メルカリで見た風景4
『アファメーション』
商品が無事に届き、梱包はきちんとしており、手書きのメッセージも添えられていた。
それも安っぽいメモ用紙に書かれているのではなく、売ればお金になるような、高価なカードが使われていた。
綴られた文字は非常に達筆で、書道家のようにアーティスティックだった。
だが、その内容は、当たり障りのない礼状だ。
全体的には好印象だったし、私はどんな場合も良い評価で終わらせる主義だ。
けれど評価文に何を書くかは、適当に決めるわけじゃなかった。
まずは出品者様の、過去の取引相手への評価を見てゆく。
これで少なくとも、全員に同文テンプレ評価を行う方なのかどうかがわかるし、自分に対してどのような評価文が届くのかも事前に予想することが可能だ。
と言っても、私はこれを念のために習慣にしているだけで、特別なことは何もないのが常だった。
ところが、この時は違い、私は衝撃を受けた。
出品者様は、過去の取引相手全員に、
「この度は良い評価をいただき大変嬉しく、光栄です」
などと書いているのだ。
そしてその後に、「今後もぜひ、ご贔屓に、末永いお付き合いをどうぞ宜しく」と言ったキャッチフレーズが続いていた。
これは、完全に私の想像を超えていた。
まさか、ここまでやる?
これって、反則技じゃ?
「アファメーションかよっ!!!!!!」
思わず叫んでしまった。
出品経験者なら皆知っていることだが、メルカリの評価は、取引が終了するまで見ることはできない。
だからこの出品者様は、実際は相手からの自分への評価が、良いのか悪いのか知らない状態で、この文を書いているのだ。
ある意味、「良い評価をいただいた」と言う未来の到来を強制するかのような宣言文になっている。
そして実際に、見える範囲に出品者様への悪い評価は一つもなかった。
これがアファメーションの力によるものなのか、個人的に興味はあるが、私自身がそれを検証するために実験しようとは思わない。
さて、とにかくこれが書かれる前提で、私は何を書くか決めなくてはならない。
これは、出品者様は取引相手の評価欄にネイティブ広告を打っている状態であり、仕様上リンクも貼られており、そして購入者側はこの出品者様のお得意様に仕立て上げられてしまう一文だ。
店や業者が評価欄をも宣伝に利用することは、よくあることだが、ここまで徹底しているケースを見たのは、私はこれが初めてだった。
商売を邪魔する気はないが、事実を曲げられるのは好きではない。
私は対応として、事務的な評価を書いた。
海外発送代行業者が書くような、個人感情の入らないテンプレ文だ。
だが100件埋まるまでの期間が出品者様の方が断然早いため、これもあまり意味のない抗いなのだが。
おそらく出品者様は物販のプロだろう。
彼らはこんな風に細かい部分まで多彩な技を使い、攻めて来る。
素人向けのフリマが土俵でも、素人が対抗できないレベ違術を駆使して展開してくるんじゃ、勝てそうにない。
・・・おや?
勝ち負けは、どうでもいいか。
もともと勝負してないし。
私の興味は、これはアファメーションによる力なのか?と言う点だ。
奇しくも今は新月、私も悩みを解決すべく、挑戦してみようか・・・。
「私、文字、うまくなーる」
「達筆になーる」
「お洒落カワイイ字になーる」
合掌。
※この日記は基本的に事実を基にしていますが、他者のプライバシーに配慮し、多少の改編、脚色を行っています。