21盗塁とその足は他の追随を許しません。改めて打撃を磨き、明治の攻撃の起点となりたいところですね。打席に入るルーティンの飯森ジャンプにも注目です。
宗山選手の離脱により全体の打力不足を補う期待がかかるのが、1年生の春の開幕戦初打席でホームランを放った瀨千皓(天理③)と春にライトのポジションで打率4割を記録した今井英寿(松商学園③)。
瀨選手は鮮烈なデビューを飾った一方で、その後打撃の確実性に苦しみ昨年はベンチから外れることも多く不本意なシーズンとなりました。日刊スポーツの記事では打席での開きを抑えることでボールの見極めを改善したいと今シーズンに向けた改良ポイントを話しています。
がっしりした体格で身体能力も高い水谷公省(花巻東④)ももっと試合で見たい実戦的な選手。副将も担うなどベンチ内での立ち居振る舞いも含めて注目したい選手です。
毎年の事ではありますが、明治大学の強さの基盤は熾烈な部内競争。まだ公表されていない新入生の野手でもベンチに食い込んでくる選手も出てくるでしょう。2024年も選び抜かれた選手たちが高いレベルで切磋琢磨し、覇権を取り戻すべくチーム宗山が一丸となってリーグ戦に向かっていきます。
2-3.明治大学のスタメン予想
非常に厚い層を誇る明治大学ゆえ理想スタメンだけでも2パターンは作れそうですが、自分ならこんな感じになるのかなというスタメンはこちら。
<理想スタメン>
1番(左)飯森太慈
2番(三)木本圭一
3番(遊)宗山塁
4番(一)杉崎成
5番(捕)小島大河
6番(右)瀨千皓
7番(中)直井宏路
8番(二)友納周哉
9番(投)浅利太門
しかしながら宗山選手の故障が大きく影響。現時点で想定されるスタメンは次のような形になるのではないでしょうか。
<開幕スタメン予想>
1番(左)飯森太慈
2番(中)直井宏路
3番(三)木本圭一
4番(一)杉崎成
5番(右)今井英寿
6番(捕)小島大河
7番(遊)津田基
8番(二)友納周哉
9番(投)浅利太門
実際、誰が出てもそれなりに勝てると思います。ただ、昨秋の轍は踏まないよう、長打を打てる選手をしっかりとスタメンで使っていきたいのは間違いありません。このチームにバントは基本的に必要ないはずなので、アグレッシブな野球に期待しています。
3.早稲田大学
23年秋は最終戦まで優勝の可能性を残していましたが、早慶戦第3試合に敗れ慶應義塾大学のリーグ優勝を見届けることになった早稲田大学。
エースの加藤孝太郎を中心とした投手陣は春から秋にかけて整備され、リーグ戦未登板でも最後のシーズンに懸ける思いの強い4年生投手や力ある1年生投手を積極的に起用するなど小宮山監督がその手腕を発揮しました。
野手は副将の熊田任洋が春・秋ともにOPS.900を超える打力を発揮し気を吐いたものの、チームとしては長打力不足に苦しんだ一年となりました。
24年の主将は印出太一。伝統の一球入魂を胸に20年秋以来のリーグ優勝を目指して戦うシーズンとなります。
3-1.早稲田大学の投手陣
昨年の春・秋の成績は以下の通り。
大黒柱だった加藤孝太郎が卒業し、新エースは昨秋2戦目を任された伊藤樹(仙台育英③)。
1年生で抑えに抜擢されると150km/h前後のストレートとキレ味抜群のスプリットで快投を見せましたが、昨年は肩の痛みも出たこともあり球速も上がらず苦しい一年に。それでも悪いなりに秋は先発の役割を果たし、カットボールとツーシームを有効に使うことで投球の幅を広げたことは伊藤の将来にとってプラスに働くでしょう。
懸念点は3月28日にオープン戦で脚部に打球直撃し緊急降板が伝えられている点。二週間強でリーグ戦復帰できるか微妙なラインでしょう。
2戦目の先発はオープン戦の結果も見ながらの競争となります。
リーグ戦先発経験のある投手では鹿田泰生(早稲田実業④)が有力か。本来ストレートは空振りを取れる球質で、制球を乱すタイプでもないのですが、昨年は春に防御率二桁台。秋は2試合の登板に留まるなど散々でした。しかし、早慶戦での2試合は鹿田らしいポテンシャルの高さも感じさせ、今年に繋がる登板になったはずです。
次点につけるのは越井颯一郎(木更津総合②)と宮城誇南(浦和学院②)。
越井は昨秋にリーグ初先発も経験。強打の明治大学打線を前に打ち込まれるシーンもありましたが、小宮山監督も割り切って経験のために安易には交代をしませんでした。
宮城はリーグ戦未登板に終わったものの、エクステンションが長く、球速以上に打者が差し込まれる反応を見せる好左腕。秋のフレッシュトーナメント明治大学戦では7回1失点の好投を見せています。
リリーフでは復活を期する中森光希(明星④)、一年生ながら昨秋は7試合に登板し無失点の香西一希(九州国際大付②)が先発も見据えつつブルペンに控える形になっていくのではないでしょうか。
特に中森は浦添キャンプ〜3月のOP戦と好投を続けている模様。オフの課題として取り組んだ球速UPも平均値が着実に上がっているということで、リーグ戦での好投に期待です。
また、昨春に152km/hを計測した田和廉(早稲田実業③)は春のリーグ戦終盤に肘の手術の経過良く戻って来ることができれば最後の1ピースになる可能性を秘めています。
ただ、新戦力という点ではフレッシュトーナメントを見てもやや物足りなさがあるのは否めません。齋藤成輝(早大本庄③)や倉光条(早稲田実業②)らのフレッシュトーナメント登板組や、ともにU18代表の新入生である髙橋煌稀(仙台育英①)・安田虎汰郎(日大三①)を中心とした新入生の活躍も求められてきます。
伊藤樹以外に完投できるほどの力ある投手は少なくとも春開幕時点では不在で、リリーフの出番も多くなるはず。継投含めて指揮官のタクトも問われる春になるでしょう。
3-2.早稲田大学の野手陣
昨年の春・秋の主要打者の成績は以下の通り。
新チームの野手の中心は主将で正捕手の印出太一(中京大中京④)と副将の吉納翼(東邦④)。
印出は昨年他大学の研究もあり年間で長打3本と苦戦。3番に座る熊田がシーズン通して結果を残したのと対照的にランナーを返すバッティングが出来ず、今年に懸ける思いは強いはず。守備面では送球の精度が上がり、22年3失策に対して昨年は失策0と成長を見せました。
吉納は年間5本塁打、大学代表候補合宿にも選出され23年は飛躍の年に。甘いボールを打ち損じず弾き返す確度が高くなったという印象。強肩を活かしたライト守備は試合前ノックでぜひ注目して欲しい選手です。
この主将・副将コンビがクリーンアップに座り、打線の中でも軸になります。
一年間1番スタメンの座を譲らなかったセンターの尾瀬雄大(帝京③)は昨春にOPS.914。小柄ながら軸で綺麗に回転し弾き返していく打撃でレギュラーをがっちりと確保しました。守備面でも前の打球に強く、ダッシュしながらの好捕も多く見られました。
昨年はショート熊田ーセカンド山縣で形成された二遊間は再編が予定されています。
昨年サードを守っていた小澤周平(健大高崎③)はしっかりと足を上げてタイミングを取るタイプの強打者で、春秋ともに1本塁打を放っています。高校時代は強打のセカンドとしてプロにも注目され、今年は二塁のポジションを志願しているとのこと。新二遊間の一翼を担うでしょう。
昨年セカンドにコンバートされた山縣秀(早大学院④)は二遊間どちらの動きも良い選手ですが、体幹を活かした送球パターンの多さは遊撃手としてのセンスを感じさせます。打撃面に課題を残すものの、小技を磨き一流のバイプレイヤーを目指したいですね。
ポジションの観点でも展望を見ていきましょう。
印出が座る捕手のバックアップには栗田勇雅(山梨学院④)と吉田瑞樹(浦和学院③)が控えます。特に栗田は同級生の印出の台頭がなければ十分スタメンマスクを任されていただけの守備の安定感がある選手。代打などでの起用が増えることが見込まれるだけにこのオフにどこまで打撃を磨けるかがポイントでしょう。
コーナーポジションに入ってくるであろう選手の一人が田村康介(早大学院③)。秋の早慶戦で代打の少ないチャンスをものにし、スタメンにも名を連ねています。サード守備でも小澤顔負けの前へのダッシュの速さを見せ送球も安定したものがあります。
梅村大和(早稲田実業④)も元々サード守備に定評があったが、昨秋初本塁打を放ち打撃でもアピール。セカンドも含めてポジションを狙う存在です。
分厚い体格と大きな太腿でいかにもパワーヒッターの雰囲気を纏うのが前田健伸(大阪桐蔭③)と岡西佑弥(智弁和歌山②)。ともに変化球対応、速球対応と課題はあるが、一塁のポジションを争っていきます。
早くからベンチ入りを果たすも控えに留まってきた中村敢晴(筑陽学園④)、フレッシュトーナメントやオータムフレッシュリーグで好守と優れたバッティングセンスを見せた岩﨑遼(広陵②)も内野のポジションを窺いたい選手です。
外野は吉納と尾瀬で2枠が埋まるため、残り1枠をかけた争い。
昨年から代走・守備固めで起用されてきた椎名丈(早大学院③)と松江一輝(桐光学園③)は体格もタイプも似ている選手。松江は昨春に1安打を放っており、ベースランニングに非常に優れているためややリードしているか。
昨秋ベンチ入りを果たした石郷岡大成(早稲田実業③)、チームの盛り上げ役の文珠玄基(桐蔭学園④)、昨年もOP戦では積極的に起用され結果も出してきた薗部将大(早大学院④)らが控えています。いずれの選手もこのオフの過ごし方とOP戦での結果でレギュラーを掴むチャンスが巡ってくるでしょう。
各ポジションに昨年からの主力選手が多く入り、チームの計算は立ちやすいチーム。特にセンターラインの守備と打撃を両立できるという強みは他大学に勝る部分と言えます。投手にやや不安を抱える中で、打線がどこまで引っ張っていけるかがカギになっていくでしょう。
3-3.早稲田大学のスタメン予想
ここまで既に書いた慶應・明治と比べて現時点でけが人の情報が少ない早稲田大学。理想に近いスタメンがそのまま開幕のスタメンになっていくのではないでしょうか。
<開幕予想スタメン>
1番(中)尾瀬雄大
2番(三)梅村大和
3番(右)吉納翼
4番(捕)印出太一
5番(二)小澤周平
6番(一)田村康介
7番(左)松江一輝
8番(遊)山縣秀
9番(投)伊藤樹
4.法政大学
23年秋は勝ち点2の4位で、投打に苦しんだ法政大学。
チームを支え続けてきた尾﨑完太と篠木健太郎の両投手が勤続疲労もあり故障と不調に陥り、春は1.47だったチーム防御率が秋は3.43まで悪化。与四球率はリーグ最下位で、打者との勝負以前に自滅してしまうケースも目立ちました。春の篠木健太郎、秋の吉鶴翔英と3年生投手が奮闘しただけに、どちらかのシーズンでは優勝したかった惜しい一年だったと言えるでしょう。
野手では3年生の武川廉がトップバッターに定着。春・秋ともにOPS.800を超えました。春に3本塁打を放った4番打者の内海貴斗が、秋に体調不良から調子を落としてしまったのも不運で、歯車が噛み合わなかった感はあります。
24年は吉安遼哉を新キャプテンに、「結」をスローガンに戦う一年です。
4-1.法政大学の投手陣
昨年の春・秋の成績は以下の通り。
新チームの投手の軸は高校・大学の同級生である右の篠木健太郎(木更津総合④)と左の吉鶴翔英(木更津総合④)。
篠木は22年から大学日本代表に選出されてきた剛腕投手。150km/hを常時超えるスピードボールに加え、昨春はカットボールのキレと精度が上がり、シーズン防御率0.68は圧巻の一言です。
秋は肩の故障で途中離脱し悔しいシーズンとなりましたが、延長10回無失点の慶大戦ではフォークを解禁するなど更なる進化の予感を感じさせました。この冬は敢えてのノースロー調整でシーズンに照準を合わせていきます。
吉鶴は23年春まで起用法が安定しなかったものの、秋に先発中心で運用されるとシーズン防御率1.87の好成績を残し代表候補合宿にも選出。
先発では140km/h前半が速球のアベレージとなりますが、コースを投げ間違えない制球力が魅力です。曲がりの幅の異なるスライダーを武器に26.7K%と非常に高い奪三振率を記録しました。明治大学と早稲田大学の勝ち点を落とした2校には攻略されたため、今年はリベンジを果たしたいところでしょう。
来年以降を考慮しても3年生以下で3戦目の先発を担える投手に台頭してきてほしいチーム事情。
秋のフレッシュトーナメントで東大戦に先発し8回2安打無失点、リーグ戦でも明大相手に堂々たるピッチングを見せた丸山陽太(成東③)は140km/h中盤を計測しスライダーの落差もある好投手。しかし、薩摩おいどんカップで投球中に負傷降板。この春の登板は危ぶまれてしまいました。
リーグ戦経験には乏しいが山城航太郎(福岡大大濠④)も荒削りですがスケール感はチームトップクラス。2月の時点で140km/h後半をマークするなど馬力の高さはチーム屈指のもの。最終年度で捲り一気にドラフト指名も十分視野に入るでしょう。高校時代の同級生であるオリックス山下舜平大の活躍もいい刺激になっているのではないでしょうか。
昨秋4登板の古川翼(仙台育英②)はワンポイントだけでなく長いイニングを任されるようになりたい投手。右打者のインコースの制球を課題として一つ上のレベルに上がるきっかけを掴みたいシーズンです。
リーグ戦未登板でも法政大学には高校時代から名を知られた好投手が多く在籍しています。
4年生の安達壮汰(桐光学園④)は昨年もOP戦から登板を重ね、角度のあるボールをクロスファイアに投げ込みます。大島監督が今年のキーマンの一人に挙げるなどその期待値は高く、今年のオープン戦でも先発登板を続けています。順当に行けば3戦目の先発、篠木・吉鶴のコンディション次第で2戦目も十分に考えられるでしょう。
安達同様、神奈川県の高校野球を沸かせた針谷隼和(桐光学園②)と山口凱矢(桐蔭学園②)の新2年生コンビにも注目したいところ。
特に針谷は #ハリガイタフガイナイスガイ のハッシュタグが既に出来るなど、塙雄裕が卒業で抜けたリリーフの穴を埋める存在として期待がかかります。薩摩おいどんカップからともにリリーフで多くの登板機会を得ており、針谷は鋭いフォーク、山口は力あるストレートを武器に腕を振ります。
フレッシュトーナメントの中心投手だった帯川翔宇(札幌一③)や宇山翼(日大三③)、さらにはオータムフレッシュリーグで好投した野崎慎裕(県岐阜商③)ら力ある投手も控えています。
4-2.法政大学の野手陣
昨年の春・秋の主要打者の成績は以下の通り。
打撃の中心は副将コンビ。
右の強打者武川廉(滋賀学園④)は打球速度が速いプルヒッターで、春から秋にかけて長打も増えました。サード守備も反応良く、球際に強い。今年2月に鹿児島で開催された薩摩おいどんカップではセカンドの守備位置に就くなどそのポジションにも注目です。
もう1人が左の中津大和(小松大谷④)。積極的にスイングをかけるタイプで、三振も多いが昨年3本塁打と身体のビルドアップに伴いパワーもついています。昨秋はリーグトップの6盗塁と走力も十分。注目はその守備位置で、この3年間は公式戦でセンターをメインとしてきたが、高校時代に本職としたショート転向が確定的に。オープン戦含めて遊撃のポジションでの起用が続き、リーグ戦でも待望の「ショート中津大和」が見られるでしょう。
主将の吉安遼哉(大阪桐蔭④)は昨年から正捕手として全試合マスクを被る選手。打撃面では高低の揺さぶりに課題を抱えていましたが、秋の早大戦では本塁打も放つパワーを見せています。今年は主に5番を担う形が想定されるだけに、チャンスでのメンタルという点が大事になってきそうです。
捕手の対抗馬は同級生の田所宗大(いなべ総合④)。吉安同様、高校時代からプロ注目の強肩強打の捕手として名を挙げてきました。打力を活かしたい選手ゆえ一塁のポジションも視野に入れつつ二番手捕手として控える形でしょう。1年生でリーグ戦ベンチ入りした中西祐樹(木更津総合②)、秋のフレッシュトーナメントで4番捕手に座り明大打線を1点に抑えた土肥憲将(鳴門②)らもメンバーに入ってくるでしょう。
内野のポジションは激戦。新3年生に高校時代各チームの正遊撃手だった選手が集中し、そこに外野から中津が競争に加わるためです。
昨秋二塁のレギュラーをほぼ手中にしたのが松下歩叶(桐蔭学園③)。身体の線は細いがバットコントロールに長けており、ヒットゾーンにボールを弾き返す。チャンスに強く秋の9打点はチームトップ。春は本塁打も放っており、このオフにどこまでスイングスピードを上げて臨めるか楽しみです。
秋のフレッシュトーナメント3試合すべてで1番ショートに座った石黒和弥(高岡商③)が次世代の遊撃手候補の実質一番手。リーグ戦でも長くベンチ入りし、試合前ノックでは淀みないプレーを見せていました。
品川侑生(三重③)、増田凜之介(春日部共栄③)らリーグ戦出場経験ある選手も春のOP戦の結果次第でレギュラーの可能性は十分あるでしょう。昨春の途中から二塁のレギュラーを奪取するかに思えた俊足の藤森康淳(天理②)も再度セカンドおよび外野のポジションを視野に入れつつ熾烈な競争が期待できます。
新入生では中村騎士(東邦①)が3月中盤からオープン戦のAチームに帯同し、1番セカンドも担うなど重用の兆し。高校時代は神宮大会含め大舞台でも結果を残してきた期待の内野手が争いに加わると面白くなるでしょう。
外野は卒業イヤーの新4年生に好選手が揃っています。
1年時から出場を続ける西村友哉(中京大中京④)が昨秋初めて打率を3割に乗せました、高校時代の期待値からすれば3年間で長打3本は物足りないものの、最後の年にブレイクを期待したいですね。
打席ではフルスイング、ライトの守備につかせれば強肩を披露するロマン型の大砲候補姫木陸斗(日大藤沢④)は、長打力ならリーグトップクラス。昨秋は4本の二塁打を放ちました。三振も多いですが、そのポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。昨春に長打を放つ役割を担ったのは内海壮太(御殿場西④)。秋は故障で出場無しに終わったが、春には4本の二塁打を放つ右のパワーヒッターで、明大に在籍する弟の内海優太とともに兄弟で六大学を席巻したい。
代走・守備固めでの起用の多かった鈴木大照(明徳義塾④)、血の明法戦で代打タイムリーを放った大沢翔一郎(上尾④)、ショートから外野にコンバートされた浜岡陸(花咲徳栄③)、フレッシュトーナメントでは主軸を担った内山陽斗(天理③)らが続く形。
コンバートもあり各ポジションの争いが激化、リーグ戦で誰がスタメンの座を射止めるのか非常に楽しみな野手陣。東京六大学の記録を見ると打撃に関するチーム記録は法政大学が多く記されており、強打復活となるか注目です。
4-3.法政大学のスタメン予想
野手は力ある選手が揃っています。特に長打あり足ありの中津大和からそのスターティングラインナップは考えていくべきだと思っています。内海壮太の故障明けのパフォーマンスという点が懸念ではありますが、万全であればクリーンアップを任せたいと考えると、理想のスタメンは以下のような形に。
<理想スタメン>
1番(中)西村友哉
2番(遊)中津大和
3番(左)内海壮太
4番(三)武川廉
5番(右)姫木陸斗
6番(捕)吉安遼哉
7番(一)田所宗大
8番(二)松下歩叶
9番(投)篠木健太郎
ただ、諸々の状況を考えると開幕時は以下の形で予想をします。
<開幕予想スタメン>
1番(中)西村友哉
2番(二)松下歩叶
3番(遊)中津大和
4番(三)武川廉
5番(捕)吉安遼哉
6番(一)田所宗大
7番(左)内海壮太
8番(右)藤森康淳
9番(投)吉鶴翔英
5.立教大学
昨年は春・秋ともに5位、秋季リーグ途中には部内の不祥事も発覚するなど明るい話題が少なかった立教大学。
両シーズンともチーム投手防御率が4点台、特に被弾が多く年間22飛弾はリーグ最多。秋は4年生が出場できない時期があったことで下級生に多くのチャンスが巡ってきましたが、長らくエースをはってきた池田陽佑の後継は不在です。一方、野手は世代交代に成功したと言って良いでしょう。特に秋は顕著で、20打席以上経験した選手はすべて3年生以下。それでいながらチームOPS.647はリーグ3位と健闘しました。
24年は田中祥都を新キャプテンに、「結束」をスローガンに戦う一年となる。
5-1.立教大学の投手陣
昨年の春・秋の成績は以下の通り。
新チームの投手の軸は沖政宗(磐城④)が目されます。
昨春は4先発、3年間の通算投球回82イニングはチームトップ。低めのアームアングルから制球良く左右の幅を使い、特にチェンジアップはマネーピッチで打者のタイミングをずらすのに有効です。
東大戦では被安打3の完封勝利、その一方でその後の2先発では6イニング8失点と調子が上がらない日でもゲームメイクできるかがポイントになるでしょう。
次点は塩野目慎士(足利④)。昨春にリーグ戦初登板、秋は2先発含む7試合に登板し防御率3点台。明大戦で打ち込まれたものの、それ以外の6試合では1失点と役割を果たしています。ストレートの平均球速こそ130km/h台後半だが、垂れない球質で秋の奪三振率は26.9K%と非常に高く、球速も上がれば昨年以上の成績がついてくるはずです。
昨年はリリーフ起用が中心だった小畠一心(智弁学園③)も先発に本格転向する可能性のある投手。短いイニングでは球速も140km/h中盤を計測しています。奪三振率も高く、あとは長いイニングを投げ切れるか。オフの間の成長が楽しみです。
リーグ戦での内容はあまり良いものではなかったですが、フレッシュトーナメントでは圧巻のピッチングを見せたのが佐山未來(聖光学院②)。緩急を使いテンポよくボールを投じ、高校時代に甲子園ベスト4に導いただけのモノを見せています。
ここまで挙げた4投手が主に先発/ロングの役割を担っていくのが基本線でしょう。
ブルペンを支える中心になりたいのが三河吉平(春日部共栄④)です。190cm近い長身から投げ下ろすストレートは威力が高く、リーグ戦2登板と経験は浅いが今年を飛躍の1年にしたい。昨秋にリーグ戦初登板を経験した小野瑛一朗(利府④)、竹中勇登(大阪桐蔭③)も今年は稼働を増やしていきたいところです。
気になる選手が、昨秋は三塁手登録となり野手専念かと思われた吉野蓮(仙台育英③)。昨秋0登板だったことで野手寄りに進むと思っていましたが、この春のOP戦では投手としての出場が主に。投手としても昨春は9試合13イニングで防御率3点台、改めて二刀流としての道を歩んでいくのではという期待をしたい選手です。
リーグ戦未登板ですが下級生で期待の出来る投手は多い秋のフレッシュトーナメント早大戦で好投を見せた大越怜(東筑③)、OP戦では先発経験もある平本龍太郎(鎌倉学園③)、チームで貴重な左腕の加門虎太朗(神戸国際大附③)、OP戦で登板を重ねる小林誠明(日大二②)らがブルペンに割って入れるかに注目したいですね。
5-2.立教大学の野手陣
昨年の春・秋の成績は以下の通り。
野手の中心は副将で代表候補合宿にも選ばれた菅谷真之介(市立船橋④)。昨秋は打率.324、OPS.878ともにチームトップ、選球眼にも優れ四球の数が三振数を上回りました。ポジションも一塁・右翼の2ポジションをそつなくこなし、1番~3番いずれの打順でも力を発揮している安定感も心強いもの。
秋に外野のレギュラーの一角を奪取しOPS.864、早大のエース加藤から本塁打も放ったのが桑垣秀野(中京大中京③)です。がっしりとした体格はいかにもパワーヒッターの感があるが、外野のいずれのポジションでも好守を見せるなど俊敏性も備わっています。打線の上位に起用された際に結果を出せなかったが、それは今年への宿題でしょう。
各ポジション別に見ていきましょう。
正捕手候補は2人、副将の戸丸秦吾(健大高崎④)と落合智哉(東邦②)。経験で言えば戸丸ですが、ブロッキングにやや課題を抱え、守備に手いっぱいになってしまうと打撃の調子も落ちてしまいがちという面を克服できるかが焦点に。スローイングは優れているだけに、このオフに守備面でどこまでレベルアップ出来ているかが重要です。フレッシュトーナメントでマスクを被った大山陽生(広陵②)が2人を追う形になるのではないでしょうか。
内野の要の二遊間は、攻守のバランスを考えてゼロベースからのスタートに。
昨年の実績では春に1番サードで固定されていた齋藤大智(東北④)が2本塁打の鋭いスイングと、守ってはセカンドも含めた球際の強さで目立つ選手。守備でもっとも抜けているのは柴田恭佑(東明館④)。下級生からショートを中心に出場してきましたが昨秋はサードとセカンドでレギュラーに返り咲き、打撃面でも3割近い打率を残しました。オープン戦では主に3番を任されるなど、打撃面でも期待されているように感じます。
主将の田中祥都(仙台育英④)も秋はプレー中の衝突事故で棒に振ってしまいましたが、1年生の秋にレギュラーを獲得した野球センスの高さは間違いない好選手。セカンド、サード両睨みで齋藤選手とポジションを争う形に。細身ですが、春には本塁打を放つなど意外なパワーを秘めているのが鬼頭勇気(横浜④)。昨年はシーズン通して遊撃で勝負し、正確なスローイングを見せてきました。
リーグ戦出場は無いが楽しみなのは秋のフレッシュトーナメントで3試合連続安打を放った小原大毅(立教池袋③)。185cmを超える高身長に、身体もがっしりとした大型ショートで、攻守に貢献できる可能性がある選手です。ここに高校時代からNPBスカウトからも注目された下川邊隼人(國學院久我山②)をはじめ、新1年生の小林隼翔(広陵①)、進藤天(山梨学院①)の甲子園出場組が加わっていくと考えると、非常に楽しみな競争となります。
打力を求めたい一塁のポジションでは、オープン戦で4番起用が多い下級生の丸山一喜(大阪桐蔭②)が一歩リード。昨年は1年生ながらリーグ戦出場を果たすなど期待は高く、まだ木製バットと大学野球のレベルの高さに圧されている感はあったものの、高校時代に甲子園を沸かせてきた打力を改めて見せることが出来るか注目です。
争うのは4年生で副将の平野太陽(春日④)。昨秋は21打席で打率.474。代打からの出場でチャンスをものにすると、スタメン4試合のうち3試合でマルチ安打を記録。長打も4本、5打点はチーム2位でとにかく打ちまくりました。
外野は菅谷・桑垣で2ポジション埋まっていると想定すると、残るは1ポジション。
数少ない枠を争う中で有力なのは3年生の鈴木唯斗(東邦③)。昨春にライトのポジションでレギュラーを掴むと、1本塁打含む長打4本。低めの変化球対応に課題を持つものの、その長打と強肩を武器にした守備でチームに大きく貢献しました。秋は故障の影響もあって打率.130と苦しい結果に。復調すれば菅谷を一塁にしてでもライトで使いたい選手でしょう。
鈴木唯斗とレギュラーを争う選手が西川侑志(神戸国際大附③)と山形球道(興南③)の同級生コンビ。
西川はフレッシュトーナメントでは4番を担うクラッチヒッターとして活躍、昨春にレフトのポジションでレギュラーを掴むかに思われましたがレベルの高いリーグ戦では打撃不振に。レギュラー返り咲きに懸ける思いは強いでしょう。山形も昨年出場機会を得たものの掴み切れず。しかし薩摩おいどんカップでは2本塁打など長打が出ており楽しみな存在です。
主に代走から出場した北田峻都(報徳学園③)、薩摩おいどんカップではスタメン出場で結果も残した新村啓太(東海大高輪④)らがOP戦での結果次第でそれに続く立ち位置になっていく構図になるでしょう。
打力ある選手が各ポジションに出てきて、あとは守備も含めたディフェンス面でどこまで粘れるかが焦点かと思います。
5-3.立教大学のスタメン予想
OP戦結果を見ていると主力選手での大きな故障離脱は防げており、理想に近い形で開幕のスタメンを組めそうです。
<理想スタメン>
1番(中)鈴木唯斗
2番(遊)柴田恭佑
3番(右)菅谷真之介
4番(一)丸山一喜
5番(左)桑垣秀野
6番(二)齋藤大智
7番(捕)戸村秦吾
8番(三)田中祥都
9番(投)沖政宗
投手は元プロの戸村健次氏のコーチ就任を追い風に巻き返しを。特に慶大には連敗が続いており、このカードで今年は浮上のきっかけを掴みたいところです。打ち勝つ野球と粘り強い投手陣で勝利を目指します。
6.東京大学
昨秋は法政大学に勝利し、21年シーズン以降は3年連続で勝ち試合を挙げるというタスキをつないできた東京大学野球部。
2023年は4年生の松岡由機・鈴木健の2投手が奮闘したことで秋にチーム防御率4点台という東大としては稀に見る好成績を残し、多くの接戦を演じてきました。
野手では2年生の酒井捷が17年秋の楠田創以来となるベストナインを受賞、大学代表候補合宿にも招聘されるなど気を吐きましたが、チームOPSは.502。1試合平均打点は1.8点と得点力不足に泣いた形になりました。
24年は藤田峻也を新キャプテンに、「突き抜ける」をスローガンに戦う一年です。
6-1.東京大学の投手陣
昨年の春・秋の成績は以下の通り。
新チームのエース候補は新4年生の平田康二郎(都立西④)でしょう。
昨秋は第2試合の先発も任されるなど飛躍の一年となり、年間で34回を防御率3.93。ぴゅっと腕が出てくるような独特なフォームに、緩急を武器にしたピッチングで安定したゲームメイクを期待できる好投手。スライダー、フォークと落ち球はしっかりと空振りが取れるもので、あとはフォーシームがどこまで威力を発揮できるか。
平田に次ぐ投手では、下級生時からリーグ戦を経験し140km/h前半のボールも投じる二刀流の鈴木太陽(国立④)。
制球と合わせやすいフォームに課題を抱えているものの、東大らしからぬ大きな馬力を感じる体つきにはロマンがある投手。OP戦ではフォークが強力な武器になり、1試合7奪三振を奪った試合も。打者としても今年2月に開催された薩摩おいどんカップのJR東日本との試合でツーランホームランを放つなどそのパワーは魅力です。
昨年春前に故障しシーズンを棒に振ってしまった中村薫平(堀川④)も下級生時から期待値は高く、体格は平田・鈴木と比べても見劣りしない投手。縦割れのカーブはストライクゾーンでもボールゾーンでも勝負できる変化量を誇ります。昨年の三田村優希のように、今季の投手陣の中ではダークホースとして期待がかかります。
昨春にリーグ戦初マウンドを経験し早稲田戦で好投を見せたアンダースローの渡辺向輝(海城③)も先発候補。緩急を使い、昨秋のフレッシュトーナメントでは早稲田打線を封じ同トーナメントでの勝ち試合の立役者の一人になりました。
昨秋リーグ戦初登板を1イニング0封した貴重な左腕の双木寛人(都立西④)はOP戦では先発登板も。リーグ戦ではブルペンを支えることが多くなるでしょうが、3戦目に行くことがあれば思い切った先発登板も可能性として出てくるのではと期待しています。
リーグ戦未登板ですがの森岡舜之介(渋谷幕張④)もややアームアングルを上げており、横の幅だけじゃない勝負の仕方が出来るようになっています。OP戦で登板を重ねる増田滉生(城北③)、持永悠介(駒場東邦③)もリリーフとして出番を増やしていきたい立ち位置でしょう。
楽しみなのはフレッシュトーナメントで存在感を示した新二年生。特に右腕の江口直希(海城②)と山口周平(三重②)はともに180cmを超える体格に恵まれ、昨年時点で130km/h中盤のストレートを投じ落ちるボールも得意としています。今年のOP戦次第ではスターターとしての起用も十分可能性があるでしょう。
ゾーンの横幅で勝負できるスリークォーターの前田理玖(熊本②)も面白い存在。腕の長さからタイミングの取りにくい左腕の近藤克哉(筑波大附②)や、中学時代は新潟県内の強豪チームで4番エースだった横山景一(新潟②)が故障明けから間もない中で130km/h中盤を計測するなど多士済々。
松岡由機、鈴木健と昨年チームの左右の柱として活躍した投手が卒業し実績ある投手が少ない分、新戦力の台頭に期待したいですね。
6-1.東京大学の野手陣
昨年の春・秋の成績は以下の通り。
野手の中心は酒井捷(仙台二③)。23シーズンは年間でOPS.836、本塁打も放ち東大の切り込み隊長に定着しています。
極端なプルヒッターで真ん中からインコース寄りを得意としますが、アウトコースの見極めにも優れているため調子の波が少ない好打者です。足も速いですが、盗塁の技術という点ではまだ向上の余地もあり、伸びしろという面でも期待できるでしょう。
代表候補合宿で他大学のトップ選手と交流し大きな刺激を受けたはず。2年後の東大野球部初の野手でのプロ入りを目指し攻守にさらに突き抜けていきたいですね。
副将の山口真之介(小山台④)は春の立教戦で起死回生の同点満塁弾を放ったことで脚光を浴びましたが、秋も打率.273に加え出塁率は.370と好成績を残しています。野球部には珍しい学問でも多忙な薬学部で、まさに文武両道と言うべきクールなプレイヤーです。
酒井と山口の高い出塁率を期待できる選手に1・2番を担わせ、中軸は多少の粗があっても長打を狙えるバッターを配置していきたいところでしょう。
昨秋の勝ち試合で決勝打を放った勝負強い内田開智(開成④)、長身でしなやかなバッティングを見せ昨秋は2番打者にも起用された中山太陽(宇都宮③)らが候補に挙がります。
特に内田の打撃技術は非常に高く、今年の東大の中では酒井山口とともにチームを引っ張る立ち位置で、OP戦ではホームランも放つなど絶好調。サード守備も板につき、攻守でアグレッシブなプレーを期待しています。
守備位置の視点で言えば、内野の各ポジションは熾烈なレギュラー争いが繰り広げられます。23年の正遊撃手は青貝尚柾(攻玉社③)。強肩を武器に安定した守備を見せましたが、年間で打率.114と打力には課題も。メインはサードでの起用だったものの、遊撃の守備でも堅実なプレーを見せた主将の藤田峻也(岡山大安寺中等④)がレベルアップ。打撃面では小技に長けており、下位で三振せずインプレーを増やすことが求められるでしょう。
23年夏に行われた七大戦で本塁打を放った井之口晃治(ラ・サール③)、昨秋1年生ながら出場を果たした小村旺輔(私立武蔵②)と堀部康平(県立船橋②)の両名も守備の動きが良くチャンスをうかがいます。堀部選手は足が使える上に打撃に磨きがかかり、リーグ戦でも試合出場を増やしていく一年になるでしょう。
コンタクトに長けた門田涼平(松山東②)も二遊間を本職とし、代打から機会を狙う形に。いつ観に行ってもヒットを打っているイメージの選手で、内田選手のようなクラッチヒッターになっていくのではと期待を寄せています。
ヒットメーカーだった大井温登が卒業した一塁の守備位置は、副将の西前颯真(彦根東④)、フレッシュトーナメントで4番を担った工藤雄大(市川③)の2人を中心としつつ、堀部・門田の2選手も加わった競争が予想されます。
正捕手争いも見どころ。打力に定評があり23年秋のOP戦では本塁打も放った副将を務める府川涼太郎(西大和学園④)と、過去の東大に栄光をもたらしてきたOBを多く輩出してきた湘南高校出身で、22年のフレッシュトーナメントでは1年生ながら本塁打を放った杉浦海大(湘南③)の2人が基本線。ここに内野手から捕手へ昨秋からコンバートされた明石健(渋谷幕張②)が成長株として食い込んでいきます。キャッチャーという特殊なポジションゆえ、攻守の総合力で判断する形になる。
外野はリーグ戦出場経験のある榎本吉伸(渋谷幕張③)が俊足も含めてアピール。リーグ戦で安打こそないものの、いい当たりが野手の正面を突くシーンが目立ち、打席数を与えれば結果は付いてくるでしょう。下級生では伊藤滉一郎(県立千葉②)が打球勘良く安定した守りとバットコントロールで頭一つ抜けている印象。開幕戦からスターティングラインナップに名前を連ねてくる可能性もあるのではないでしょうか。
4年生で「突き抜け長」の橋本崚人(修猷館④)は守備でアピール、下級生時にはフレッシュトーナメントで本塁打を放った松原周稔(土佐④)がどこまで状態を上げていけるか。三塁をメインとしていた大原海輝(県立浦和③)も持ち前のフルスイングから生まれる長打が望め、外野も含めポジションを窺います。
2021年から東大野球部はチームカラーとして足を使うことをアナリスト含めて取り組み、発信もしてきました。バントによるアウトと進塁の引き換えよりも、連打の生まれにくい東大野球部では盗塁による利得はそのリスクを上回るという考え方はもっともらしいものでしょう。
しかし、昨年は年間でリーグ2位タイの23盗塁だが、21年は43盗塁、22年は35盗塁と年々数を減らしています。他大学の対策も勿論大きな要素ですが、やはり純粋な打力では劣る分、盗塁を果敢に試みていくDNAは継承してほしいところ。大きな助けになる可能性があるのが助監督に就任した石井清氏。昭和55年秋季リーグでは東大野球部としてのシーズン最多盗塁記録(9個)を保有している同氏のもと、作戦面でも「突き抜ける」ことが出来るのかは玄人向きの見どころとして挙げておきたい見どころです!
6-3.東京大学のスタメン予想
一番・二番に出塁率の高い2選手を置き、クリーンアップは長打重視。先制点を取ることで試合を優位に進める試合展開が理想と考えると、スタメンはいい選手を前から詰めて配置する形がベストでしょう。
<理想スタメン>
1番(中)酒井捷
2番(二)山口真之介
3番(左)中山太陽
4番(三)内田開智
5番(一)西前颯真
6番(捕)府川涼太郎
7番(遊)藤田峻也
8番(右)榎本吉伸
9番(投)平田康二郎
ただ、オープン戦で酒井選手の出場がなく、開幕時点で即スタメンというのはあまり現実的でないように思われます。
<開幕予想スタメン>
1番(右)榎本吉伸
2番(二)山口真之介
3番(中)中山太陽
4番(三)内田開智
5番(左)鈴木太陽
6番(一)西前颯真
7番(捕)府川涼太郎
8番(遊)藤田峻也
9番(投)平田康二郎
開幕から二刀流の鈴木太陽選手が打者としてもクリーンアップを担ってくるのではないかと期待しています。一番打者に誰が起用されるのかという点も大きな注目ポイントでしょう。
7.さいごに
今年も大学野球の季節がやってきました。ここまで取り上げたどの大学も地力がある素晴らしいチームです。歓声が戻り、試合の中でこだまする応援も大きな見どころ。
まだ東京六大学野球に足を運んだことのない方も、このnoteで少しでも興味が湧いたのであれば是非一度神宮球場へお越しください!きっと楽しい素敵な空間に浸れると思います!
選手・スタッフ・ファンのみなさま、今年もよろしくお願いいたします。
◆出典
写真はすべて筆者撮影のもの