青春生き残りゲーム(8)
中学生活も残り半年を切ろうとしていました。学校では、夏休み明け1週間後にある運動会に向けて、受験勉強の合間に時間を作り、クラス別に練習をするなど『One for all, All for one.~一人はみんなのために、みんなは一つの目標(優勝)のために~』のムードが漂っていました。その流れで、8月が終わり2学期に入ったのです。
クラスに転校生が来ました。隣県の中心都市から転校してきたそうです。セミロングの長さに眉のあたりで切り揃えた前髪と黒目がちな大きな二重の目が特徴的な女の子でした。しかし、人物そのものに興味がなく、人にどう見られるかに執着してばかりのウナギ少年にとってはただそれだけの話でした。❝容姿端麗な転校生であって、たまたま同じクラスになっただけ❞なのです。
また、少年は母親の勧めで学習塾に行くことになりました。少年は、二つ返事で賛成し、土曜日に駅前のビルに行くことになりました。というのも、学力が伸び悩んでいたことと、頑張っている集団の中で上位の成績を収めることができれば、より多くの人に称賛されるだろうという理由があったのです。一つ目の理由はともかく、二つ目の理由は、碌に勉強もしてねぇくせに、立派に歪んだものでした。
その代わり、小学生から続けてきた書道教室は辞めることになりました。行くと嘘をつき、古本屋で漫画を立ち読みしていたことを続けていた結果、書道の先生から報告があったのです。今思うと、よく2時間以上座って文字を書き続けることができたものです。じっとすることが苦手な割に一度集中すると区切りがつくまで他のことは一切気にならなくなる特性と、昇級の喜びがあったため小学生までは真面目に楽しくやっていたわけです。
しかし、ある程度昇級して、昇段するためのシステムが変わったことと、行書を教わったことによって、いつのまにか、早く終わらせるためにはどうすれば良いのかばかり考えるようになりました。そして、極めつけは、小学6年生のときに、左利きで少年よりも2年近く晩く始めた同級生が、少年を差し置いて県の展覧会で優秀賞を取ったことが、士気が無くなった理由となりました。
書道とは例え左利きであっても右手に筆を持ち書き上げるものです。それを優秀賞を取るまでに上達させたというのは、努力だけでなく才能も持ち合わせているということです。少年は、そこまで努力できる人が身近にいることがショックで敗北感を覚えました。そして、普段の書字からなあなあになり、そして、段々とサボりふけっていったのです。
母親には当然、叱られました。行かずに月謝だけ支払い続けていたわけですから、少年ではなく書道教室への投資をしていたようなもので、これほど馬鹿げた話はありません。またしても、少年は親に無駄金を使わせてしまったわけです。
今回はここまでにしたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。
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