0402 短歌
2020年2月 - 3月の短歌、20首。
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春、なにか大事なことを忘れているような気がして口を噤んだ
1時間あれば来れると知っていて1度も見なかった夜の海
たぶん明日世界が終わってしまうから君だけといるため海に来た
白く染まる息の向こうで唇に添える人差し指の細さよ
潮風がひときわ強く吹きなびくあなたの髪に透ける朝焼け
夢をみるクジラの背びれに添うようにしずかに息を吐く夢をみる
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踏切の警報音が鳴り響き何もかも全部上書きをする
遮断桿の向こうで君が手を振って間髪入れず列車の幻影
夜専用プレイリストを編んでおく底まで辿りつかないように
三月を深呼吸して取りこめば滞空時間の延びる気がする
手の甲に口づけをして何光年先も迎えにいく約束を
過不足のない愛として示したくあなたの指をそっと掬った
雨一番、いつ買ったのか分からない明るい色の傘を持ち出す
ベランダに雨の打ちつける音がして昨日の続きを僕に知らせる
雲ひとつ無い空の青/深呼吸/ストリーミングで音楽を聴く
忘れたいことも忘れたこともありノーカラージャケットへ腕を通した
ドーナツの穴をひとりで食べながらこれで良いって思えることを
口元に人差し指をあてる君の淹れたお茶からくゆる静寂
モノローグばかり浮かべて冷静な振りをしていたのだろう多分、
春なので靴は新たに下ろしたしあなたのことも全部忘れる