小説『ヴァルキーザ』 30章

30. 剣の断崖

試練の谷で竜のゲルグースを退治した後、グラファーンたちは一旦、エスタルカームの街に戻った。
次の挑戦チャレンジに備えるために。

今度は「剣つるぎの断崖だんがい」だ！

その先にはすぐに、冒険の最後の目的地「時の城」ゼーレスが待ち構えている。

グラファーンたちは、ついに、最後の冒険に旅立った。

剣の断崖は文字通り、剣のように垂直に岩が立つ絶壁ぜっぺきの断崖だ。

いまグラファーンたちは、その崖がけのへりにいた。

見下ろせば、崖は底知れないほど深く、まさに奈落と呼ぶにふさわしい深淵しんえんだ。

冒険者たちは、この崖を降りなければならなかったが、切り立っていて、足場もない。なので、歩いて下りる術すべが無かった。

だが皆は、先の冒険で手に入れていた魔法の道具マジックアイテムの力によって、全員「 空中浮遊レビデート」 が可能だった。それで崖っぷちから安全に飛び、きわめて低速で落下して舞い降りることができた。

冒険者たち7人は、魔法の力がもたらす浮力によって、ゆるやかに宙を舞い降りてゆく。
着地のさいに足を怪我せずにすむくらいの遅さだ。

降りる最中は魔法の仕様によって、皆それぞれ自らの意思で、より上方や下方に高度を変えて、浮かび方を調節することもできた。

このようにして崖から落下している間、冒険者たちは、竜たち空飛ぶ怪物の猛烈もうれつな迎撃を受けた。
一団は、ここがエルサンドラの軍団の最終防衛線であることを否応なく思い知らされることとなった。

しかし、竜たちが空を飛びながら吐きかける炎ブレスも、鋭い鉤爪かぎづめや長い尾による攻撃も、冒険者たちは次々と振り払った。
魔法や、魔法の武器の力によって。

最後に、一人の冥界戦士スペクターが待ち構えていた。

彼は名乗った。
「待っていたぞ！　我が名はザー。　この最終防衛線の指揮官だ！　小僧共、ここで命果てるがいい」

ザーは襲いかかってきた。

見る者に強い恐怖を与え、また魂も氷るような凍気を放つザーを相手にユニオン・シップは苦戦した。だが、アム＝ガルンの、不死アンデッドの魔物に絶大なダメージを及ぼす「神霊光ゴッド・レイ」の魔法が効果を発揮し、かろうじて冥界戦士を退治することができた。

ユニオン・シップ団はついに、ゼーレス城外の最後の敵を倒すことに成功した。

ユニオン・シップ団の冒険者たち7人は、崖の底に無事に着地し、時の城ゼーレスに向かって歩いていった。