嵐の中のTong Poo
街を行く車、運転者の意に反して、車内の音は結構外へ漏れている
ハンズフリーで通話している車は通話内容が丸聴こえなんてことも。
カーオーディオをボリューム大き目で聴いている車は
音楽がほとんどだだ洩れ状態。
だから、
車でも家でも、スピーカーの音量はほどほど
それではと、つけたヘッドホンの大音量は耳に悪い
だけど、
たまには、スピーカーから大きな音で聴いてみたい。
台風1号から伸びた前線は思わぬ風雨をもたらした。
私の住む街は夕刻から台風本番のような横殴りの強雨。
「まいったなぁ」
仕事から帰る車内、びしょ濡れのスーツを拭う
さらに容赦なくボディやフロントガラスに叩きつける雨
フォグランプをつけてゆっくりと走り出す。
気分を上げよう、こんな夕暮れだから
迷わず、これを選曲した。
Tong Poo (from 公的抑圧) / YMO
表通りの交差点に出るころには風雨は乱舞状態
ボディを打つ雨音で車外の音さえ聞こえない。
私と外界は遮断されたようだ。
「これはもしや・・・」
ためらわず、ボリュームを上げた。
高橋幸宏の正確で乾いたドラム
矢野顕子の踊るような、それでいてゴージャスな音色のキーボード
教授の渡辺香津美のギターを意識しつつも、クールに徹したソロ
ハリー細野のベースラインはレトロゲームのBGMを思わせるようなコミカルな一面も
音量を久しぶりに上げた車内は、それら全てが降り注ぐようだった。
グッとくるオリエンタルなメロディライン
どこまでも続くアップテンポ
リフレインするたびに変わってゆく音色の煌めき
聴き始めて40年以上経た今も、やはりこの曲を選んでしまう。
気持ちだけは上がっていく
低く垂れた雨雲を突き抜け、雲の上で輝く夕日に届きそうだ。
台風1号がはるか南洋から投げよこしたこの雨風
ほんの一時だけ外界と私を切り離してくれる
ちょっとしたプレゼントに思えた。
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