【OAK】今オフ獲得した選手たち(投手編①)
明けましておめでとうございます。新年一発目の記事はタイトルにもある通りこのオフに獲得した投手についてとなっています。なお、メジャー契約で加入したFAについてはNote企画OAK担当の先輩であるもーさんの記事とほぼ同じ内容かつ情報量の面で下位互換なものを書くことになりそうですのでここでは飛ばすことにします。もしトレバー・メイとドリュー・ルチンスキについて知りたいという方がいたら以下の記事をお読みください。
トレード加入
メジャー契約のFAについてはサボり、もとい割愛させていただいたのでここからは真面目に書いていこうかと思います。
チャド・スミス
20年ドラフト2巡目の投手プロスペクトであるジェフ・クリスウェルとのトレードでロッキーズから獲得した27歳の右投げのリリーフ。本当に名前を知らない選手だったため、各種メディアで最低でも中位プロスペクトとして評価されているクリスウェルを対価で出したことには驚きました。
その特徴はなんと言ってもシンカーを多用するスタイルに由来するゴロ率の高さで、FanGraphsによればロッキーズのAAAでは2年連続で30イニング以上投げてゴロ率60%以上をマークしています。ロッキーズのAAAは打高で知られるパシフィックコーストリーグでも最悪のチーム防御率6.89をマークしており、パークファクターなどを見てもかなりの打者有利の環境です。その中でこのゴロ率の高さが有利に働いたのか2年連続でスミスは防御率3.1以下という好成績を残しています。
球種は先述のシンカーとジャイロ成分多めのスライダーがメインで、少ないですがチェンジアップも投げます。特にスライダーはWhiff%(スイングされた時の空振り率)が56%とサンプルが少ないながらも優れた数値を記録しており、決め球として十分な働きをしてくれるのではないでしょうか。シンカーは最速98.7マイル、平均95.6マイルとそこそこスピードが出ているものの同時によく打たれている球種でもあり改善が必要そうですが、現状でも打球角度を抑えることには成功しておりそこまで悪い球種でもなさそうです。ちなみに変化量で見るとシンカーはマーリンズのパブロ・ロペス、スライダーはタイガースからブレーブスにトレードされたジョー・ヒメネスが近いようです。
スミスにとって最大の課題は制球面で間違いありません。2022年シーズンのメジャーでの15登板ではゾーン率が40%程度(メジャー全体では48%)で、BB%も17.6%というかなり高い値。低めを狙ったシンカーが浮いて痛打されるシーンなどもありました。マイナーでもBB%が10を超える年が多く、数年前からずっとコントロールやコマンドは課題のままのようです。改善できなければ安定した活躍は厳しいでしょう。
とはいえ、マイナーオプションも2つ残しており既に十分戦力にはなりえます。90マイル台後半を出せるスペックからもある程度アップサイドはあるため、頭の片隅に置いておきたい選手でしょう。
カイル・マラー
正捕手ショーン・マーフィーのトレードの対価の中心としてオークランドに来たプロスペクトで、移籍前はMLB公式のプロスペクトランキングにおいてブレーブス傘下1位、移籍後のアスレチックス傘下5位にランクインしています。Baseball Americaではトップ100にランクインしたこともあるようです。
マラーは最速で100マイルにも達する、平均94マイルの速球と20年に投げ始めたというスラット系のスライダー、そして元々決め球だったカーブを中心としてそこにチェンジアップを混ぜて抑える投手です。特にスライダーは空振りを量産でき、ここぞというときに頼れる球種だと思います。一方でフォーシームは回転効率が低く、球速の割にはバリューが出にくい球種のようです。このままではスライダーに頼りがちになる恐れがあり、それではなかなか先発で活躍するのは困難になってしまうのではないでしょうか。シンカーへの切り替えを含め、武器となり得るスピードを持つ速球をどう改良するかはカギとなりそうです。個人的には球質改善をするなら22年のマット・ムーアのようなボールを目指してほしいなと思っています。
マラーにとって解決すべきもう一つの課題が制球です。21年・22年ともメジャーでは四球率13%を記録しています。これは先発として見ていくには少し不快な数字です。近年はマイナーでも近い数字を出すことが多いものの、22年はAAAで7%に抑えることに成功しており、改善の兆しは見せているのかもしれません。
左の先発で球速を出すことができ、優れた変化球を持っている選手は貴重ですから是非とも戦力化してほしいところ。既に25歳でマイナーオプションも残り1つと残された時間はあまりない中で今後どう成長するかに注目です。
ちなみに左投げ右打ちで、19年と21年にマイナーでそれぞれ2打点を記録、メジャーでもヒットを打った経験があります。
フレディ・ターノック
マラー、そして次回扱うサリナスと共にマーフィーのトレードで入団した投手。こちらも速球の球速が目を引く選手で、メジャーにも昇格して22年に1試合にリリーフ登板しています。
スピンの豊富な90マイル台後半の速球はかなり強いカットホップ系で、このためターノックはキャリアを通してずっとフライ率が高い投手になっています。変化球はベストピッチのチェンジアップとカーブ、そして最近投げ始めたというスライダーですが、どれもまだ発展途上のようです。メジャーではリリーフ登板かつ対戦した3人の打者が全員左打者ということでチェンジアップしか投げていません。マイナーでの投球映像でもチェンジアップを決め球としている様子が見て取れます。
制球面では、細かいコマンドはないもののある程度ゾーンに投げられるコントロールはあるとのこと。先発としてメジャーで投げるにはスライダーかカーブを磨かなければなりませんが、24歳という年齢や既にメジャーの40人ロスターにいることを考えるとリリーフ転向も有力な選択肢になってきそうです。
本当は一記事で主なマイナー契約のFAまで全員書ききる予定でしたが、マーフィーのトレードで入団した最後の投手であるロイバー・サリナスとマイナーFAは次回以降に回します。お読みいただきありがとうございました。