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こころ優しきクールガイ 久蔵 ~今、七人の侍を観る~④

邦画「七人の侍」('54)を観た、お話の続きです。今回で最終回です。

これは戦国末期の寒村を舞台に、盗賊野武士に苦しむ村人が7人の「浪人侍」をスカウトして、村を守り抜く物語です。

この映画には様々なキャラクターの侍が登場します。

その中でわたしが気になったのが宮口精二演じる久蔵(きゅうぞう)。

剣豪だがマッチョではないぞ

とてつもなく腕の立つ剣客で、口数の少ないクールな細面、

「己をたたき上げる、ただそれだけに凝り固まった奴」

と評されながら、それでいてちょっと心優しい一面もある、なかなかのツンデレキャラなのです。

一説には宮本武蔵をモデルにしたとのことですけど、それともちょっとちがうような…
あくまでも久蔵は久蔵だと思っております。

しつこく決闘を挑んでくる相手に
「止めておけ、真剣ならばお主は死ぬのだぞ、分からぬのか」

さて、劇中では村の防衛を懇願する村人と、そこに居合わせた人足衆から猛烈な説得を受け、志村 喬演じる浪人軍師・島田勘兵衛が

「この飯、おろそかには食わんぞ」

と、差し出された白飯に食いついたシーンが大きなターニングポイントでした。

この時代、白米を食う価値とは如何ほどか

その後、勘兵衛が中心となって、スカウト活動が本格化するのですが、
誘いに応じる浪人侍からは

岡本勝四郎「武者修行がしたいのです」
片山五郎兵衛「その心意気が気に入った」
林田平八「ハラが減った」
七郎次「元々あなたの配下でした」
菊千代「本物の侍になりてぇ」

と、それぞれの出自にそった加入動機が語られます。

しかし、久蔵の動機は彼の口から出てきません。
それどころか、一度は誘いを断った上で、あとでふらっと村人防衛の輪に入ってくるのです。

孤高ですけど、談笑の輪にも入ります

その後の活躍は本当に出来すぎで、戦の折も具足さえ着用せず、格上の強さを見せてくれるのですが、一体、彼は切っ先の、さらにその先に何を見ていたのでしょう?

剣の腕は天下無双、隠密活動も完璧、若侍 岡本勝四郎と村娘の悲恋を黙って見守り、敵弾を受けた散り際は敵の居場所を指し示しながら…

そんな久蔵のスピンオフ作品、誰か作ってくださいませんか。


これで、「今、七人の侍を観る」の記事はおしまいです。
元々はメルマガ用に書き下ろした原稿でしたので、我田引水っぽい書きぶりが随所にありましたことをお許しくださいませ。


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