拝啓 南条あや様

そちらの様子はいかがでしょうか

私も、たくさんたくさん薬を飲んだけど

指一本動かさせなくなったけど

結局、生き延びてしまいました

「後少し発見が遅れてたら」とか

「よく呼吸が止まりませんでしたね」とか

お医者さんに言われたけれど

生きてることに 変わりありません

南条あや様、教えてください。

貴女は、最後のカラオケボックスで

何を歌いましたか

涙は流しましたか

何を最期に考えましたか

私は何も考えなかった

淡々と、クスリの山を作って

それを、世界が終わるように

飲み込みました

南条あや様

私がここでメンヘラについて語ることを

どうか、お許しください

私は貴女に遠く及ばないけれど

包み隠さず 書き記します

私たちの世界を

クスリと苦しさと悲しみの世界を

包み隠さず、書き記します。

それが、死に損ないの使命だと思うのです。

敬具      海乃沈む