
保育園給食のリアル④栄養士資格の価値に中年になって気づいた
食の積み重ねに気づいたきっかけ
栄養士資格の価値に気づくのは、個人的な意見ですが、ある程度年齢を重ねてからだと感じます。これは、食というものが毎日毎年の積み重ねによって体を作っていくからだと思います。
10代では気づけなかった食の積み重ね
10代の頃、私は食が積み重ねであるとは感じられませんでした。ダイエットをきっかけに食の重要性に気づいたという話を耳にすることもあります。実際、私も10代の頃に無理なダイエットをして生理が半年ほど来なくなった経験があります。しかしその時、栄養や栄養士という視点には結びつきませんでした。
なぜなら、ダイエットは単に“苦しい我慢”のようなものであり、それをやめれば体調は戻ると理解していたからです。また、私は元々太っていたわけではなく、テレビや雑誌の人と自分を比べて太っていると思い込んでいただけでした。このような状況では、むしろ心理面へのアプローチが先であり、精神が整った上で栄養士の価値が生きてくるのではないかと感じます。
栄養士を目指したきっかけ
「やっぱり取らないと」と思わされた理由
栄養士資格は保育園調理員をしている私にとって、遠い存在でもありました。取った方がいいのはわかっているけれど、実際に取得するとなると多くの犠牲が必要です。そのため、資格取得を先延ばしにしたり、忘れたり、あきらめたりしていました。
しかし、ある二つの出来事をきっかけに「やっぱり、取らないと」と強く思うようになり、学ぶ価値に気づいたのです。
①父の心筋梗塞
一つ目は父が心筋梗塞で命を落としかけたことです。父はヘビースモーカーで、野菜が嫌いという典型的な不健康な生活をしていました。その結果、生活習慣病の恐ろしさを目の当たりにし、食の重要性を強く実感しました。(これはあるあるですよね)
②キャリアの行き詰まり(安定しない職場形態。終身雇用なんてありえない)
もう一つは、キャリアに対する行き詰まりを感じたことです。
保育園の給食調理という仕事は少人数で行うため、合わない人と組むと逃げ場がなく、非常に苦しい環境になることがあります。相性の問題もあるので、合わない時にはどちらが悪いということもなく、ちょこっとしたことが気に障って不満をため込むこともあります。
数年間良い関係で仕事をしていたにも関わらず、その人自身が抱えている家庭の問題が職場に影響を与え、急に態度が変わることもありました。また、びっくりするほど意地悪な人もいて、その原因が負けず嫌いから来ていることに気づくこともありました。
調理現場でもめることは本当によくあることですが、外部の人(保育士、園長)が仲裁するわけでもなく、面白おかしく捉えられる現状もあり、心が痛むこともあります。けれど、そういった状況も含めて保育園給食だと思えた時、職場にしがみつくことはやめ、私はどの現場でも通用する存在でありたいと漠然と思っていたし、時には自分を守るために転職を考えることもありました。
さらに、保育園調理員の給与は高くないものの、福祉施設であるため国からの補助金で運営している場合がほとんどで、経験加算があるため転職しても1から始まるわけではない点に救いも感じていました。ただし、企業運営の保育園では利益重視のため、経験加算すらも奪い取られることがあります。これについても、またお伝えしたいと思います。
新たな壁と学び直しの決意
年齢と経験による採用の壁
30代後半になると初めて採用試験に落ちるようになりました。考えてみると、園の既存職員との兼ね合いが影響していたことに気づきました。20代では「動ける調理師」としてのニーズがありましたが、30代になると年齢、経験、知識が逆にあだとなる場合もあることを痛感しました。
例えば、「調理師だけれど献立も立てていた」という経歴が逆に困惑を招くこともありました。ある園では「うちには管理栄養士がいるので献立は不要」と言われ、「わかりました」と伝えたものの不採用に。別の園の採用面接では栄養士から食育年間計画について相談されました。
その園はその年から幼稚園から保育園(こども園)に変わったことで、施設的に食育の資料が監査に必要となり戸惑っている様子でした。私は以前の保育園での経験を基にアドバイスしましたが、結果的には不採用でした。この経験から、調理師が栄養士や管理栄養士の領域を越えることには見えない壁があると感じました。
学び直しのスタート
このままでは歳を重ねるごとにその壁はますます高くなると感じ、私は学び直しを決意しました。新たな道を切り開くための学校生活が始まったのです。この学び直しが非常に意味のあるものとなった話については、また詳しくお伝えします。そして、学び直しをするための費用などについても今後お話しできればと思います。