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何歳でも考えたいレイシズム

30代のいい大人なのに「レイシズム」がよく分からない

報道で耳にしたり、最近よく聞く言葉だ。しかしよく分からない。

恥ずかしながら「何やらよくないもの」としか印象がなく、具体的に何が悪くて問題視されているのか、そもそも何を指すのか、どのような考え方なのかすら、おぼろげだった。ただ世界はレイシズムとたたかっているようにみえた。

「14歳から考えたいレイシズム」は「14歳から」と銘打ってあり、これなら無駄に歳を重ねてしまった30代女でも読めるはずだ!と密林から取り寄せた。

レイシズムとは端的に言ってしまえば「人種差別」をすることだが、レイシズムの歴史、というより人類史からいうと「白人男性とそれ以外の種」と差別してきたという方がわかりやすいのかもしれない。

女性を劣ったものとして扱い、アフリカの人々を奴隷として輸出し、アジアの人々も同様に劣った存在である。だから体の構造的に優れた白人男性は彼らを支配し管理する義務がある。

私が驚いたのは、「生物的に生まれつき白人男性は優れている」これが学問として最近まで科学的に体系されていたことだ。

現代ではヒトに遺伝学的に差異はほとんどないと証明されているようだが、(「純粋に一つとしての人種」を特定できたことはない)学問として成立するほど根深く染み込んだ認識が今でも続いているのだと衝撃を受けた。

支配することを目的とするならば、レイシズムはとても利用しやすい最適な手段だ。

自分たちは生まれながら優れている、優れているものが劣っているものを導くのは義務であり慈悲だ。こう思っているのかは分からないが、そんな感覚なのだったら強権的なのも、よくニュースに出る弱い立場の人々を襲う心理も、納得は到底できないし腹立たしいが、何となくは理解できる。DVの構造と近いものがあるかもしれない。

私の父はアメリカ生まれ

父はアメリカ出身なのだが、私の祖父母にあたる彼の両親は日本生まれで仕事で渡米しており父が生まれてすぐ帰国したため、英語は話せないし、アメリカ的要素が何もない。しかし出身地にはアメリカの都市名が書かれるため「お父さんは外国人なのか」「君はハーフなのか」「英語しゃべれるのか」「顔は日本人だ」と言われることがままあった。

今までネタになる程度にしか思っていなかったが、このことにもレイシズムが含まれていたのだなと本を読み気付いた。

「お父さんは外国人」

外国人、が「人種」なのか「国民」を指すのかハッキリしない。日本で育っているから日本人であるとはいえるのかもしれない。そうやって枠組みに当てはめていくこと自体が差別にあたるのではと不安になってくる。

「顔は日本人」

これに至っては「あ、レイシズムですね」と容易に判断のつくわかりやすい例だ。

現代にまで深くレイシズムが根付いているのは「見た目」が違うことが【分かりやす過ぎる】からなのではないか。

本の後半には現代においても白人圏の国に住む黒人がどんなに差別を受けるか、の実例がたくさん載っている。一流大学の教授、大富豪、社会的地位が高い黒人でさえ、見た目でしか判断できない瞬間にひどい差別を受ける。

職務質問を受ける確率が圧倒的に高い、百貨店に買い物に行くと万引きを疑われ後を尾けられる…

アジア系の人もコロナ禍で謂れのない暴力を受けた人が大勢いたようだ。

日本ももちろん例外ではなく、女性は医大の合格率を操作されていたり社会的地位はまだまだ高いとはいえず、外国人に対しての風当たりは強い。

本に引用されていた「ファスト&スロー」によると人は何かを決める時最初の段階では脳がより手軽に入手できる情報と直感で判断してしまうのだそうだ。

始めに「世界はレイシズムとたたかっているようにみえた」と書いたが、たたかっているのか、よく分からなくなった。

あまりにも社会の仕組みとして根付いていて、優位に立ちたいものたちに都合よくつくられており、「ふつうの人」も普通に行う。良くないことだと叫ばれてはいるが、それさえもレイシズムを自分が優位に立つために利用するための方便なのではないかと不安に感じる。

そして何より自分自身が自覚せず差別をしていることがあるのだろうと思うと恐ろしい。

やっぱりレイシズムがよく分からない

「14歳から考えたいレイシズム」を読み、レイシズムの歴史は知ることができた。ただ「理解した!」とは程遠く、よりレイシズムの不気味さ、強大さ、訳のわからなさが真に迫ってきた。

自分が当然だと思っていることは当然ではない。差別は分かりづらい。している側も受けている側も当然だと思っていることが多い。父は生まれたとき肌が浅黒かったらしく祖母はジョークとして彼女は黒人と浮気したのだと言われたと彼女自身も笑い話のように話していた。(笑い話として話すしかなかったのか、本当に笑い話だったのか真意は分からない)

うっかり踏んでしまいそうな地雷のようにレイシズム、差別は目の前にたくさん落ちている。

知れば知るほど不安になり分からなくなったが、これは必要な不安なのだろう。


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