免疫(27)-肥満細胞-
肥満細胞について調べることをスルーしてはいけないだろう。
マスト細胞は全身の様々な組織に分布する免疫細胞であり、その特徴として細胞質に多数の顆粒を持つことが挙げられる。
顆粒内には硫酸化プロテオグリカンが豊富に含まれている。
マスト細胞は、即時型アレルギーにおける主要なエフェクター細胞として機能するだけでなく、寄生虫感染の生体防御に関与することも知られている。
マスト細胞は刺激に応じて多様な炎症性メディエーターを産生することが知られている。
即時型アレルギーにおけるIgEを介する抗原抗体反応では、速やかな脱顆粒応答によりヒスタミン等の顆粒内容物が放出され、PGD2やロイコトリエンC4(LTC4)といったアラキドン酸代謝物が産生され、数時間後には転写を介してサイトカインが産生される。
脱顆粒応答で放出される物質は、ヒスタミンやセロトニン、プロテアーゼ、プロテオグリカンなどがある。
産生されるアラキドン酸代謝物にはPGD2やLTC4だけでなく、LTD4、LTE4、LTB4などがある。
IgEを介する活性化では、高親和性IgE受容体であるFcεRIが存在している。
マスト細胞を一度定義しておく
マスト細胞は高親和性IgE受容体であるFcεRIとstem cell factor(SCF)の受容体であるc-kitをともに発現する細胞として定義される。
IgEとSCFはマスト細胞の増殖、分化、活性化に重要な因子である。
最近では、強い抗原刺激による脱顆粒のみならず、弱い抗原刺激によるケモカインやいちぶのサイトカインの産生誘導が存在すること、単量体IgE応答が存在することが報告されている
単量体IgE応答では、IgEがFcεRI分子に結合した場合に、アポトーシスの抑制やヒスタミン合成の誘導などが起こることがわかってきている。
ヒスタミン合成酵素はヒスチジン脱炭酸酵素(L-histidine decarboxyase, HDC)と呼ばれ、IgEの結合により転写レベルで顕著に誘導され、細胞内のヒスタミン含量が4倍に増大したという報告も存在する。
さて、マスト細胞ではprotein kinase C βⅡ(PKCβⅡ)がAktのリン酸化を通じて活性化を促進していることが知られている。
Aktはマスト細胞からのサイトカイン産生に重要な役割を果たしている
またMAP kinaseのファミリーの活性化では、抗原抗体反応では一過性の強い応答が、一方で単量体IgE刺激では弱く持続的な応答が起こることが見出されている。
参考:田中智之 マスト細胞の分化に伴う機能制御 生化学 2010;82(11):1021-1031