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絶妙な不相応感

よく映画の番宣CMで
「まさかの結末でした」
とか
「見事に騙されました〜デヘヘ」
と観終わったあとの感想を言っている頭がちょっとアレな人がいますな。

騙されたことがそんなに嬉しいなら詐欺にでも引っかかってしまえばいいんです。

頭がアレな人の感想はアレなので、それはまぁいいとして
その映画の制作会社なり配給会社なりがCMで大々的にナレーションなんかで
”衝撃の大どんでん返し〜〜〜!!”みたいなこと言ってたりしますよね。

結末を知らなくて驚いたり感心するのが映画の醍醐味なんじゃないのかね?
観る前にそんなことを言われたら楽しみが半減するんじゃないのかしら?ってボクなんかは思ってしまうのだけど、どうなんでしょう?

イエーイ、騙された〜〜(このクソ庶民がっ)!!
みたいな感じでバカにされていると思うのは考えすぎなのかしら?

というけで話は変わって、分相応、不相応ってありますね。

今はもうあんまりないのかな??
みんな好きに生きればいいじゃんって感じなのかもしれませんが、なんとなく昔はありましたね。

安月給なのにやたら高級車に乗っているとか。
楽器が弾けないのに高い楽器を使っているとか。

そういう姿勢はよく分不相応と言われたものです。

逆にあえて不相応なほうに逆張りして
自分を追い込んで奮い立たせるとかという考えも昔からあったようで
それで成功したりしようものなら
「あいつは昔から自分を追い込んでやってブレずにやっていた」
という評価を得たりします。
その人だってそん時の気分や、どうしても手に入れたいための言い訳だけだったのかもしれないのに。

世間の意見なんて曖昧なもので
いちいちそんなことを気にしててもしょうがないとなるべく早く気がついた人がほんとに優れた人なのでしょう。

でもまぁ、色々無理目なことをやってみるのは面白いことだとは思います。
無理目な人とお付き合いする(願う)とか
全然自分に見合わないところに就職(進学)志願してみるとか
明日食う金もないのに、高い買い物をするとか
たいして味もわからないのに背伸びして高級料理を食べてみるとか
やってみたら案外面白いものです。
その後、仮に地獄が待ってたとしてもそれはそれで意外となんとかなるものなんじゃないかしら?

何事もやらないよりやっておいたほうが人生後悔しないのかもしれませんな。

結局のところ
歳をとると色々な欲求も減ってきて
食べれて眠れたらそれでいいべってなるわけですし
貫禄が出てくれば不相応感もなくなってくるのだから
欲望があるうちに色々やっておいたほうがいいっすね。

昔読んだ池波正太郎の本にとんかつをあてに日本酒を飲むみたいなことが書いてありました。

とんかつに日本酒??

まだ30代の半ばだったボクにはそれが相性が良いのかどうかすらあまり検討がついてなかったのですが、
池波先生がいうことなら間違いないだろうと
いつも行っている近所のとんかつ屋さんで試してみることにしました。

店に入ると顔馴染みのご主人に
「とんかつ単品と日本酒をお願いします」
と注文。

毎回とんかつ定食を頼んでいるのを知っているご主人はキョトンとした顔で
「お酒?ごはんはなしでいいの?」
と言いました。
ぼくは
「今日はなしで大丈夫です」
とちょっと背伸び(?)してビシっと言いました。

しばらくするとごくごく普通の日本酒とお通しのような漬物が運ばれてきて
チビチビやっているととんかつがやってきました。

一口、二口、、、。

うーん、まぁこんなもんだよなぁ。
悪くないけど、もっと日本酒と合うものってあるかもなぁ。
でもまだ馴染んでないだけかもしれんし。

というわけでおかわりの日本酒。

あ、そういえばソースじゃなくて醤油のほうがあうのかも。
醤油をたらして芥子をつけてモグモグ。

お、これはいいのかも。
こういうことか!と気づいてそろそろ三杯目にいこうかというその刹那。

「あ、すみません。明日子供の運動会なので今日は8時にお店閉まるんで、そろそろ・・・」
という申し訳なさそうなご主人の声が。

確かにその店は家族経営で、お店の2階にその家族が住んでいるのは知ってました。
たまーにお店の中をそこの子供とおぼしき小学生がうろちょろしてたし。
だから、通常は9時までの営業なのに運動会のために8時に終わるってのも嘘ではないと思うんです。

でも、なんちゅーか3杯目を頼もうとしている絶妙なタイミングで店を追い出されるとは、、、。

もし仮に池波正太郎のような貫禄があったら
ボクから『わかってる感』が出ていたなら
つまり分不相応でなかったのならば
果たして閉店が早まったのだろうか?

「あの人は三杯のんだらサクッと帰る人だから」

お店の人も三杯目を許して8時15分まで営業していたかもしれません。

なんとも絶妙な不相応感を感じた30半ばの夜でした。

写真:ずいぶん前に北海道で見つけた看板。何事にもこだわりは必要です!

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