本日の読書(「挫折からのキャリア論」(山口真由著))
1 今回読んだ本の紹介
「挫折からのキャリア論」(山口真由著、日経BP)
元財務官僚、弁護士の山口真由氏が書いた、これまで語って来なかった自身のキャリアの挫折経験を基に書かれた本です。
2 著者の経歴について
東大在学中に司法試験に合格→国家公務員採用1種試験合格→東大を主席(成績オール「優」)で卒業→財務省に入省→弁護士に転職→ハーバード大学ロースクールに留学→ニューヨーク州弁護士登録→東京大学大学院修了。
模範的な完璧な経歴ですよね。そのため私はこの本を読むまで、山口さんは完璧な女性で何をやっても、どんな職業についても完璧にこなすことが出来る人なんだろうなと思っていました。
しかし、山口さんは財務省でも弁護士事務所でも仕事での評価は芳しくなく、評価さない環境に対し、財務省からは自ら逃げ出すように、弁護士事務所からは成績不良で退職の勧告により退職したとのことです。世間的にはキラキラに見える人生も、実は泥沼だったことが書かれています。非常に意外でした。
3 この本からの学び
(1)その人が成功すかどうかを決めるのは「環境」である。
その人が仕事等取り組もうとしている世界でで成功できるかどうかのキャスチングボードを握っているのは「環境」であるということです。よく「この人は能力が高いから」、評価されている、昇進が速い、仕事で成果を出しているetcと「人」の側に成功の要因があるかのように語られることが多いですが、そうではなくて、その人が取り組もうとしていることで成功できるかどうか、光り輝くことが出来るかどうかは「環境」が決めるのです。
その人が持っている「特徴(能力や性格、価値観など)その特徴を「環境」が必要とした時、もしくは「環境」がその人の持つ特徴を受け入れた時に、その人が取り組もうとしている世界で成功できる、光り輝くことが出来るのです。
(2)山口さんのケース①自身の「特徴」と「環境」が求めているものの不一致
山口さんの場合、山口さんが持つ「頭の良さ」・「優秀さ」は膨大な量の情報を暗記できる力と情報処理力をベースとした「頭の良さ」であるのに対して、財務省や弁護士事務所が求めていた「頭の良さ」は考える力(思考力)をベースとした能力を有する人を求めていました。
つまり、山口さんの持つ「特徴」と「環境」が求める特徴(能力)が不一致であったため、山口さんは仕事で上手く成果を出せなかったというものです。
一方、大学の試験や司法試験、国家一種試験で求めらる能力は、まさに山口さんが有する「情報処理能力」、つまり、予め用意された答えに如何に速く正確に辿り着くかの能力です。しかも山口さんの情報処理能力はずば抜けて高いのです。
こちらでは山口さんが持つ「情報処理能力」と大学の試験、司法試験、国家一種試験で重視される能力が一致し、しかも、山口さんは情報処理能力がずば抜けて高いので、非常に高い評価を得ていました。
(3)山口さんのケース②:「王道」を選んでしまう。
「自分が持つ特徴」と「環境」が合致している職業を選ぶことが出来れば良いが、そうではない選択をしてしまうことは少なくないのではないでしょうか。
山口さんは著書で「王道」の職業や分野を選択をしてしまうと語っています。「王道」。もしかしたら、世間の評価が高いほうの道を選択をしていたと言えるのかもしれません。その結果、選んだ「王道」と「自分が持つ特徴」が不一致であるため、成果を出すことが出来なくなっていました。
これは、とても重要な示唆で日曜夜に放送されている林修先生の「初耳学」にゲスト出演した現代最強のマーケター・森岡剛氏が「自分の特徴を認められないと成功が遠のく。」と仰っていました。
番組の中でフリーアナウンサーの方が自身のキャリアについて「自分がやっていて心から楽しいと思える分野はバラエティーの分野だけども、なりたいと思うのは、ニュースキャスターの安藤優子さんのようになりたい(バラエティーではなく報道の分野の仕事をしたい)と思ってしまう。」との相談に対する森岡さんのアドバイスとして出てきたのが上記の言葉です。
「なりたい」というのは憧れ、つまり、自分が持っていないものを相手が持っている場合のケースが多いという。「自分は持っていない」、言い換えると、「自分の特徴」と「環境」の不一致が生じることを意味します。
もしかしたら、山口さんも「王道」、世間の評価が高い分野に自分が持っていないものをその分野に見ていたので、その分野に魅かれたのかもしれませんね。
4 私はこの本をこう読んだ:この本の構造(論理の骨格)について
■この本の問い(イシュー)■
仕事や学業など自分が選択した世界で成功するかどうか=その人が光り輝くことが出来るかどうかを分けるのは何か?
■問い(イシュー)に対する答え■
その人が成功できるかどうか、選んだ場所で輝くことが出来るかどうかは「環境」が決める。自分が持つ「特徴」と「環境」が合致した時にその人は光り輝くことが出来る。
■答えに対する根拠・方法論■
・山口さんが持つ「特徴」→ずば抜けた「暗記力」、「情報処理力」
・東大での学業成績、司法試験、国家1種試験→「情報処理力」が求められる。
・財務省、弁護士事務所→「考える力(思考力)」が求められる。
5 この本を読んでの感想
「自身が評価されていなかった」過去の経験を率直に書いた著者は非常に勇気があると思いました。キャリア論と言うといわゆる成功者の成功体験が書かれた本を読者が憧れを持ち、成功体験から教訓を引き出しながら読んでいるという構造のパターンが多いですが、山口さんのように率直に自身の評価されず悪戦苦闘していた経験を書いた書籍を読んで、山口さんが本書を書いた目的の一つである、キャリアで壁にぶつかり悩んでいる女性の方に勇気を与える本ではないかと思いました。
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