せめて銀幕の中では守りたかった ~今、七人の侍を観る~①
「一度は観て、オモシロイから!」
と、いきなりプレゼントされたのは黒澤 明 監督の名画「七人の侍」(’54)のブルーレイ。
今年は、公開から70年を迎えたのを記念して、4Kリマスター版が全米でリバイバル公開され、再び話題になっているようです。
戦国末期の寒村を舞台に、盗賊野武士の破壊と略奪に苦しむ農民たちが7人の「浪人侍」を傭兵としてスカウトして、村を守り抜く物語として有名ですね。
このプロットを元にハリウッドでリメイクされた「荒野の七人」は続編を含め何回か観ているのですが、元ネタの黒澤作品は初見です。もらったその日に観てみました。
最初、迫力の演技と作りこまれたセットに目が奪われましたが、製作された昭和20年代後半の熱気を次第に感じるようになりました。
戦後、民主主義が見直され、朝鮮戦争特需による経済成長の中、日本の本格的復興に向けて、誰もが明日のしあわせを夢見て前を向いていた社会だと思うのです。
一方、戦争で大切な人を失ったり、自らが羽ばたく機会を逸してしまったなど、様々な挫折が人々の心に「おり」のように沈んでいた時代でもあったでしょう。
中盤から、侍が村人を率いるシーンが増えるのですが、日本の敗色が濃厚になる中、将校が銃後の市民を教練する記録映画で観た景色とダブります。
終盤の、侍や農民が一丸となって、知略をめぐらせ、文字どおり身を削りながら野武士と死闘する姿に
「オレたちも彼らのように戦いぬき、守りたかった。だから、せめて銀幕の中では…」
と、演者やスタッフの中に想いが重なって、撮影現場がじわじわと熱を帯びていったような気がしてなりませんでした。