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先の見えない道を歩くとき

自分と向き合っていると、ほんとうにこの道でよいのか、自分は進んでいるのか戻っているのかわからなくなる。

誰かに、この道でいいのか、訊きたくなる。

「済みませんが、ここから行くにはどの道をいけばよろしいんでしょう。」
「それはお前さんの行きたいと思って居るところできまるよ。」と猫はいいました。

行きたいと思っているところ?

「わたしどこでもかまわないのです。」とアリスは言いました。
「それじゃどっちを行っても構わないさ。」と猫が言いました。
「――どこかへ行けさえすれば。」とアリスは弁解らしく言い加えました。
「まあ、お前ながいこと歩いて行きさえすれば、どこかに行けるよ。」と猫は言いました。

芥川龍之介・菊池寛共訳「完全版 アリス物語」p.98

ながいこと歩いて行きさえすれば、どこかに行ける。当たり前なんだけど、なぜだか頼もしく感じるチェシャ猫の言葉。

どっちを行っても構わないさ。

突き放したようで優しさも感じる。

きっと、答えはあるようでない。自分で見つけて行くしかない。
それは孤独な道かもしれないけど、きっとその道を自分の力で行くことができたら、私は一人ではないことを実感するんだろう。


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