小説『ヴァルキーザ』 31章(7)
宇宙の彼方に敗走した超存在メガロサイモスが行っていた干渉によって、時の城ゼーレスの動力炉ターミナル・ジェネレーターは暴走をし始めた。
このままでは炉が大爆発する。危険な状況だ!
魔法の動力炉は爆燃し、激しい勢いで莫大な量のスモッグ「魔の雲」を放っている。
「早く止めないと!」
「どうやって止めればいいんだ?!」
「このままでは、世界が滅んでしまう!」
そのとき「時の城」ゼーレスの上空に、古王国アルナディアがその古世紀の時代にゼーレスと対をなして建築した浮遊城である「夢の城」(アスミラス)が現れ、ユニオン・シップを援護した。
アスミラスには、その城主でアルナディア五賢聖の一人であるアルシュレイスという者と、そして他の五賢聖イシュ=バートナム、ウルシャプラ、オルティスが乗っている。
アルシュレイスはテレパシーでグラファーンらに語りかけた。
「勇者たち、よく聞いてくれ。
ジェネレーターを止めるには、炉の中に入って、炉心の手前にある操作盤の横にある制御棒の傾きを正し、棒を垂直に立てなければならん。
炉の中は狭く、一人しか操作室に入れん。急いでくれ!
我々アスミラスは、動力炉が爆発しないよう魔法力で抑えて、君たちを援護している。
今のうちだ、早く!」
すぐにグラファーンが他の団員たちを制して炉の中に入り、制御棒を探す。
急いで見つけなければ皆の命が危ない!
運命の賽は振り放たれた!
幸い、グラファーンはすぐに制御棒を見つけた。
そして炉を制御する棒を垂直に立て直した。
・・・
やがて、動力炉は鈍い音を立てながら止まった。
同時に、魔の雲の放出も収まった。
魔の雲は徐々に消えてゆく。
グラファーンが炉の外に出ると、ユニオン・シップのみなが一人の男を介抱しているのが見える。
ローブを身に纏ったその男は、悪魔になる以前のエルサンドラだった。
魔法の副作用が解け、もとの五賢聖に戻ったのだ。
エルサンドラは正気に返り、様々なことを皆に語ったが、暴漢のジェルミに暗殺されかけて悪魔に変化してしまってから以降のことは、ほとんど記憶していなかった。
「そういえば、自由の宝冠はどこに…」
ユニオン・シップの団員たちが探そうとすると、
グラファーンは小さな冠を取り出し、手にして、少し得意げにかざした。
「そこの、炉の中の、操作盤の近くにあったよ」
宝冠を見て、みな安堵して微笑む。
そして、その場にいた皆は、清々しい気分でゼーレスを去った。
ユニオン・シップ団はすべての使命 を終了した。