【ATH】ストーブリーグ、着火!
ワールドシリーズも終わり、オフシーズンが始まりました。来季のチームを作る大事な時期ですし、注目したいところ。今回はそんなオフシーズンのアスレチックスの動きを考えてみたいと思います。
補強ポイント
まずは今オフ想定される動きと補強ポイントを考えていきます。まず、オフシーズン全体の方針として、フォーストGMは地元紙のインタビューで「FAよりもトレードでプロスペクト等を放出して選手を獲得することに重点を置く」との考えを表明しています。この発言の背景には、来季から3年間マイナー球団の施設を間借りするためFA選手に選ばれにくいという考えがあるのでしょう。
中継ぎ
アスレチックスは野手もほとんどのポジションには一応レギュラー候補がいるうえに先発も枚数だけは足りている状態です。したがって、まず挙がる補強ポイントは何よりもまず、試合をまともに進行させ終わらせるためのブルペンの整備です。
今季頼りになった選手で来季開幕からいるとされるのは再契約が報じられた変則左腕のT.J.・マクファーランド、マイナーFA上がりのタイラー・ファーガソン、ミシェル・オタニェス、クローザーのメイソン・ミラーだけです。あとは頼りない選手と先発からあふれた選手しかいないという状態なので最低でも1枚はミドルクラス以上のリリーフが欲しいところ。
とはいえ、先に挙げたメンバーが今季のパフォーマンスを保ってくれれば難しいシチュエーションはなんとかなります。クローザーやセットアッパー級の確保は不要でしょう。
近年のFA市場では上位の中継ぎは年俸が高騰しやすいですし、アスレチックスの置かれた状況を考えればなおさら有力なFA選手の獲得は難しくなります。したがって、トレードからの獲得から考えてみたいところです。
とは思ったものの、アスレチックスがオフシーズンにトレードで若手を放出して中継ぎを獲得した例はほとんどありません。
クローザークラスは価値が高騰してしまうため現実的な候補にはなりませんし、どのチームも既に戦力化できていてアスレチックスに手の届く価格帯の投手は自チームで保有して夏場の売却を目指したいところだと思います。安価なFAのほうが現実的な獲得候補になると思います。
先発投手
アスレチックスにとって中継ぎよりも苦労したのが先発投手です。エース級は不在で、飛躍が期待された若手たちも故障や不振が相次ぎ結局ゲームメイカーのJP・シアーズとミッチ・スペンスの次に挙がるが登板ごとの当たりはずれが大きいジョーイ・エステスという状態。表ローテクラスの先発の補強はマストです。
表ローテクラスとまでは行かないまでも、シアーズくらいのパフォーマンスが期待できる選手という観点ではトレード市場にもいないことはないですしこちらはトレードで獲得を狙うことになるでしょう。
三塁手
野手陣の中で課題となるのがレフトとサード。レフト候補は割とFA市場にいっぱいいるので割愛させていただき、今回はサードにフォーカスを当てます。
来季に向けて、チーム内で候補となるのはマックス・シューマン、ダレル・ヘルネイズ、ブレット・ハリス、マックス・マンシーの4人。マンシー以外の3人は今季メジャーデビューしており、シューマンはショートで一定の成果を挙げましたがそれ以外はなかなか厳しい状況。未デビューのマンシーに賭けるのはあまりにもリスキーです。
FA、トレード市場とも手薄ではありますが、有力な補強候補となるのはホルヘ・ポランコあたりでしょうか。セカンドとして狙う球団もありそうなのでなかなか簡単ではなさそうです。
さて、以下ではオフシーズンに行われる細々とした動きについて書いていきます。
ロスター整理
オフシーズンに入って最初に行われるのが、補強や後述するルール5ドラフトのためのプロテクトを見据えた枠空けです。特にアスレチックスのような再建チームには必ず来年までチームに置いておきたいほどではない選手も多くいますので、どの選手が残るかは見どころとなります。
外された選手たち
全体的に妥当な人選ではありますが、アダムスが外されたのは驚きでした。アダムスはいわゆる便利屋的な役回りで活躍し、8月中旬に肘の負傷でシーズン終了するまで56試合に登板しておりチームにとって間違いなく大きなピースです。この動きを見ると、肘の具合があまり良くないのかもしれません。
サリナスは正捕手のショーン・マーフィーとのトレードでブレーブスから加入したプロスペクトの一人ですが、今季は7月に肩のケガでシーズン終了。来季もかなりの出遅れが予想されること、昨オフに太ってしまった自己管理面、課題のコントロールが一向に改善しないことから放出は頷けます。古巣で復活することを祈りましょう。
獲得した選手たち
当然他球団もロスター整理のために選手をたくさんウェーバーにかけているので、アスレチックスもそこから2名の右投げの中継ぎ投手を獲得しています。
1人目がレイズから獲得したジャスティン・スターナー。今季メジャーデビューした28歳のオールドルーキーで、メジャーでは2登板に留まりましたがマイナーで34試合に登板して防御率3.28、三振率も31%と優秀な成績を残しています。
オーバースローからホップ成分の強いフォーシームとソフトカッター、そしてこのアングルにしては珍しいスイーパーを投げるフライボーラーであるスターナー。制球も悪くなさそうですし、健康ならばウェーバーで獲得できたのは相当美味しいと思います。
2人目がマーリンズから獲得したアンソニー・マルドナードです。マルドナードは今季メジャーで16試合に登板し防御率は5.68。しかし被打球成績などは悪くないためこの成績は単に不運だった可能性もあります。
回転効率が低くほぼ真縦に落ちるスライダーとややフォーシームっぽい変化のシンカーにハードカッターを織り交ぜる投球スタイルで、スライダーは左右を問わず空振りを奪うことができ、2種類の速球も打球速度を抑えるのに有効です。マイナーオプションも2つ残っているため、リリーフの層を厚くするのに有効な補強と言えるでしょう。
ルール5ドラフトに向けたプロテクト
ルール5ドラフトとは、ドラフト会議と聞いてイメージされるような大学生や高校生を指名するドラフトとは異なりマイナーリーガーたちを対象としたドラフトです。具体的な指名対象は以下の通り。
今年は2020年ドラフトで指名された高校生、21年に指名された大学生が初めて対象になります。プロテクト対象となりそうな選手たちを以下に挙げていきましょう。
デンゼル・クラーク(優先度:A+)
クラークは21年のドラフトで指名された外野手で、お母さんが陸上7種競技カナダ代表のオリンピアンかつガーディアンズのネイラー兄弟をいとこに持ちます。母親から受け継いだ身体能力が最大の持ち味。AAで2年連続で二桁HRと二桁盗塁をクリアし、来季はAAAからのスタートとシーズン中のデビューが確実です。
今年のアリゾナ秋季リーグでも大活躍中で、来季に期待が高まります。弱点は当てる能力とケガの多さで、前者はまだまだ平均以下とはいえ改善気味ですが、後者が足を引っ張ることになりそうです。今季も昨季の左肩の故障が尾を引き開幕後しばらく不調でした。
とても練習熱心との情報もありますので、健康の維持さえできればポテンシャルはとても高いと思います。頑張ってほしいですね。
ガナー・ホグランド(優先度:A)
ホグランドはマット・チャップマンとのトレードの対価で唯一チームに残っている選手で、21年ドラフト1巡目という経歴です。
優れた制球力、速球も変化球も自在に使い分ける器用さが武器の先発投手候補なのですが、過去2年はケガに泣きわずか60イニングで球速も90マイル乗るかどうかという悲惨な状態でした。
誰もが諦めかけたところでしたが、今シーズンはAAでスタートすると平均92マイル程度は安定して記録し、好投してAAA昇格を果たします。その後は防御率5点台後半と若干苦戦しましたが、トラッキングデータを見ると空振りを取りつつ被打球成績も優秀で期待が持てます。
現在のチームにはローテ確約級の先発投手は不在なのでチャンスは確実にあると思います。筆者はどうしても元アスレチックスで制球力や球速帯、故障の多さなどに共通点の多いドールトン・ジェフリーズ(現パイレーツ)に抱いた夢を彼に託してしまうところが少しあるので、個人的にも特に応援したいところです。
ブレイク・ビアーズ(優先度:B)
傘下の若手投手の中では最高のスライダーを投げると評判なのが現在26歳のビアーズです。今季はAAでスタートして好投すると終盤にAAA昇格を果たしました。
スライダーが良いけど速球は微妙というパターンかと言われればそうでもなく、平均球速は94マイルあります。回転数が少なく変化量に乏しいためあまり多用しすぎない方が良さそうですが、スライダー系とのコンビネーションという観点では使えなくはない球種と言えそうです。あるいはシンカーに切り替えるのも手かもしれません。
スライダー系はスイーパーとそれよりも横変化の小さいスライダーの2種類を投げています。AAAでの少ないサンプルの中では右打者から空振りを奪うのに効果的で、左打者からはあまり空振りを奪えていないものの打球速度を抑えることに成功しています。
来季まだAAAでもあまり実績がなく、開幕ローテはないと思いますが来季中のデビューはあり得ます。リリーフとしての昇格もあるかもしれません。
ペドロ・サントス(優先度:B)
サントスはキューバ出身の24歳で、100マイルに迫る速球と高速カッターを中心にスライダーとカーブを織り交ぜるパワーリリーフです。奪三振能力が圧倒的な一方で制球は現状壊滅的で、要改善です。
近年アスレチックスがパワーピッチャーを集めている中でも特に奪三振力が高く、戦力化できればクローザークラスになるかもしれないくらいのピッチャーです。リリーフの指名が多いというルール5ドラフト制度の性質を考えてもクラークやホグランドよりも現実的に他球団から指名されるかもしれない選手と言えそうです。
その他
ここに挙げた選手以外だと、投手陣ならAAメインで投げたリリーフのライアン・キューシック、タイラー・ボームやチェイス・コーエン、AAのローテーションを支えたワンダー・ガンテとハメス・ゴンザレスあたりまでは編成陣の考え方次第でプロテクトの可能性があります。
野手では二遊間/センターを守る俊足のクーパー・ボウマンや内野UTの元トッププロスペクトであるローガン・デビッドソンが可能性ありというところ。デビッドソンはAAAでシーズン終盤に打ちまくり来季に向けて覚醒の気配を見せました。
ノンテンダー候補
DFAのことを戦力外と表記する向きもあるようですが、より日本の戦力外通告っぽいのがこのノンテンダーFAという制度。まさしく「来季の契約を結ばないことを通達」みたいな感じです。ちょっと悲しいコーナーではありますがお付き合いください。
ミゲル・アンドゥハー
去年もノンテンダー候補だったのが悪の帝王ミゲルです。レフトのレギュラーとして出場していましたが、打率以外の成績は出塁率含め攻守に不満が残ります。来季の年俸は250万ドル以上と見込まれていますが、彼くらいの貢献度の選手であればFA市場から同程度の価格で調達することも十分可能です。
アンドゥハーは現状では次に挙げるセス・ブラウンとのプラトーン起用が有力とみられています。フルタイムのレギュラーとして出ない選手にチームトップクラスのお金を払うのは合理的ではないですから、アスレチックスが彼を市場に流す判断をする可能性は十分あります。
セス・ブラウン
21年までの勝負期を知る数少ない選手となったブラウン。チームにとっては貴重なベテランですが、今季は不振にあえぎ、一時はDFAとマイナー降格も経験しました。
元々右投手をそれなりに打つ代わりに左投手がまったく打てない選手だったのですが今シーズンは右が打てずに結果として左右どちらも対戦成績が変わらないという状態。
元々守備も良くない上に打てないとなると、なかなか保有する理由がありません。年齢的にも32歳とキャリアの下り坂の時期。しかも年俸はアンドゥハーよりも高い350万ドル近辺との予想。外野が薄いチーム事情を加味してもコストパフォーマンス的になかなか厳しい状態です。
ダニー・ヒメネス
22年以降、ブルペンで一定の存在感を示しているヒメネス。しかしケガが多く、成績も安定しません。中継ぎが薄いチーム事情ですし予想されている100万ドル程度なら残留することになりそうですが、ノンテンダーとなる可能性もゼロではありません。
その他
ノンテンダーFAは年に1回選手をウェーバーにかけずにマイナー契約に切り替えられる機会ですので、ロスターの端っこにいるけど選手層としてはカウントしたい選手も対象になるかもしれません。具体的には、内野手のCJ・アレクサンダーやニック・アレンなどが候補になるでしょうか。