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美少女キャラが気付かせる私の性別コンプレックス


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環境省公式Twitterより

「女子高生」「好きな食べ物はアイスクリーム」「身長158cm」という細かすぎるキャラクター設定が環境問題と一体どんな関係があるのかは不明だが、環境省は君野ミライと君野イマを啓発活動のイメージキャラクターに起用した。

これに対して、環境省の活動を知るや否や、キャラクターを起用するべきではなかったと私は過剰に反応した。キャラクター起用に反対する意見もたくさん目にしたが、冷静になってみると私が画像を見た瞬間抱いた「信じられない」という思いと、無性に湧き上がる悔しさは異常だったと思う。自分でもびっくりするくらいの過剰反応は、隠れていた自分の中の性別へのコンプレックスに改めて気付くきっかけとなった。

ジェンダーの観点の問題点については、性差別や女性性の搾取に繋がるといった理由がわかりやすく書かれている朝日新聞Globeの記事を是非読んでみてほしい。
ところで、あの美少女キャラを見て皆さんはどう感じただろうか?私が抱いた第一印象は「可愛らしくあどけない女子高生」である。いかにも男性陣に人気のありそうな風貌で、環境問題を真剣に考えてくれない世の男性に「お願い」をしているような雰囲気を醸し出していると感じた。性的魅力や愛嬌を巧みに利用することで、一定程度の男性の気を引けると思っているのか、とまで考えた。明確に性被害にあったわけではないのに、ここまで反応したのは男性に媚を売ることで物事をスムーズに運べることを日常的に体感しているからだ。女性の賢さや知識、説得力などはあまり求められず、従順さと愛嬌がものを言う日常。
公的機関が悪気もなく積極的に後押しているこの女性像と私の日常が重なり、なんともやりきれない思いを抱いたのである。

当初、周りの人がこのキャラクターについて特に悪い印象を持たなかった(むしろ新しくていい取り組みだと考えた)ことに私が、ショックというか見解がこんなにも違うものかと驚いてしまったのも無理もない。
あまり意識はしていなかったが、24年生きているうちに内股や華奢な体、おぼろげな瞳があどけなく好まれる容姿だというステレイタイプが刷り込まれていたらしい。
先進的な考えを持っていると思っていた知人は「私はこれを見ても、弱さやあどけなさは感じなかった。このキャラを見て抱いた第一印象こそがステレオタイプなのではないか」とまで言ったのだ。

だからと言ってキャラクター自体に反対しているわけではない。むしろ、アニメ好きな友人は男女問わず周りにもたくさんいるし、本田透著『萌える男』を読んだことで、このキャラクターに限らず、美少女キャラが性犯罪や性差別を助長するとはあまり考えなくなった。人によるかもしれないが、少なくとも本田氏は、二次元と三次元は完全に区別されていて、むしろ「萌え」は内なる女性性の現れであり、萌える男性は支配的な関係を望まないため、男性性を刷り込まれた一般的な男性よりも暴力的ではないとさえ言っている。

私が問題だと思うのは、製作者側やファンの意図に関係なく、ミライとイマを見て屈辱を感じてしまう人が一定数いることだ。もっというと、そのような性別コンプレックスを抱かせる社会だ。
仕事柄良くも悪くも女性を意識することが多く、なんとなく分かってきた求められる女性像。認めたくないが、ああはなりたくないと思いながらも、需要がある現状に抗うほど私も強くなく、気付けば限りなく近くなっていた。
今の日本社会は、ミライとイマのあの容姿を1つの個性として受け入れられるほど、ジェンダー的に成熟していない。多くの人が持つ、社会が求める女性像への反抗心や拒絶反応が、本件をきっかけに露わになったのだと思う。

この文章を通して誰かを敵にするつもりは毛頭ない。ただ、何も感じなかったという人に、あのキャラクターの起用によって不快に思った女性がいて、なぜそう感じたのか、という事実をふんわりと知っていて欲しいと思う。

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