詩『風』
格子縞のハンカチを買った
欲しかった靴下の代わりに
蜃気楼の様な真夏日に揺らぐ商店街
それはもう、うだるような暑さだ
燦々と降る熱塊に敗けたあの頃
顔から全身が泣いた悲しみを偲びに
ふらり街なかへ、集会場へ出かける
稠密にはりつめた神経が頭痛を打つ
水が欲しい…水をくれ…
何もかも渇いていた記憶に応え
僕はすぐに水筒を差し出したかった
だがその日持っていたのは何粒かの薬だけ
メジャー・トランキライザーという…
恥ずかしさに、逃げ水より速く幻になってから
僕は言い訳あまりに祈った
「すべての人が助かりますように」と
夕方、小さなそよ風が吹いた
それはやがて大きな風を連れてきて、
台風となり巨大な水塊を運んで雨を撒いた
縞模様は水に溶けた様に薄れていった