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『イニシャル・オーダー』設定(B)
下記に掲載するものは、小説『イニシャル・オーダー』の設定の一部です。
これは、先に発表した設定(A)よりも後に作ったもので、前の案よりは本稿(未発表)に近い内容です。
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スヴォール星を統治するスヴォール連邦社会主義共和国は、第3インタープラネタリーコミューン(社会主義惑星共同体)の主導惑星である。第3インターの独裁的なイニシアチブに疑問を持ったスヴォール連邦宇宙軍所属のナコルバット大佐は、MBL(ミッドベルト・リーグ/間宇宙惑星連盟)の合同演習にスヴォール星から供された軍艦・ステルス軽宇宙空母「リサ・ベスメルナ」の艦長でもあった。彼は自艦をMBLの演習中に艦隊から離脱させ、演習コースの近くにあったリアン星系第3惑星アルニダクに逃亡する。ナコルバット大佐は第3インターによる共産主義からの分離独立を主張し、本国から「過激主義者」「分離派」の烙印を押されつつ、アルニダクに逃げ延びた。彼とその部下たちは、アルニダク星をコロニー化し、そこに独立した、新しい社会主義政権国をうち立てようと図る。
しかし、大佐はアルニダク星において大きな困難に直面した。アルニダク星にはすでに「フォノン」と呼ばれる知的生命体の種族が存在し、初期の文明「イニシャル・オーダー」を形成していた。アルニダクの先住民族であるフォノンたちは、軍艦を率いて現れたナコルバットたちをインベーダー(侵入者の宇宙人)として警戒、彼らによるコロニー化に対して強く反抗する。フォノンたちの強力な抵抗に直面した大佐は、アルニダク星での社会主義政権樹立を断念し、フォノンたちと取引を開始。フォノンから補給物資を得る代わりに彼らに「霊子ディスク」を与える。
霊子ディスクから供されたデータの扱いをめぐって、アルニダクのフォノンの間で混乱が起きた。
フォノンたちの内に意見の違いが生じ、それは対立に発展。フォノンたちは、政府派と反政府派に分裂し、互いに分断が生じ内戦の危機に見舞われる。それを見た大佐は、アルニダクもまた安全な場所ではないと思い、アプシス(内宇宙)への脱出計画を立てる。それはコードM(エム計画)と呼ばれた。
しかし、エム計画の実行途上で、スヴォール連邦政府崩壊の知らせが入る。これにより、間宇宙の惑星間関係に危機が生じた。MBLは宇宙平和維持のために、連盟緊急理事会を招集。理事会決議を発出する。またMBLは、ナコルバット大佐の反乱逃亡に対し軍事的な強制行動を採択、連合艦隊をさし向けるが、大佐はリサ・ベスメルナに積んでいた次元兵器の脅威によってこれを牽制する。アルニダク周辺で軍事的緊張が高まるが、戦争は回避される(この事件は「コールド・コンフリクト」と呼ばれた)。
スヴォール連邦の崩壊により、第3インターの主導者は、事実上、スヴォール星と社会主義星の主導権争いをしていたライバルのキュタ星に移った。第3インターはナコルバットたちに対して刺客を放つ。それは「新宙教団」と呼ばれているオカルト組織を装ったインターの秘密警察だった。ナコルバットはエム計画の実行を急ぎ、内宇宙への逃走を企て続ける。教団の強襲により大佐は危機に陥るが、そのとき大地震が起こった。それは高次元世界からの次元間介入だった。それによって起源宇宙の根源である内宇宙からの光が降り注ぎ、闇の勢力である第3インターの秘密警察オカルト教団・新宙教団は力を失う。同時に、次元間介入に呼応して、メガロサイモスも活性化した。
アルニダクにおける以上の事件の報告を受け取ったMBLは直ちに総会を開き世界的な討論を行い、間を置かずにアルニダク星のフォノンによる自決権に関する決議を採択。アルニダクを独立国として承認する。さらにMBLはナコルバットと対話の上、平和的な和解のためのプロセスとして、アルニダク星に間宇宙連盟平和維持部隊を派遣する。
この過程のなかで、MBLのアルニダク平和維持部隊はフォノンによる建国を輔けるため「アルニダク憲法」を起草、作成する。それはアルニダクの評議会を通過し、無事に公布・施行された。そしてアルニダク星は惑星国家として間宇宙の諸惑星国家から国家承認を受ける。アルニダクは永世中立星の地位を選択する。
一方、ナコルバットたちは、スヴォール星やアルニダク星、そして内宇宙以外の居場所を早急に探す必要性に迫られ、熟慮の末、間宇宙連盟の自由主義陣営惑星・スタージェン星への亡命を希望する。要求は聞き入れられ、スヴォール星とスタージェン星、アルニダク星からの大使との話し合いと、スタージェン星によるリサ・ベスメルナの艦体検査を経て、ナコルバットたち乗員は、スタージェン星に政治難民として認められ移住を許可された。艦体検査を受けたリサ・ベスメルナは、スヴォール星に返還された。ナコルバット大佐と部下たちは、スヴォール連邦軍から不名誉除隊の通告を受けた。