【どこよりも詳しい】スワローズ新外国人ミゲル・ヤフーレ投手徹底分析
こんにちは、シュバルベです( ✌︎'ω')✌︎
昨年の12月7日に東京スワローズに新たに加わったミゲル・ヤフーレ投手獲得の報が入りました。
忙しくてさぼっていましたが、キャンプも始まるので詳しくヤフーレ投手について調べていきたいと思います。
背番号は「99」。昨年エスピナル投手が着けていたラストナンバーとなります。
23年にディロン・ピーターズ投手、キオーニ・ケラ投手、ライネル・エスピナル投手の3投手をリリースしており、5位に沈んだチームの浮上にはヤフーレ投手の活躍も必要になっていくかと思われます。
本noteではミゲル・ヤフーレ投手がどんな投手か、そしてチームにどうフィットしていくかを考えていきましょう。
0.ミゲル・ヤフーレ投手のプロフィール
ベネズエラ出身のミゲル・ヤフーレ投手は、身長185cm体重97kgのMLBでは平均的な体格の右投手です。
1998年5月1日生まれの25歳。スワローズの同年齢は木澤投手、山野投手らでとても若いですね。昨年途中加入したエルビン・ロドリゲス投手は1つ上ですが、同じスペイン語圏出身ゆえ同年代でコミュニケーションには困らないでしょう。
ミゲル・ヤフーレ投手は2015年にヤンキースに入団。ルーキーリーグから主に先発投手としてキャリアをスタート、2017年にトミー・ジョン手術を挟むも2018年にはシングルAで14先発。その後も登板を重ね、コロナ禍でマイナーリーグが開催されなかった2020年にMLB初登板。
ここ数年間で来日する投手の多くはこの2020年シーズンにMLB昇格が出来ておらず、この時点ではヤフーレ投手はプロスペクトとしての期待を背負う選手でした。実際に、この年のベースボールアメリカ紙ではヤンキースのプロスペクトランキング7位に入っています。
2021年にトレード絡みでパイレーツに移籍、22年にはジャイアンツへ移りそれぞれMLBでの登板を数試合経験しましたが定着は出来ず。直近の2023年はメジャー昇格できないままA~AAAで1年間を過ごしました。
スワローズとは推定年俸55万ドル(約8100万円)プラス出来高払いとのこと。
奥村国際グループ担当部長は、「先発候補で、日本型の投手に育てるニュアンスもある。大きくて球が速いという素材型じゃなく、早く日本に順応できそうな素材型。球種が多くてクイックもできる。性格も良い。できれば長くやって欲しい希望はあります」とコメントと期待を寄せています。
1.ミゲル・ヤフーレ投手の投球成績
ここから具体的な成績・数字を見て行きましょう。
直近、2023年のマイナーリーグAAAでのヤフーレ投手の登板成績は次の通りです。
16試合に登板、そのうちの13試合が先発での起用となりました。防御率は5.97と見栄えが悪いのですが、所属しているPCLリーグはリーグ1位のチームでも防御率4.58。リーグ最下位のエルパソに至ってはチーム防御率6.52で、全10チームすべて年間150試合前後で150本塁打以上を記録している打高リーグです。
奪三振率22.4K%は優秀な数字で、与四球率10.8BB%は平凡な数値。AAAでの登板では奪三振数が与四球数の倍以上(K/BB=2.07)ある点はスタッツとして見栄えがいい部分となっています。
過去3年間のMLBおよびAAAの成績はこちらです。
MLB登板時とAAA登板時で比較すると、奪三振率に明らかな差があることが分かります。AAAでは奪三振率が直近3シーズンすべて20K%以上を記録している一方、メジャーでは10K%台に留まっています。
また、3年とも小さな怪我での離脱を起こしており、10先発は見込めるもののフルシーズン怪我無く完走した経験は乏しいことから、その年齢も考慮した上でコンディション面には注意が必要でしょう。
2.ミゲル・ヤフーレ投手の投球内容
続いてはミゲル・ヤフーレ投手の具体的な投球内容について見ていきましょう。
2023年はMLBでの投球が無いため、2022年にMLBで投じたボールは次のようになります。
持ち球は多彩で、フォーシームの割合は30%と低く、オフスピードボールも駆使しながら奥行を使っていくタイプの先発型投手となります。
フォーシームのアベレージは149km/hと来日する外国籍選手の中でもやや遅い部類。同じファストボール系統のシンカーとともに被打率が高く、空振りが低いことで2022年のMLB登板では速いボールが打者にとって全く嫌がられなかったという点で苦戦を余儀なくされました。
一方、変化球は優秀なスタッツを記録しています。
2番目に多く投げているカーブは平均132km/hと速いカーブで、投球割合の26%を占めていますが被打率はわずか.077。空振り率36%と非常に有効なボールとなっています。初球に投じる割合も30%でカウント球にすることも出来るし、2ストライク時には実に38%までシェアを上げ、決め球としても使えるヤフーレ投手にとってのマネーピッチです。
続いてチェンジアップ。平均143km/hとやや速いチェンジアップで、投球割合の19%を占めています。特に左打者に対してはフォーシームに次ぐ28%の投球割合を占めており、外に逃げる落ち球として使っています。ただし被打率は左打者に4割近く、逆に右打者にはヒットを打たれていないボールで、その使い方には検討の余地がありそうです。
スライダーは投球割合の10%程度で、球速帯はカーブとほぼ同じ。空振り率が非常に優秀で、右打者に対しての決め球の一つとして使っています。同系統ですがカットボールは被打率6割とよく打たれており、左右どちらの打者に対しても機能していません。
ただし、特にスライダーとカットボールの使い方に関しては注意が必要です。ヤフーレ投手の場合、22年4月~6月と、怪我での離脱明けの8月~9月、そして23年AAAでの球種割合、これら3つの期間で大きく異なります。
こちらが期間別の球種割合です。
22年の怪我での離脱明けはスライダーとシンカーは投げず、チェンジアップ・カーブ・カットボールの割合を大きく増やしています。
実はこの球種の組み立ての期間による違いは23年のAAAでの月別にも現れており、7月~8月はスライダーを全体の15%近く投じていますが、9月はわずか3%に減らしています。後述しますが、ヤフーレ投手のスライダーは横への曲がり幅の大きなスイーパーも含まれ、少なからず投げるのに負担が大きそうなケースも見受けられます。シーズン後半にスライダーの割合が減っているのはそこも影響しているのかなと推察しています。
先のグラフの通り、ヤフーレ投手のピッチング構成はフォーシームを軸にしたものではなく、最も信頼を置いているのはカーブボールでこのボールは常に投球割合の30%近くを占めています。
マスクを被っていくことになるスワローズの捕手陣もキャンプ~OP戦にかけてしっかりとコミュニケーションを取り、フォーシームを必ずしも主としないピッチングデザインを考えていく必要があるでしょう。
ヤフーレ投手の具体的な投球の質を見ていきましょう。2022年に投じたボールの変化量はこちら。
フォーシームは平均してシュート成分18cm、ホップ成分42cm。MLBでは打たれていたこのボール、簡単に行ってしまえば変化量・回転軸ともに平凡です。球速も出ていないということで、バッターにとってはケアしていなくても対処のできるボールだったのでしょう。
セリーグに所属していた投手との比較はこちら。
元スワローズのA.J.コール投手、ケラ投手と比較的近しい変化量で、日本でもこのボールで力押しして打者を打ち取れるかというと厳しいと考えるべきかなと思います。
2番目に多く投じているカーブは平均してスライド成分17cm、ドロップ成分36cm。落差が大きく、またボールの精度も高いことがチャートから読み取れます。
セリーグに所属していた投手との比較はこちら。
元広島のアンダーソン投手のカーブに変化量は近く、回転軸もほぼ同じ一方、球速はヤフーレ投手の方が10km/h近く速いのでこれだけの落差を一定のスピードで投げられることで打ちにくいボールになっていると考えられます。
元スワローズのケラ投手、元阪神で今年から巨人に加入するカイル・ケラー投手もともにカーブを強みとする投手ですが、彼ら以上に落差は大きく球速は出るというのはかなり期待が持てます。回転数は平均で2,665回転とスピン量多く、来日外国人選手で同等の回転数のカーブを投げる投手にはニック・マルティネス投手がいました。
余談ですがウェンデルケン投手の投げているボールの異質さも先のフォーシーム含めて浮き彫りになりますね。
先の投球チャートの中で異質なのがスライダーです。変化量が横幅・縦幅ともに広く分布しており、スイーパーと言われるような横に大きく曲がるものも投げていることが分かります。まんべんなく各試合で変化量のふり幅が広くなっていることから、このスライダーの投げ分けは意図的であると考えて良いでしょう。
動画を一通り見て、やべーなというスライダーはこちら↓
こんなスイーパーが常時操れたら打てないよ、って感じですが、大谷翔平選手然り、高速度かつ横への大きな曲がりの伊藤智仁コーチ的なスライダーはやはり安定性と肘の耐久性に影響を及ぼしていると考えるべきでしょう。
最も、コーチにまさに伊藤智仁氏がいる環境ではあるので、このスライダーの使い方や投げ方についてはキャンプで議論していくことになるのではないかと思います。
キャンプに行かれる方はそんなところにも注目すると面白いかもしれませんね。
3.ミゲル・ヤフーレ投手に求められる役割
最後に、ミゲル・ヤフーレ投手がスワローズで果たす役割についてですが、非常にシンプルで先発投手としてシーズンを完走すること、に尽きます。
これまでの実績として、やはりフォーシームの球速・球威不足は否めず、年間で大きなプラスを1年目から生むことは恐らく難しいと予測されます。ただ、チームの平均的なレベルでイニングを一・二軍問わず稼いでくれる投手というのは重宝されます。
昨年はケラ投手が一軍登板なし、エスピナル投手も二軍がメインでその消化イニング数もあわせて50イニング程度でした。これではスワローズのほかの投手にしわ寄せが行ってしまいます。
何よりも故障離脱は避けたく、過去の経歴からも小さな怪我が出ることは多少念頭に置きつつも、長期離脱を避ける運用はチームに求められるでしょう。
ヤフーレ投手に求めたい数字としては、
▸ 一・二軍合わせて80イニング以上の消化
▸ 一軍での投手WAR0.6以上
▸ 2球種以上でPitch Value+1.0以上
の3つを挙げたいと思います。
2章目の半ばで既述したように、ヤフーレ投手の投球の軸はフォーシームではないという点はバッテリーの認識としてすり合わせが必須な項目で、マネーピッチであるカーブに加えてもう1球種、NPBのボールで安定した変化量と球質を出せる球種を探していくことになるでしょう。
やはりアメリカでの防御率の見栄えが悪く、他球団が160km/h近いボールを投げる投手を獲ってくるためスワローズファンの期待値は高くないように思いますが、細かく見ていくと結構面白い投手なんじゃないかと思っています。投げ方もそこまで癖がなく、クイックも仕込めばまだ短縮できそうな感はあります。
昨年途中で来日したエルビン・ロドリゲス投手の一軍投手WARは+0.6。30イニングちょっとでこの数字だったことを考えると、ヤフーレ投手は試合当たりのクオリティは少し落ちてもイニングでカバーし同等以上のWARを積めるといいですよね。
ピーターズ投手の穴を埋めるレベルならチームとして大いに助かる結果になるでしょう。
最後にヤフーレ投手のコメントと本日の来日の報で締めたいと思います。
活躍を期待しましょう!!Go, Jajure!!
■出典
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