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カリフォルニアから来た娘

経営と身内に関する記事の続編です。
前回は創業と身内でした。


重い病にかかり、ニューヨークで療養している父親を見舞った末娘。彼女は遠いカリフォルニアからようやくたどり着いたのでした。

たっての希望により、自宅で看取ることに決まった話を親戚から聞いていましたが、想像以上にやつれた父親を見て、娘の態度は一変します。

「延命治療をしてちょうだい!お金じゃないの、気持ちの問題よ!」

あまりの剣幕に自宅での看取りは撤回され、延命治療を準備する最中に病室で父親は息をひきとりました。

このように、あらかじめ決めた計画があるにもかかわらず、事情を知らない身内が突然やって来て、あれこれと要求して方針が覆り、これまで築いてきた準備が台無しになってしまうこと、これを

「カリフォルニアから来た娘症候群」

と言うそうです。
ちなみに、やってきた地名はカリフォルニアに限らず、シカゴでもニューヨークでも、遠くであれば場所はどこでもかまいません。

さて、個人経営の事業承継でも、身近で似たような話がありました。

一人暮らしのご主人が高齢となり、店をたたむことになった小さな食堂。
店を無くしてしまうのは惜しいとご主人の希望により、支援機関の紹介を経て、居酒屋を開業する若者に1階を居ぬきで貸し、ご主人は2階に住まうことで、ようやく賃貸契約を結ぶ段階に入っていました。
そこに、遠方に住む娘さんがものすごい剣幕でいきなり割って入ってきたのです。

「ここは私たちの家、勝手に他人が入りこむのはイヤ!ましてや居酒屋なんて!」

お店の不動産は100%ご主人の名義です。今でこそ娘さんは食堂に関わっていませんが、かつては一家でそこに暮らし、幼いころは良く店を手伝っていたそうです。
しかし、永い時間をかけて承継相手を探し、やっと合意するところまでたどり着けたのに、なんとこの話は一旦白紙に戻されてしまいました。

個人経営の場合、事業用資産と個人資産が一体となっているため、先代の資産をどうやって引き継ぎ・利活用するのか事業承継や相続の時に身内で揉める原因となることがあります。それも商売となんら関係がなかった身内から、反対をいきなり突きつけられた、といったことも良くあるようです。
個人であれ法人であれ、事業承継のおおまかな方針について、早い時期から身内から合意を得ておくことが必要なのかもしれません。

強力な助っ人になる一方で、バサッと切ることが難しく、時には思わぬ障害のタネとなる身内。そのお付き合いは商売を営む上で非常に重要かつ難しい要素だったりします。

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